インテリアバイヤー・大島忠智と考える、理想を叶える洗面空間づくり。

  • 写真:杉田裕一
  • 文:高野智宏

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TOTOの洗面化粧台の最上位シリーズが13年ぶりにフルモデルチェンジし、「ESCUA(エスクア)」が新発売されました。そこでエスクアのデザインを担当したTOTOの矢部信弘さんと、暮らしに彩りを添えるインテリアブランド「IDÉE」のバイヤー、大島忠智さんの対談を企画。エスクアを通して理想の洗面空間づくり、またライフスタイルを向上させるデザインや機能性について、おふたりに語り合ってもらいました。

TOTO デザイン本部デザイン第一部でデザイン主幹を務める矢部信弘さん(左)と、インテリアブランド「IDÉE」のバイヤー、大島忠智さん(右)。東京・新宿のTOTO東京センターショールームで、「エスクア」の各モデルプランを巡りながらふたりの対談が行われた。

今回、新発売された「ESCUA(エスクア)」は、TOTOの洗面化粧台におけるハイエンドシリーズ。デザインを手がけたTOTOの矢部信弘さんは、「デザインのクオリティはもちろん、機能性もTOTOの誇る最新技術を搭載した、最新にして最高のシリーズになったと自負しています」と、胸を張ります。

ハイエンドシリーズの洗面化粧台をフルモデルチェンジした理由を、矢部さんは「お客様の意識の変化が大きい」と語ります。
「これまで住空間の主役といえば、リビングをはじめ、キッチンやバスルームが特にお客様がこだわる場所でした。しかしここ数年で『洗面所を我が家の顔にしたい』という方が増えてきました。というのもゲストを招いた時、使われるのはバスルームではなくトイレと洗面所です。もちろんご家族も、少なくとも朝晩の2回は洗面所を使用されます。ゲストに自信をもって案内でき、そして自らも心地よく使用できる洗面空間を求めるお客様のニーズに応えるためのモデルチェンジなのです」

東京・新宿のTOTO東京センターショールームでモデルプランを巡り、矢部さんの説明に興味深く耳を傾けるのは、インテリアブランド「IDÉE」のバイヤー、大島忠智さん。世界のインテリア事情を知り尽くした大島さんにとっても、洗面空間は「とても興味のある場所」といいます。エスクアを通して理想の洗面空間、またライフスタイルを向上させるデザインや機能性について、おふたりに大いに語ってもらいました。

その名の通り、キャビネットが空間に浮いているような仕様の「フローティングデザインプラン」。この海外高級ホテルの洗面空間を思わせるスタイリッシュなスタイルが、新発売のエスクアに導入されたシリーズを代表するデザインプランだ。

カスタマイズ性と上質なデザインで、理想の洗面空間を実現。

家族ふたりが同時に利用できる「2連ボウルプラン」の一例。出社や登校準備などで洗面所が混雑する朝も、ふたつのボウルがあれば“洗面渋滞”の心配もない。また2連ボウルプランは間口サイズ1500mmからと、スペース的にも余裕の設計。大人ふたりがストレスなく同時に使用できる。

新発売のTOTOの洗面化粧台シリーズ「エスクア」。その最大の特徴は、洗面化粧台を構成するボウルやキャビネット、カウンター、水栓金具などのパーツが多彩に用意され、それを好みに合わせてカスタマイズできること。まさに自分が思い描く理想の洗面空間に、演出できるというわけです。

矢部 お客様それぞれにお好みのスタイルが違います。そうした多彩なニーズに対応すべく、各パーツを充実。好みのパーツを組み合わせることで、自分流のスタイルが創造できるのです。また当然ながら、新築であれリノベーション物件であれ、洗面空間の間取りなどの環境もお客様ごとに異なります。そのため間口もmm単位での調整を可能とし、あらゆる環境の洗面空間にも導入いただけます。

大島 洗面ボウルも陶器製やカウンター一体型、さらにボウルの位置もセンターや片寄せ、そしてダブルと好みや環境に合わせチョイスできる。水栓金具やキャビネットのカラーや扉の仕様など、組み合わせは無限大ですね(笑)。「IDÉE」でもソファなど一部カスタマイズできる商品を販売していますが、ゼロからつくるフルオーダーはお客様の労力とコスト的にも敷居が高い。対してパターンオーダーならば、こだわりを現実的な労力とコストで反映できますからね。洗面化粧台のハイエンドシリーズにして、お客様に寄り添い多様なニーズを満たすスタンスが素晴らしいと思います。

