“アンデジタルな針”が刻む、新感覚の時。日本のデザインユニットが手がけた「ラドー」の新作ウォッチを紐解く。

  • 写真:宇田川淳
  • 文:土田貴宏

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数々の国際的なデザイン賞を受賞してきた「ラドー」。新たなコラボレーションの相手に選んだのは、気鋭の二人組デザインユニットだった。

YOYは小野直紀(1981年生まれ・左)と山本侑樹(1985年生まれ)が2011年に設立。「空間とモノの間」をテーマに家具、インテリアなどを手がける。作品はニューヨークのMoMAをはじめ各国で販売され、多くの賞を受賞。ミラノサローネなどでの展示も行う。15年より武蔵野美術大学非常勤講師を務める。

小野直紀と山本侑樹によるユニット「YOY(ヨイ)」は、世界中のあらゆる人々に伝わるウィットあふれるプロダクトの開発に取り組んできた。海外のブランドが製品化したり、ニューヨークのMoMA がアイテムを販売したり、そのセンスは国境を超えて評価されている。

スイスの時計ブランド「ラドー」が、そんな彼らに注目。現行モデルの「トゥルースクエア」をベースに、文字盤や針、色などをデザインしたのが「トゥルー スクエア アンデジタル」だ。

0.1mm単位の作業が、潔い印象のデザインを生む。

YOYが手がけた過去の作品①:2013年発表の椅子「キャンバス」。壁に立て掛けた椅子の絵に見えるが、布地に高い伸縮性があり、奥に本物の座面があるので実際に座ることができる。インナーモストから製品化。
YOYが手がけた過去の作品②:2015年発表の照明器具「ポスター」。切り込みを入れたA2サイズの1枚の紙で、壁に張ると中央が膨らみランプシェードになる。

YOYのふたりが発想したのは、アナログとデジタルという2つの要素を大胆にミックスした、簡潔にしてユニークなデザインだった。

「腕時計のスケールでなにができるかを考えていた時、7セグメントのデジタルの形が、時計の針になったら面白いと思いました。現実に存在する針と、デジタルの情報という虚構を対比させることで、アナログとデジタルを行き来するものになったのです」と小野さんは話す。

7セグメントとはデジタル数字を構成する7本のバーで、デジタル時計でも広く用いられてきたもの。時計の2本の針にそのバーを重ねると、まさに「アンデジタル」と呼びたくなる不思議な感覚が生まれた。小野さんが最初のスケッチを描き、山本さんとのやりとりを経てCG化したものをラドーに提案。このデザインが、ほぼそのまま製品化に至った。

YOYが手がけた過去の作品③:2017年発表の壁時計「サンダイアル」。日時計をモチーフとして棒のような濃い線が分針を、その影のような薄い線が時針を表す。

当初のアイデアを際立たせるように、トゥルー スクエア アンデジタルの印象は潔い。しかし7セグメントの線の表現などディテールは検討を重ねた。カラーリングも、ラドー独自のハイテクセラミックスの端正な素材感を活かすブラックとした。

「製品の段階で0.1mm単位という細かい修正をするのは、いままでの僕らのデザインにはなかった。内部のムーブメントにも機械式時計のすごさを感じました」と山本さん。通常の製品とは精度のレベルが異なる、ラドーの時計づくりのクオリティが、この時計の存在感に表れている。

「現在はすべてがアナログからデジタルへと置き換えられていきますが、そこに逆行するものがあっていいし、どちらかが正しいということではない」と小野さん。コンセプトを上質に体現したトゥルー スクエア アンデジタルは、そこに秘められたメッセージが深い魅力を醸し出している。

時針と分針に7セグメントのデジタル数字の要素を用いて、アナログとデジタルを融合させた「トゥルー スクエア アンデジタル」。白い部分はホワイトスーパールミノバを使用しているため独特の光を帯び、夜間はもちろん日中もマットブラックのダイアルから浮かび上がって見える。今年8月に発売された「トゥルー スクエア」をベースとする。限定1002本。自動巻き、ハイテクセラミックスケース&ブレスレット、ケースサイズ38.0×44.2mm、チタニウムケースバック、50m防水。¥264,000(税込)/ラドー(ラドー/スウォッチ グループ ジャパン)

問い合わせ先/ラドー/スウォッチ グループ ジャパン  TEL:03-6254-7330

https://www.rado.com/int_ja/collections/true-square/true-square-designer/R27075152