世界の「際」を描くアントニ・タウレ

『INSULA LUX 光の島』

シャネル・ネクサス・ホール

世界の「際」を描くアントニ・タウレ

川上典李子 エディター/ジャーナリスト

展覧会タイトルはラテン語で「光の島」を意味している。『L’Énigme』(レニグム)2016年。ミラノのヴィッラ・アルコナーティの内部を引用した作品。エニグムとは「謎」を意味する。

『Carrelage』(カルラージュ)。1999年に撮影した写真に2018年、油彩で新たに彩色を施した。暗い室内と明るい外の境界、時空を超えて描かれた空間にタウレの言う「際」が感じられる。All photos ©Antoni Taulé

スペイン、イビサ島にほど近いフォルメンテーラ島に暮らす画家、アントニ・タウレ。1945年スペイン生まれ。多くのアーティストと交流があり、彼らから影響を受けると同時に、周囲にインスピレーションを与えてきた。
建築を学んだタウレは、舞台美術でも才能を発揮していた。それだけに彼の作品は劇場空間としての魅力をもっているが、いずれも時の経過や特定の物語からは自由に解き放たれている。 今回の展覧会は、タウレの日本で初めての個展だ。油彩画24点と、以前に撮影した写真の上から油彩で彩色し、絵を描き加えた16点のふたつのパートで構成される。絵画と写真とが隣接する、幻想的な世界が広がっている。
どことなく不安を覚えるがらんとした部屋や、鏡に映る部屋の風景。一方、玄関や窓からは光が差し込み、開口部の先には海や砂浜などが目にできる。70年代、80年代に彼が拠点としていたニューヨークのホテル・チェルシーをはじめ「記憶の建物」も重要な題材だ。
無人の風景だけでなく人物が登場する作品もある。タウレに影響を与えた作家、レーモン・ルーセルの恋人だったシャルロット・デュフレーヌの姿もあり、タウレの絵にはシュルレアリストに絶賛された不可解なルーセルの文学世界が重ねられていることに気付く。
タウレは述べる。「私が試みるのは世界の際に達することであり、そういった意味での岸辺、あるいは境界の概念が、フォルメンテーラ島には余すところなく現実化されている」
光と闇、現在と過去。現実と虚構、見えるものと見えないもの……それらの「際」が、彼の作品には潜んでいる。
自身の想像力の源泉だという地中海の島に暮らしながら、彼は今日もアトリエ近くの巨石遺跡や洞窟を訪れ、想像力を拡げているのだろう。作家の心に存在する「光の島」に、私たちも触れてみようではないか。

『INSULA LUX 光の島』
1/16~2/14 
シャネル・ネクサス・ホール
TEL:03-3779-4001
開館時間:12時~19時30分
会期中無休
入場無料
http://chanelnexushall.jp

世界の「際」を描くアントニ・タウレ

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