世田谷のブラックバードとポルシェ兄弟!? 一生手放したくない964カレラ2【GO! 東京“ヤンクラ”カービルダーVOL.3】

  • 写真:香賀万里和
  • 構成・文:青木雄介

Share:

“ヤンクラ”、ヤングクラシックとは1980~90年代の比較的若いクラシックカーのこと。ヴィンテージ感を漂わせつつ、日常づかいに優れたクルマを中心に、映像作家・米倉強太さんが友人のために制作した世界で一台だけのクルマを紹介する。

ファッションブランドやCMの映像ディレクションを手がけるクリエイター、米倉強太(ごうた)は25歳にして生粋の“モーターヘッド”。クラシックカー好きでカスタムカー好き。愛車はサーキット仕様の86年型ポルシェ911ターボだ。そんなクルマ好きの米倉のもうひとつの顔は、カービルダー。親しい友人や知人のために、東京で乗るための最適な一台をつくっている。この連載ではその友人たちをゲストに、クルマの完成までのストーリーをひも解いていく。聞き手はPen Onlineで『東京車日記』を連載している青木雄介。


関連記事

VOL.1 普段づかいで原宿を駆け抜ける、マーク1仕様のローバーミニ

VOL.2 ラブリー“ラブリ”ウェイ!? 表参道に溶けこむ90年代なゴルフII

普段使いするなら、パワステの964型。

都心の地下駐車場に響き渡る、水平対向6気筒エンジンの低くて乾いた排気音。さながら着陸したばかりのセスナ機が誘導路を進むように、1台の黒いポルシェがこちらに向かってきた。クルマはポルシェ911カレラ2。年式は1993年製の964型だ。964型はクラシカルなスタイリングに現代的な乗りやすさを兼ね備えた、ヤングクラシックなポルシェのど真ん中といえる存在。乗り手は我らがカービルダー、米倉強太の兄である米倉悠太さん。964型は強太の乗る930型ターボの後発モデルで、姿かたちもそっくりな、いわば兄弟ポルシェでもある。そんなヤングクラシックなポルシェに魅せられた兄弟のポルシェストーリーをひも解こう。

フロントのウインカーレンズは、本来はイエロー。米倉強太が持っていた930ターボのクリアレンズに付け替えられた。

──このポルシェ911カレラ2、964型を買われた経緯を教えてください。

悠太周りでポルシェに乗っている人もいたので、これまでも触れる機会がありました。弟の強太が3年ぐらい前に1986年式の911ターボ(以下、930ターボ)を買ったのを見て結構、衝撃を受けたんです。

──「ポルシェいいな」という感じだったんですか?

悠太:そうですね。

──悠太さんがポルシェを買われたのは、いつごろですか。

悠太:去年の6月ぐらいですね。

──この964型は強太君が見つけてきたんですか?

悠太:そうです。

──リクエストのポイントはどこだったんですか?

悠太:強太の乗ってる930型だとパワステがないから、964型かな、と。買うなら930型か964型のどちらかを、と考えていたので普段づかいをするなら「964の方が良いかな」と思いました。

フライラインと呼ばれるリアのルーフラインに3.6リッターの空冷水平対向エンジンを格納した後輪駆動。馬力は247馬力。最高速度は時速256kmだ。

──ABSもついてるし、より快適に乗るならということですね。グレードはカレラ2ですが、ベースの4輪駆動より2輪駆動が良いと思われたんですね。

悠太:そうですね。

──そこはポルシェらしいRR(リアエンジン後輪駆動) の走りが楽しみたかったんですか?

悠太:「ポルシェに乗るならRR かな」というのは最初からありました。


初めて知った、人馬一体の感覚。

──購入されて半年以上が経ちましたが、普段づかいしている感想はどうですか?

悠太:楽しいですね。乗り始めの頃は緊張感がありました。今時のクルマに比べるとパワステとはいえ、ハンドルも重く感じます。普段、クルマに乗る時というのは何も感じずハンドルを握りますよね。でもこのクルマはハンドルを握るたびに、身が引き締まる感覚があります。慣れてきても特別な緊張感がある気がします。扱い慣れると、本当にキビキビ動くんですよね。人馬一体感というのは「こういうことなのか」と思いました。

──どれぐらいのペースで乗られてるんですか。

悠太:通勤に使っていますのでほぼ毎日、乗っています。

──どこか故障したところとかはありますか?

