「レギュラー」か「スモール」か——。名門「ヴァシュロン・コンスタンタン」の腕時計は、ふたつのサイズで誘惑する。

  • 写真:宇田川淳
  • 文:笠木恵司
  • スタイリング:石関淑史

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いま腕時計の世界ではダウンサイズという新たな潮流が生まれ、選択肢が広がるとともに「どちらを選ぶべきか」という嬉しい悩みも増しています。スイスの老舗「ヴァシュロン・コンスタンタン」の人気コレクションから、レギュラーサイズとスモールサイズ、異なる魅力をもったふたつのサイズをご紹介しましょう。

腕時計はその大きさで、腕の上での見映えが大きく異なります。ヴィンテージの腕時計をいま見ると、そのサイズはレディスと見紛うほど控えめで、ケース径もせいぜい35㎜程度。腕時計が現在のように大きくなったのは、1990 年代後半からといわれます。持ち主の個性を表す小道具として「見せる」要素が強くなり、ボリューム感が求められるようになったためと解釈できるかもしれません。かくて現在、ケース径の主流は40〜43㎜に。ところが最近、40㎜以下のスモールモデルが顕著に増加してきたのです。創業から250年を超えるスイスの名門、ヴァシュロン・コンスタンタンはその流れをリードするブランドのひとつです。「ヒストリーク・アメリカン」「パトリモニー」「オーヴァーシーズ」という人気の3コレクションで、レギュラーとスモール、異なるふたつのサイズの魅力をご紹介しましょう。

ふたつのサイズで個性を楽しむ、「ヒストリーク・アメリカン 1921」

「ヒストリーク・アメリカン 1921」はダイヤルやリューズ位置が変則のアヴァンギャルドなモデル。上はケースサイズ36.5㎜(縦横ともに)のスモールサイズ。やや控えめなサイズ感で、クラシックなフォルムが映えます。下は40㎜のレギュラーサイズ。個性的なデザインがより主張します。

エレガントで控えめなフォルムにもかかわらず、その個性的なデザインに驚かされるのが「ヒストリーク・アメリカン1921」です。ジャズなどが華開いた「狂騒の20年代」のアメリカ向けに創作された限定モデルを、現代的なアレンジも加えてリファインしたのがこのモデル。傾けたダイヤルは奇抜にも思えますが、車の運転時にハンドルを握ったまま、手首を返さず時間を読み取れるよう考案された実用的なデザイン。通常の時計でいえば1時位置にあるリューズも、手首にぶつかり肌を刺激することがありません。

ケースサイズは縦横ともに40㎜のレギュラーサイズと、36.5㎜のスモールサイズの2種類が展開されます。個性をより強く主張する“レギュラー”とやや控えめな“スモール”。サイズの違いによって、腕の上での存在感も変わってきます。写真のような素材感を活かしたジャケットスタイルはもちろん、しっかりとしたスーツスタイルにも似合うので、実際のビジネスシーンを想像して、サイズを選ぶのもひとつの方法かもしれません。

ケースサイズ40㎜、レギュラーサイズの「ヒストリーク・アメリカン1921」。ムーブメントを45度回転させ、スモールセコンドとリューズの位置も移動。変則レイアウトにもかかわらず高貴で優雅な雰囲気。
ケースサイズ36.5㎜にダウンサイズした新作「ヒストリーク・アメリカン1921-36.5㎜」は、手首の細い男性や女性にも似合うスモールサイズ。斜体のブレゲ数字とブレゲ針がクラシック。

ヒストリーク・アメリカン1921
手巻き(自社製キャリバー4400AS)、18Kピンクゴールドケース、ケースサイズ縦40×横40㎜、厚さ8.0㎜、時・分表示、スモールセコンド、手縫いサドル仕上げの竹符アリゲーターストラップ、パワーリザーブ約65時間、3気圧防水。¥4,222,800(税込み)


ヒストリーク・アメリカン1921-36.5㎜
手巻き(自社製キャリバー4400AS)、18Kピンクゴールドケース、ケースサイズ縦36.5×横36.5㎜、厚さ7.25㎜、時・分表示、スモールセコンド、手縫いサドル仕上げの竹符アリゲーターストラップ(ブラウンに加え、光沢仕上げのレッドが付属)、パワーリザーブ約65時間、3気圧防水。¥3,477,600(税込み)

ミニマルな美しさに、サイズの違いが際立つ「パトリモニー」

「パトリモニー」は完璧な丸形フォルムで、無駄を排除した純粋なスタイル。それだけにレギュラーとスモールの違いが明確です。上はケース径40㎜のレギュラーサイズで、ミニマルかつコンテンポラリーなたたずまい。下は36㎜のスモールサイズの「パトリモニー・オートマティック」で、ヴィンテージを思わせるサイズが時計好きの心に響きます。

