設立15年を迎えるライゾマティクス、美術館では初となる大規模展覧会。

  • 文:川上典李子

Share:

Squarepusher『Terminal Slam』2020年。架空のMR(複合現実)グラスで街から広告を排除するというコンセプトのMV。すべて参考図版。

【Penが選んだ、今月のアート】

科学者や研究者との研究に基づくプロジェクトをはじめ、ビョークやスクエアプッシャー、パフュームといったアーティストとの実験的なコラボレーションなど、幅広く革新的な表現を世に放っているライゾマティクス。

真鍋大度と石橋素を中心とする、アーティスト、プログラマー、研究者らで構成されたこの集団が取り組んでいるのは、デジタルネットワーク社会における技術と表現の探究であり、人とテクノロジーとの関係の考察だ。バーチャルとリアルの間でゆれ動く私たちの身体や知覚に対して、独自の美学を踏まえた提案を続けている。

活動開始は2006年。設立15年を迎える彼らの、美術館では初となる大規模展覧会の開幕に期待せずにはいられない。現代社会への批評的な視点を投影した数々のプロジェクトはそのアップデート版が紹介され、以前から取り組むソーシャル・プラットフォームの披露も含む。脳や生体に関する研究に基づく進行形のプロジェクトなど、最新作品も複数紹介される予定だ。

これら多様な活動を通してなされる人間性(ヒューマニティ)の模索について、本展を企画した東京都現代美術館の長谷川祐子はこう記している。

「デジタルとアナログ、バーチャルとフィジカルの間で生まれた断絶と世界からの疎外感──その2つをハイブリッド化、あるいはコモンズをつくることで、新しい『人間性』のための環境をつくろうとする彼らはまさに時のアーティストといえるだろう」。さらにはメディアアート、テクノロジーと人間性の関係において視点の転換を与えてくれることに触れ、「今、アーティストに求められているものは何か、答えのひとつはここにある」と。

変化しやすく不確実で複雑、曖昧な時代の只中で、領域横断的に活動する彼らが呈示する世界の在り方、可能性を体感したい。

Perfume『Reframe 2019』2019年。Perfumeの映像、音声、歌詞のデータを解析し再構築したコンセプトライブ。撮影:上山陽介

野村萬斎×真鍋大度『FORM』2017年1月2日~3日、東京国際フォーラム。野村の動きを3Dスキャン、モーションキャプチャ、機械学習技術でデータ収集し、リアルタイムで映像に変換。©Hiroyuki Takahashi/NEP

『ライゾマティクス_マルティプレックス』
開催期間:3/20~6/20
会場:東京都現代美術館
TEL: 050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:10時~18時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(5/3は開館)、5/6 
料金: 一般¥1,500(税込)※日時指定予約制
www.mot-art-museum.jp
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。