悠太: 買う時にDMEリレーを交換したんですが、駄目になっちゃって再度交換したぐらいです。もう1万5000キロぐらい乗ってますが、他は何の問題もないですね。

──もともと購入された時は何キロぐらいだったんですか。

悠太:8万キロいってないぐらいだったと思います。

──買って正解でしたか?

悠太:大正解でしたね(笑)。

1993年製、ポルシェ911カレラ2(通称964カレラ2)。デザインはベンジャミン・ディムソンの手によるもの。タイプ964(964型)は1989年に発売され、この個体はモデル最終年にあたる。パワーステアリング、ABSといった安全快適装備を備えつつ、(セミ)トレーリング式リアサスペンションの採用により、往年のクラシックポルシェの乗り味を受け継ぐ最後のモデルとも言われる。

「一生手放さない」と確信した、964カレラ2

──お兄さんはめちゃくちゃ容姿端麗です。勤務医でこの964カレラを乗ってるって絶対、モテますよね?

悠太:いえいえ。それがモテないんですよ(笑)。彼女もいません。

──本当かなぁ(疑惑の眼差し)。Penで彼女募集しちゃいますよ(笑)。それ以前はどんなクルマに乗られていたんですか?

悠太:メルセデスのCクラス、W204型に乗っていました。それに比べると「クルマに乗るってこういうことなんだな」って気づかされるような感じですね。

──乗ってみて、ポルシェならではの気づきはありましたか?

悠太:すごく堅実なクルマという印象です。ゴージャス感や派手さはないぶん、機能面だったり細かいつくりだったりが「すごくしっかりしているな」という印象なんです。よく言われるように、ドアを閉める時の音が金庫を開け締めするような音だったりも、確かに「そうなんだよな」って思うし。空冷エンジンの音だったり振動だったりがクセになるんですよね。この年代のポルシェは、そんなに価値が下がらないですよね。「数年乗ったら売却しようかな」って軽い気持ちで考えていたんですが、買って2、3ヶ月ぐらいで「もう一生、手放さないな」と確信しました(笑)。

1992年のマイナーチェンジを受けて変更されたミラー。通称ターボミラーと呼ばれる。

──あはははは。ここまで惚れこませるポルシェを見つけ出した弟さんに、話を聞きましょう(笑)。

強太:このカレラ2はそんなに改造していないんですけれど、ホイールとマフラーだけ変えました。あとダウンサスが入っていたので、純正に戻して車高を上げました。エンジンも整備して、毎日乗っても大丈夫なコンディションまで持ってきましたね。

悠太:車高を下げたままだと、駐車場で「下を擦るかも知れないな」と。

強太:このウィンカーも僕の930ターボで余っていたのを取り付けました。930型のバンパーも964型にもつくんですよ。

もともとは、ゲレンデのショートボディが欲しかった。

──弟が930型で兄が964型だと、兄弟でパーツが共用できて最高ですね。お兄さんは強太くんの930型を見てポルシェが欲しくなったとのことですが。

強太:最初は「ゲレンデ(Gクラス)の2ドアがほしい」って言っていたんですよ。

悠太:そうです。ゲレンデのショートが欲しかったんです。

強太:そうしたらポルシェになっちゃいましたね。

──「ポルシェか、ゲレンデか」ってある意味、憧れの輸入車2大巨頭ですよね。お兄さんはポルシェ派についたという(笑)。このポルシェはティプトロ(ディプトロニック。ポルシェのオートマチック※)ですか?

強太:そうです。強いていうならマニュアルシフトが良かったかな、というのはあるかな。

悠太:でも毎日、通勤に使うならティプトロが楽ですよ。もし2台目を買うなら、マニュアルもいいかもね。

米倉悠太さんは自宅と勤務先の往復に964カレラ2を使っている。購入して半年で走行距離は15000キロを越えたとのこと。

強太:1993年の最終型のティプトロニックなんで、ミッションはもう次世代の993型と同じなんです! だから同じ964型のティプトロと比べると若干、進化していると思います。ポルシェのティプトロは本当に優秀で、Gセンサー(重力センサー)でカーブを読み取れるので、変速のタイミングも間違えないし、ほんと頭が良いんです。変速の仕方も、乗った人に合わせてくるんですよ。

──ええ! この時代でもうそれをやってるんですか?