ヴァシュロン・コンスタンタンを象徴する傑作のひとつがこの「パトリモニー」です。端正なラインと、優しさを感じさせる曲線のコンビネーションが絶妙。ミニマリズムに基づくアプローチによって、限りなく純粋なスタイルがつくられています。細部もていねいな仕上げで、上品な輝きを放つオパーリンダイヤルに、立体的なアプライド(植え込み)のバーインデックスが高級感を添えます。その間に並ぶ「パール」と呼ばれる丸いドットのミニッツトラックは、コレクション共通の特徴です。レギュラーサイズは時・分針だけの極薄2針モデル。ミニマルな構成のダイヤルは、秒針がもたらす慌ただしさから解放してくれるでしょう。一方、スモールサイズの「パトリモニー・オートマティック」は、センター秒針とカレンダーを備えています。ほかに余計な要素のないピュアなモデルだけに、この違いが際立っています。着ける人の手首や腕の太さでも見え方が変わるので、実際に腕に乗せ、じっくりと時間をかけて選びたいモデルです。

ケース径40㎜、レギュラーサイズの「パトリモニー」。ミニマルを追求した極薄ケースの2針モデル。やや長めのバーインデックスですが、12、3、6、9時位置をクサビ形にすることで個性を与えています。
女性にも似合うスモールサイズ、ケース径36㎜の「パトリモニー・オートマティック」。時・分針に加えて秒針(センターセコンド)があるほか、6時位置に細身の小窓で日付表示が加わっています。

パトリモニー
手巻き(自社製キャリバー1400)、パワーリザーブ約40時間、18Kホワイトゴールドケース、ケース径40.0㎜、厚さ6.7㎜、時・分のみ表示する2針モデル、ミシシッピ・アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥2,268,000(税込み)


パトリモニー・オートマティック
自動巻き(自社製キャリバー2450Q6)、パワーリザーブ約40時間、18Kホワイトゴールドケース、ケース径36.0㎜、厚さ8.1㎜、センター針で時・分・秒を表示し6時位置に日付表示、ミシシッピ・アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥3,002,400(税込み)

「デュアルタイム」と「スモール」どちらを選んでも、悔いのない人気の「オーヴァーシーズ」

旅にインスパイアされた「オーヴァーシーズ」の新作2本。上はより腕になじむケース経37㎜の「スモールモデル」、下は精悍で現代的な印象を与えるケース径41㎜のレギュラーサイズの「デュアルタイム」。高機能かスポーティか。それも悩みどころです。

2016年のリニューアル以来、旅の精神をコンセプトとする「オーヴァーシーズ」が絶好調を続けています。新開発の高機能ムーブメントを搭載し、堅牢感の高いカジュアルエレガントなスタイルや、工具なしでブレスレットやストラップを簡単に交換できるインターチェンジャブル・システムも好評です。この人気コレクションに追加されたのが、まずレギュラーサイズの「デュアルタイム」。海外で便利な第2時間帯表示を備えて、リューズ1本で調整できる便利な操作性も優れた特徴です。そして、ケース径37㎜の「スモールモデル」にはステンレススチールケースが新登場。軽快でスポーティなイメージに仕上がっています。いずれもブレスレット、レザーストラップ、ラバーベルトがセットになっているので、さっと付け替え、あらゆるシーンに対応可能。どちらを選んでも後悔はしないはずです。

ケース径41㎜の「オーヴァーシーズ・デュアルタイム」。写真はラバーストラップ装着時。赤い三角のトップをもつセンター針が第2時間帯を表示。立体的で奥行きのあるダイヤルがもたらす重厚感も魅力です。
男女ともに違和感のないケース径37㎜の「オーヴァーシーズ・スモールモデル」。ステンレススチールケースの新作。9時位置のスモールセコンドがアクセント。写真はミシシッピ・アリゲーターストラップを装着時。

オーヴァーシーズ・デュアルタイム
自動巻き(自社製キャリバー5110DT)、ステンレススチールケース、直径41.0㎜、厚さ12.8㎜、センター針で第2時間帯を表示し9時位置に昼夜表示。リューズのみですべての時間が調整可能、パワーリザーブ約60時間、ステンレススチールブレスレット、ミシシッピ・アリゲーターストラップ、ラバーベルトが付属、15気圧防水。¥3,034,800(税込み)


オーヴァーシーズ・スモールモデル
自動巻き(自社製キャリバー5300)、ステンレススチールケース、直径37.0㎜、厚さ10.8㎜、9時位置にスモールセコンド、パワーリザーブ約44時間、ステンレススチールブレスレット、ミシシッピ・アリゲーターストラップ、ラバーベルトが付属、15気圧防水。¥2,376,000(税込み)

問い合わせ先/ヴァシュロン・コンスタンタン TEL:0120-63-1755 

www.vacheron-constantin.com