フローティングキャビネットと同様に、エスクアのデザイン的な特徴である「クリスタルカウンター」。まさに一枚板のようなシンプルな形状で、今回は透明感のある素材に繊細で美しい柄(写真は「霞」)を組み合わせたモデルがラインアップされた。
こちらも新たに導入された「LED照明付き化粧鏡」。調色機能を備え、朝は爽やかな白い明かり、夜は温もりのある明かりと時間帯や気分で調整が可能。またLEDそれぞれが上下に発光するため、空間に広がりをもたらし、手元も明るく照らし出す。

上のフローティングデザインキャビネットやクリスタルカウンターなどは、デザインのクオリティも大幅に向上し、スタイリッシュな理想の洗面空間を演出します。人気インテリアブランドのバイヤーを務める目利きの大島さんも、エスクアのデザイン性の高さに大きな関心を抱いたようです。

大島 フローティングデザインキャビネットは、海外のホテルのようにスタイリッシュですよね。しかも大半が木造の躯体である日本の住宅でも、強度が担保されていることにも感心しました。またクリスタルカウンターはその薄さと質感が、とてもスッキリした見た目で触り心地もいい。今回エスクアの各プランを拝見しましたが、共通して感じたのがとてもシンプルであるということです。

矢部 これまで洗面化粧台は機能を優先しすぎていました。もはやそういう時代ではないことは、お客様の意識の変化からも明らかです。もっと感覚や美意識に訴えるデザイン、とはいえ存在を主張しすぎない、おっしゃる通りシンプルな美しさを目指しました。たとえばフローティングデザインキャビネットで意識したのは、壁に絵画を飾るように化粧台を飾るということ。またクリスタルカウンターも背面の立ち上がりや前面の垂れ下がりをなくし、まったくの一枚板にすることで洗練された印象にしました。なおカウンターの厚さと照明の厚さを統一することで、よりスッキリした佇まいとなりました。

大島 そのシンプルなデザインを実現するため、矢部さんは「ノイズであるラインを減らす、隙間や段差を徹底的に排除した」とおっしゃいました。余計な要素や装飾を削ぎ落とすことで、シンプルで上質な美しさが際立つということですね。

エスクアのなかでも、よりシンプルさが際立つ「センターボウルプラン」の一例。木目調の扉が北欧風のナチュラルな空間と好相性。またボウルはセンターをはじめ、左右への片寄せプランなど、使いやすさや好みに合わせてチョイスすることが可能だ。

パターンオーダーとはいえ、ボウルや水栓金具、そして化粧鏡にキャビネットとエスクアがラインアップするパーツは実に豊富で、その組み合わせは無限大です。となればその組み合わせを楽しむのがエスクアの魅力である一方、選択肢が多すぎて迷ってしまう方もいるかもしれません。

大島 ここまでパーツに選択肢が多いと、実現したいイメージが明確に固まっていないお客様は迷われるかもしれませんね。そうした方にはどのようにアドバイスされるのでしょうか?

矢部 もちろん、自分の好みやイメージが明確なお客様ばかりではありません。その場合、まずはプランをお選びいただきます。エスクアでは、先ほどのフローティングデザインプランを筆頭に、センターボウルプラン、片寄せボウルプラン、カウンタープランなど6タイプの基本プランをご用意しています。そこでご自身の好みや設置環境を考慮してプランをお選びいただき、そこから扉のカラーやカウンター素材、そしてボウルタイプや水栓金具などパーツをお選びいただく流れがよろしいかと思います。

お客様にお届けしたいのは機能ではなく、時間という価値観。

「エスクア」の魅力は、あらゆる洗面空間に対応するカスタマイズ性と上質なデザイン性。各パーツの特徴を説明する矢部さんに、大島さんもさまざまな質問を投げかける。インテリアを手がけるおふたりならではの熱のこもった対談が繰り広げられた。

TOTOといえば、トイレなどに代表される先進のクリーン機能も注目の要素。実はこれまでのTOTOが培ってきた先進技術の数々が搭載されているのです。そして今回フルモデルチェンジに至った理由も、それらテクノロジーの進化も大きな理由だと、矢部さんは語ります。

矢部 ハイエンドラインである「エスクア」には、弊社が開発したクリーン機能を搭載しています。このような最新のクリーン技術をエスクアに取り入れることも、フルモデルチェンジに至った大きな理由です。

大島 水栓とは別に配置された「きれい除菌水」のことですよね? あれは、水栓とは別の水が出るのですか。また、どのような効果があるのでしょうか?

