“近代建築の旗手”の原点を知る。

『ル・コルビュジエ絵画から建築へ-ピュリスムの時代』

国立西洋美術館

“近代建築の旗手”の原点を知る。

川上典李子 エディター/ジャーナリスト

パリ、ジャコブ通りの自宅におけるル・コルビュジエと《多数のオブジェのある静物》(部分)1923年 パリ、ル・コルビュジエ財団©FLC/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 B0365

シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)《多数のオブジェのある静物》1923年 油彩、カンヴァス 114×146cm パリ、ル・コルビュジエ財団©FLC/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 B0365

ル・コルビュジエ『サヴォワ邸』(1928-31年)©FLC/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 B0365

1917年のパリ。スイス、ラ・ショー=ド=フォン生まれの青年シャルル=エドゥアール・ジャンヌレは、画家のアメデ・オザンファンと出会う。
ふたりは展覧会を開き、冊子『キュビスム以後』も発行。対象物を純粋に捉え、余分な要素を省いて幾何学的に表す絵画様式を示し、芸術論「ピュリスム」を展開した。「ピュリスムとは造形と同時に叙情に関わる新しい創造であり、事物の恒常で本質的な特性を造形作品の中に組織すること」と。
20年には『エスプリ・ヌーヴォー』を刊行、25年まで全28号を発行した。連名で建築を論じる際にジャンヌレは、ル・コルビュジエ=ソーニエの名を用いた。のちに近代建築の三大巨匠として世界が知る名の誕生である。
絵画制作は建築のひとつの鍵と述べた彼らしく、ピュリスム初期の絵画が当時の彼の住宅建築を想起させるのは興味深い。垂直、直角という彼の建築の特色も彷彿とさせる。絵画を描き続ける中で現れるのは曲線や色彩だ。
このように巨匠ル・コルビュジエの原点となる時代に焦点を当てた展覧会が、本人設計の国立西洋美術館・本館で開催。絵画や建築模型の他、パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、フェルナン・レジェら彼が交流した前衛美術家の作品も展示される。
国立西洋美術館は、所蔵品の増加に伴い、中心から外側へ、巻貝さながら建物が螺旋状に発展するというル・コルビュジエの「無限成長美術館」の考えが具現化された建築だ。館の中央の「19世紀ホール」が基点に当たる。本展は、彼のヴィジョンがうかがえる空間で作品を味わえる貴重な機会なのだ。
技術革新とともに進歩していく近代社会の精神を生活の広い分野で実現させ、機械文明の中に人間性を取り込もうとした巨匠の原点と、若き時代の彼を取り巻く空気を、100点以上の作品から感じ取れるだろう。

『ル・コルビュジエ絵画から建築へ-ピュリスムの時代』
2/19~5/19 
国立西洋美術館
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時30分(金曜、土曜は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(3/25、4/29、5/6は開館)、5/7
料金:一般¥1,600(税込)
www.lecorbusier2019.jp

“近代建築の旗手”の原点を知る。