強太:やってるんです! サーキットを走って不満のないトルコンのオートマチックって、ポルシェのティプトロぐらいだと思いますよ。

※ティプトロニックATトランスミッション:ポルシェの革新的な4速自動トランスミッション。ドライバーが操作できるマニュアルモードをもち、自動変速は5つのシフトマップとプログラムで構築されている。内蔵されたボッシュ製のコンピューターが車速、スロットル角度、スロットルペダル速度、エンジン回転、横加速度、縦加速度を監視し、ドライバーの運転に合わせてシフト制御する。当時は高価なオプションだったため、ティプトロニック付きがステイタスだった。

兄と弟、2台のポルシェはどこが違うのか。

──964型はたしか1992年にマイナーチェンジが入ってますよね。

強太:92年のマイナーチェンジは、ハンドルの形状が一番分かりやすいですね。

悠太:あとミラーですね。

──よく言われるターボミラーですね。

強太:964型も930型も、基本的に同じ形に見えるんですが、違いはモールを見ればすぐ分かります。この頃のポルシェって必ず、モデル最終型に新型の要素がオーバーラップしてくるのが特徴ですね。

時速80km以上になると、自動であがる電動リアウイング。

──930型から964型は特別、分かりやすいかも知れないですね。まさにポルシェ兄弟の兄弟ポルシェです。見た目はそっくりですが、部品の約85%が新調されています。

強太:そうなんです。中身はまったく違うんですよ。一番違うのは足回りです。開けると分かりますけど、930型だとショックタワーが突き出ているんですが、964型のショックタワーはもっと太くなっていて剛性も何もかも全部違うんです。

──あれ!? 964型ってトーションバースプリング(ねじり棒ばね)ではないんですね。

強太:964型は最初からコイルオーバー(ばねとショックアブソーバーが一体化したサスペンション)です。トーションバーはないんですよね。結局、964型はミッションが大きくなってしまっているんですね。トーションバーがあるとミッションが入らなくなっちゃうんですよ。あと964型からベースが4駆になったのでその分、足回りのユニットが大きくなっているのかな。

クールな兄と、走りに熱い弟。

──なるほど。トレーリングアームが964型で最後なんですね。乗り味はどう違いますか?

強太:930型はアンダーステア、オーバーステアがコロコロ変わって、ピーキーな部分があるんですけど、964型はその辺が改善されていて全体的にマイルドな乗り味ですね! トーションバーは性質上、バネの縮み曲線が一定ではないので、本来は8kgの固さのトーションバーも、6kgの固さになってしまったり、コイルバネと違って安定しないので、その辺が影響しているのかなと思います。それがいやなので僕の930ターボはトーションバーを外し、コイルオーバーにしてアームも変えてます。

リアのエンジンフードの真ん中に配された911のレタリング。クラシカルで品のあるフォントが印象的だ。

──強太さんの930ターボは完全に走りに振っているんですね。ちなみにお兄さんの964カレラを2駆のカレラ2にしたのって、強太くんの差し金ですよね?

強太:いや(笑)。最初は4駆の「カレラ4でもいいね」って話にはなっていたんですよ。

悠太:たまたまこの個体と縁があって、「黒だし、良いね」っていう話になったんですね。そもそも964型も、状態の良い個体がポンポンあって選べるって状況でもなかったんですよね。僕自身のこだわりとしては「絶対、黒が欲しい」という気持ちがありました。

強太:964型は意外に黒って少ないんですよ。濃いめのグレーはよくあるんですけどね。真っ黒って本当にないんです。

──いつものように「塗り替えちゃおう」って気はなかったんですか。

悠太:そもそも数年乗ったら売却しようと考えていたので、塗装はあまりしたくありませんでした。

本当に飛んでいきそうなRRの醍醐味。

 ──乗ってみると手放せなくなったんですもんね。

強太:本当にね。首都高なんかめちゃくちゃ楽しいもんね! めちゃくちゃ曲がるし。ただちょっと飛ばすと怖いんですよね。浮いてきて、フロントのトラクションが無くなりそうになっちゃうから。

悠太:そうだね。

強太:僕らはしょっちゅう実家のある那須に帰っているんですが、お兄ちゃんのこれで帰るんですよ。そのとき結構、飛ばしてみるんですね。

悠太:ガソリンが満タンだとそんなに感じないんですが、タンクが空になっていくのを如実に感じるというか(笑)。少ない状態で走ると、前が浮いてきちゃうような恐怖はありますね。

米倉兄弟は「悠太」「強太」と、名前で呼び合う大の仲良し。“クールな兄に熱い弟”といえば、もちろんコミック『頭文字D』の高橋兄弟を思い起こさずにはいられない。

──スタートダッシュをかけるとお尻を振っちゃうとか?