矢部 はい、内蔵のユニットで水に含まれる塩化物イオンを電気分解することでつくられる、除菌成分(次亜塩素酸)を含む水です。この除菌水を排水口に噴霧することで、きれいな状態を長く保つことができます。水からつくられて、時間が経つともとの水に戻るので、環境にも優しく、安心してお使いいただけます。また歯ブラシの洗浄にもお使いいただくことで、汚れを除去し菌の発生を抑制することも可能なのです。

大島 薬品や洗剤も使っていないというのに、それはスゴい! 失礼ながら、まさか洗面化粧台にそこまでのクリーン技術が搭載されているとは思いませんでした(苦笑)。

電気分解のみでつくられる「きれい除菌水」(※)は、歯磨き後の歯ブラシ洗浄も可能。また除菌水は時間が経過するともとの水に戻るため、環境への影響も及ぼさないエコフレンドリーな水でありシステムだ。
※詳しい試算条件は、TOTOのホームページやカタログでご確認ください。
きれい除菌水とともに排水口を清潔に保つのが、この「お掃除ラクラク排水口」。ボウルと一体で段差のない排水口は汚れが付着しづらく、また抗菌・防カビ樹脂製の「らくポイヘアキャッチャー」(受け皿)は、髪の毛がからみにくい構造になっている。

きれい除菌水やお掃除ラクラク排水口など、TOTOが誇るクリーン技術を搭載するエスクア。しかし矢部さんは、「単に最新の技術だから搭載したわけではありません」といいます。その真意とは……。

矢部 我々がお客様に提供したいのは、技術そのものではありません。たとえば毎日必要だったお手入れが、除菌水により週1回でよくなれば、それに費やしていた6日間分の時間を家族や趣味の時間に充てられる。最高グレードの商品だからこそ、機能以上の“価値”を提供したいと思っています。

大島 私が感心したのは、除菌水は時間が経てばもとの水に戻って、環境に影響を及ぼさないということ。「IDÉE」 も環境保全に寄与する素材や仕組みをもつ商品を販売していますが、環境問題に関心をもつ方はやはりそうした商品を選ばれる。近年、自らが購入することで少しでも環境保全に役立ちたいという高い意識もつお客様が増えてきたと実感しています。この除菌水システムも、お手入れの簡便さはもちろん、オプションでもそうした意識で導入される方も多いのではないでしょうか。

キャビネットには引き出しタイプのほか、引き扉タイプもラインアップ。カラーも、質感や柄などにこだわった個性豊かな全13種類を展開する。なかには“マイスター”と呼ばれる、熟練の職人が手吹きにより塗装した最高級モデルも用意されている。

インテリアを専門とする大島さんが高い関心を示したのは、キャビネットの塗装や仕上げをはじめとするデザイン。エスクアの高級感ある質感や「サイレントレール」によるなめらかなドアの開閉などに「なるほど、質感も動作もさすがはハイエンドラインだけありますね」と、大きくうなずきます。

矢部 木目柄には木目の表情を活かした鏡面仕上げモデルと、マット調の2タイプをご用意しています。また最高級グレードの「UVマイスター塗装」(鏡面仕上げ)を施したタイプは、その技術力の高さで“マイスター”の称号が与えられた、熟練の職人が手吹きにより塗装した一点物。扉表面から側面までの一体感にこだわり、艷やかで高級感のある仕上がりがお客様にご高評をいただいております。

大島 多彩なカスタマイズ性とハイセンスなデザイン性、そして上質な仕上がりのすべてを満たしてこそのデザインということですよね。これまで説明をうかがって、エスクアがハイエンドなシリーズであることがより納得できました。近年お客様の嗜好に対して感じているのが、東北大震災以降、洋服や車、外食といった外向けの消費よりも内向け、つまり自宅に関する消費を重視している傾向にあるということ。自宅で豊かな時間を過ごすことを重視されているように感じています。そうした意味からも、洗面空間で過ごす時間をより豊かにしてくれるエスクアは、新築やリノベーションを検討される方の選択肢に上がってくるシリーズだと思います。正直な話、私も欲しくなりましたから(笑)。

矢部 新築やリノベーションの際に、ぜひお待ちしております(笑)。本日はありがとうございました。

大島 こちらこそ、洗面化粧台の最新にして最高級モデルを実際に体感することができて、インテリアに携わる者として、とても有意義で楽しかったです。ありがとうございました。

TOTO システムドレッサー「エスクア」
プラン例/フローティングデザインプラン 間口790mm
鏡:木製一面鏡600mm(上下LED・調色機能付き・エコミラー)
カウンター:クリスタルカウンター 霞(かすみ)
洗面ボウル:角形洗面器(ベッセル式・アウトセットタイプ)
水栓金具:GAシリーズ
キャビネット:フローティングデザインキャビネット(1段引き出しタイプ)
メーカー希望小売価格:¥899,550~(工事費別)
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