アートを牽引した、目利きの成果。

  • 文:赤坂英人

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『現代美術に魅せられて 原俊夫による原美術館コレクション展』

原美術館

アートを牽引した、目利きの成果。

赤坂英人美術評論家

草間彌生『自己消滅』1980年。この展覧会の会期は前後期に分かれ、前期は戦後のアメリカの抽象表現主義やポップアートを中心に、ヨーロッパの前衛的作家や日本の作家の作品を展示。後期は比較的最近の世界の新鋭作家が多く登場する。© Yayoi Kusama

アドリアナ・ヴァレジョン『スイミングプール』2005年。© Adriana Varejaõ

杉本博司『仏の海』より、1995年。© Hiroshi Sugimoto Courtesy of Gallery Koyanagi

これほど美術館のコレクション展に感動したことはなかったし、圧倒されたこともかつてなかった。そして、目の前の作品を選んだ審美眼と視点の鮮やかさに舌を巻いた。それが、現在開催中である原美術館のコレクション展の正直な感想だった。 

原美術館は、現代美術に魅せられた創設者で現館長である原俊夫が、1979年に創設した日本の現代美術専門ミュージアムの草分け的存在だ。美術館の建物は、もともとは原の祖父である原邦造の邸宅。設計は銀座和光ビルなどを手がけた建築家の渡辺仁。1938年に誕生した日本のモダニズム建築のひとつと言われる建物だ。 

75年、原俊夫はデンマークのルイジアナ美術館を訪れた。その時に、「個人の邸宅が美術館に変貌した有様に感銘を受けた。そしてルイジアナ美術館の創設者であるクヌード・ヤンセン氏からさまざまなアドバイスを得て、当時、空き家となっていた建物を美術館にする構想が芽吹き、美術館の空間に呼応する作品の収集が始まった」。 

今回の展覧会では、エントランスに掲げられたジャクソン・ポロックの絵画を筆頭に、第2次世界大戦後の世界の現代美術の潮流を代表するアーティストの作品が展示されている。 

それは、いま生まれたばかりだとでも言いたげに輝いている。ポロック、マーク・ロスコ、ロバート・ラウシェンバーグ、ジャスパー・ジョーンズ、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンシュタイン、ジャン・デュビュッフェ、今井俊満、工藤哲巳、三木富雄、草間彌生、杉本博司……。珠玉という言葉がオーバーではない傑作が展示されている。 

コレクションに際してできる限り自身で作家と会い交流してきた原館長。大事なことはなにかと聞くと言った。「自分のやりたいことをやる。そしてリスクをとることです」

『現代美術に魅せられて 原俊夫による原美術館コレクション展』

開催期間:~6月3日(日)(前期:3/11まで、後期:3/21~6/3) 
原美術館 
TEL:03-3445-0651 
開館時間:11時~17時(3/21を除く水曜は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(4/30は開館)、3/12~20、5/1 
入館料:一般¥1,100 
www.haramuseum.or.jp