強太:いや。そこまでではないんですけどね。

──良い話ですね。この964型は重量1350kg に対して247馬力。現代のスポーツカー並みに走るし、フロントが浮く話もRRのライトウェイトスポーツならではの醍醐味ですね。

過渡期に生まれた哀しみと、本当の実力 

強太:そうですね。マフラーもいい音するし、エンジンもV8みたいな迫力ですよね!?

──はい。この駐車場に入ってきて一発で分かりました。バラバラと水平対向エンジンの音が聴こえてきたから、姿は見えなくても「あ、来た」って(笑)。ちなみに964型って「異色の911」って言われますよね。それは、なぜだと思いますか。

強太:中途半端と言いたいんだと思います。ポルシェは356型から930型までトーションバーの歴史があってそれでもないし、かといって次の993型からは、まるっきりシャーシから何から違うんですよね。

──なるほど。

強太:その間にある車型なんです。良く言えば良いとこ取りだし、悪く言えば中途半端な時代の車型なんですよね。

──ちょうど時代の過渡期に当たったってことですね。

強太:そうなんです。バブルの時代で、造りも930型に比べると良いと思います。でも自分が930型を買ってお兄ちゃんが964型を買うまで、こんなに違うとは思ってもみなかったんです。一番面白いのが930型の弱点が、さっきも言ったように964型だと全部対応されているんですね。だから特にサーキットでレースをするなら964ベースに較べて、930型だと倍にお金がかかっちゃうんですよ。


964型は最後の空冷ポルシェとなる993型の一世代前に当たる。欧米では長らく「赤毛の継子」と呼ばれていたが、近年では評価が逆転しコレクターカーの一員となった。理由は搭載されたM96型の水平対向6気筒エンジンの再評価。ツインプラグ化され堅牢性に優れ、サウンドは空冷フラット6そのもの。ヤングクラシックならではのクラシカルなスタイリングに、扱いやすさも人気の秘密だ。

──なるほど。

強太:それと964型はツインプラグ化されたので、点火系は930型より全然強いです。ただエンジンは930型の方が「コストがかかっているだろうな」って思うんです。964型はちょっとコスト削減を頑張っちゃったのが分かるところがあるんです。

──確かにヤンクラのこの年代のクルマは、おしなべて合理化が進められているし、ポルシェも1991年から92年は経営危機の最中にありました。まさに過渡期の一台ですよね。価格はどれぐらいでしたか?

悠太:車体が600万ぐらいで、改造に150万ぐらいかけましたね。

強太: オルタネーターも燃料ポンプも交換して、エンジンも下ろしてちゃんと整備しましたよ。

サンルーフがあると、逆に価値が下がってしまう。  

──この年代のポルシェって多分、もう値段が下がらないじゃないですか。ここ10年でだいぶ値段が上がってきていて、予想としても600万から700万ぐらいかなと思っていたんですが、それでも「下がらない」と分かっていれば、「高い」って話ではなくなりますもんね。

強太:そうなんですよ。それにこの964カレラのいちばん良いところって、サンルーフがないことなんですよ。これが最高なんです! ほとんどがサンルーフ付きで。その希少性もそうですけど、剛性も重さも全く違うんです。964型のサンルーフって、めちゃくちゃ重いんですよ。モーターとか色々ついてることもあって、ユニットだけで30キロ以上あるんですよね。

──ルーフだけで、それは重いですね。

強太:だから最初はサンルーフを取っちゃって、屋根をくりぬいてカーボンにしようと考えていました(笑)。

──あはははは。それなら一気に軽くなりますね!そういえば東京オートサロンに出てた4LAWSのフルカーボン・ポルシェって見ました?

強太:見ました。見ました。あれ部品売りはしてくれなくて、フルで1500万ぐらいなんだそうです。

964型までの空冷ポルシェを、1973年以前の通称・ナローポルシェのフルカーボンボディに換装する4LAWSのプロジェクト。https://4laws.jp/project.html  写真:E.S.

──964型が2台買えちゃいますね(笑)。あのフルカーボンはヤバいですよね。それはともかく、サンルーフがないのが魅力なんですね。

強太:そう。これは最初から鉄しかついてません。だから最高なんです。普通、93年式のサンルーフのない走行10万キロ未満だと1000万以上はすると思います。

──え?倍じゃないですか。

強太:この964カレラはティプトロの分だけ安いんです。ティプトロをマニュアルにするには200万円ぐらいかかるので、その分が安いといえば安いのかな。

いまの悩みは、増え続ける走行距離。

──マニュアルに変えてもお釣りがきますね(笑)。お兄さんはマニュアルにするつもりはないんですか。

悠太:今のところ普段使いするので、ティプトロで十分ですね。

──そうか。車体価格は600万円でも感覚としては、貯金しながら乗るような感じですよね。賢いなあ。絶対、そっちの方がいいですよね。

強太:絶対、そっちの方がいいですよ。

悠太:でも普段使いとして乗ってると、どんどん走行距離が伸びていっちゃうんですよね(笑)。だから本音をいうと、このポルシェを2台目にして週末乗りぐらいにしたいんです。

当時の輸入販売店である、ミツワ自動車で販売されたことを示すステッカー。このステッカーがあると価値が高い。ミツワ自動車は現在ではクラシックポルシェを販売している。

──走行距離がどんどん伸びていくと価値が下がってしまいますもんね。ちなみに964型ってパーツはあります?

強太:あります。あります。一時期、パーツはディーラーからしか買えないという話もあったんですが、よくは分からないですけど、そういうこともなくなったみたいですよ。

純正とカスタムパーツの狭間で。   

──それはポルシェの純正パーツとして、ですか。

強太:純正パーツです。交換したオルタネーターも燃料ポンプも全部、品番の入っている純正パーツです。元々ついていたH & R のダウンサスがイマイチだったんですよね……。

──この年代のスポーツカーって、ダウンサスを入れて車高落とすのが普通ですもんね。トレーリングアームだし、8の字シャコタンもイケるのかな。しないでしょうけど(笑)。

悠太:やっぱりポルシェも、ちょっと車高が低い方が決まるんですよね。

強太:決まるね。だから悠太にはRUFのフロントリップを買って欲しいんだよね。

悠太:あ。前に言ってたやつね。

強太:8万円ぐらいするやつ。ヤフオクにも出てて、格好いいんですよ。


リアのガーニッシュも元々はRUF(ルーフ)仕様のパーツだったがオリジナルに戻した。RUF社はポルシェのカスタム・コンプリートカーメーカー。

──個人的にはオリジナルのこのままで十分、格好いい気がします。

悠太:ですよね。リアのガーニッシュも最初、RUFのやつだったんですよ。それも良かったんですが純正にしました。

──なるほど。じゃあ純正に戻したというのはホイールとサスペンションとガーニッシュですね。中は何もしてないんですよね。状態は綺麗ですね。前のオーナーさんも綺麗に乗ってたんですね。

悠太:それとフロントのエンブレムがなぜかシルバーになっていたんですよね。でもこれは「このままがいいな」と思ってシルバーにしてあります。

米倉家ではタブーだった「黒いポルシェ」   

──米倉家のポルシェ兄弟、ヤバいですね。930型と964型を兄弟で乗ってるのが美しいし、ヤンクラのポルシェを心から楽しんでいる日常が伝わってきました。熱い930ターボの弟は置いておくとして(笑)、タイプ964はクールでスマートなお兄さんにピッタリですね。僕たちバブル世代の「ザ・ポルシェ」ですからね。嬉しくないはずがないですよ。

強太:実は黒いポルシェって我が家ではタブーで、父親が黒いポルシェで大きな事故をしているんです。それで「縁起が悪い」と言われていたんですが、僕も兄も兄弟で買ってしまいました(笑)。

本来は金のポルシェのエンブレムがシルバーに。

──「子は親を見て育つ」の典型じゃないですか(笑)。でも子育て終わったぐらいの人も、あらためてポルシェに乗るのは良いですよね。

強太:そうですよ。青木さんもヤンクラのポルシェ買いませんか?燃費も良いですよ。

──いやー、本当に欲しいです。コンパクトでクラシカルなスタイリングも良いし、走りが良くて燃費が良い。故障も少なそうだし。ポルシェは文句のつけようがない優等生ですよ。値段が下がらないから、貯金しながら好きなクルマに乗るようなものですよね。自分の周りがなぜか、みんなポルシェなんです。だからあえて違う道を行くのもアリかなと思って、生きてきました(笑)。でも今日は確実に心が揺れてしまいましたね。「どうしてくれるんだ、ポルシェ兄弟」って感じです。


米倉強太(よねくら・ごうた)/1994年生まれ。栃木県那須出身の映像作家。モデルを経て、2015年より映像作家として本格的に活動を開始。映像制作会社office sankaiを設立し、GUCCI、JULIUS、UNIQLOといったブランドの広告映像を手がける。また自主制作でショートフィルムも手がける。
米倉悠太(よねくら・ゆうた)/1991年生まれ。都内の病院勤務の医師。