【ピアジェとゴールドの秘密を解く】講義③:“薄くて美しい”を可能にした、驚きの構造と技術。

  • 写真:宇田川淳
  • 文:篠田哲生
  • イラスト:黒木仁史

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1874年創業のウオッチ&ジュエリーブランド「ピアジェ」。その魅力を語る上で切り離せないゴールドとの深い関係について、4人の講師がひも解きます。第3回は時計ジャーナリストの篠田哲生さんが、ピアジェのエレガンスを支えるカギとなる極薄ムーブメントとゴールド素材、さらにそれらを実現する技術について解説。後半ではゴールドを用いた、多彩な美的表現と技巧を凝らした時計も一挙に紹介します。

ムーブメントの周囲を回転するペリフェラルローターにより、自動巻き式ながら4.3mm厚を実現した「アルティプラノ アルティメート・オートマティック ウォッチ」。自動巻き、18KPG、ケース径41mm、パワーリザーブ約50時間。¥2,940,000(税抜)

ピアジェの哲学は、「美しい時計をつくること」にあります。そのために同社は、まず極薄ムーブメントの開発に力を入れました。ムーブメントがきわめて薄ければ、ケースの装飾やジュエリーセッティング、あるいはダイヤル素材で創造性を発揮しても、時計全体のプロポーションが崩れることはないからです。

1957年に発表した「キャリバー9P」は2mm厚の手巻き式ムーブメントで、その3年後には2.3mm厚の自動巻き式「キャリバー12P」が完成。この極薄ムーブメントを使ったドレスウォッチで、ピアジェは評価を高めます。こういった薄型時計の技術や美意識は、現代のエレガンスウォッチ「アルティプラノ」へと継承されているのです。

キャリバー910Pの地板兼裏蓋。すべてを一体構造とした上で、フラットな部分にうっすらと見える十字型のフレームを加え、さらに強度を高めています。その結果、最薄部分は0.2mmしかありません。
極薄時計をつくるためには、すべてのパーツを薄型設計にしなければいけません。つまみ上げているプレートの厚さは0.52mm。さらに、エッジ部分に綺麗な面取り加工を施します。

しかしここに、ひとつの疑問が生まれます。極薄のドレスウォッチをつくるためには、ケース自体も薄く設計する必要があります。ということは、ケース素材には強度の高い特殊合金を使用する方が効率的では?  しかしピアジェは“美しい時計”という信念をもち続け、優雅で美しいゴールド素材で、極薄のドレスウォッチをつくります。

世界最薄のゴールド製自動巻きウォッチ「アルティプラノ アルティメート・オートマティック ウォッチ」は、ケースバックに直接パーツを組み込むという特殊構造によりケース厚を4.3mmに抑えています。これだけの極薄ケースをやわらかなゴールド素材でつくるために、ピアジェでは見えない場所に工夫を凝らしました。高精度切削マシンによって、モノブロック構造のケースバックを実現し、強度を高めます。さらにフラットな部分には十字型のフレームを加えて着用時の曲がりや変形に対応。その結果、ケースバックの最薄部は0.2mm厚しかないのです。

真ん中の香箱を上から吊り下げ、地板に影響を与えない構造に。香箱の摩擦を軽減させるため、ボールベアリングを挟み込みます。摩擦軽減のためのルビー製穴石も、0.25mmに薄型化。
ピエジェの工房の様子。熟練の職人によって精密な機構が組み上げられます。

この最薄部は香箱の下にあたりますが、これも考え抜かれた構造です。そもそも、動力ゼンマイを収納する香箱は、常に強い力が加わるのでしっかりとした軸受けが必要となります。そのため地板部分を厚くして強度を高めるのがセオリー。しかしこれでは薄型化は難しい。そこでピアジェは、精度の安定や実用的な持続時間を考えながら、可能な限り香箱を薄く(1.14mm厚)するだけでなく、上から吊り下げるフライングバレルという構造を考案しました。こうすれば地板側に香箱の力が加わらないので、厚くする必要がなくなります。本来であれば最も厚くなる香箱まわりを薄くすることで、ゴールド素材であっても極限の薄さを追求できるのです。

時計業界では、薄さ自慢の時計が増えています。しかし“薄くて美しい”時計はピアジェの独壇場。ゴールド素材を活かすために構造から開発するという、マニュファクチュールとしての誇りを感じられるはずです。

篠田哲生(しのだ・てつお)1975年、千葉県出身。時計専門誌やファッション誌、ビジネス誌など幅広い媒体で時計記事を担当し、イベントへの登壇も多数。時計学校を修了した実践派で、スイス取材の経験も豊富。Pen Onlineの動画コンテンツ「Watch The Watches」に出演中。

メゾンの哲学を愉しむ、華麗なる腕時計たち。

アシンメトリーなラグで、周囲の視線を引き寄せるエレガントなジュエリーウォッチ「ライムライト ガラ」。繊細なメッシュブレスレットもピアジェ製。宝飾工房と時計工房を隣接させ、ハイレベルな表現が可能に。クオーツ、18KPG、ケース径32mm。¥4,488,000(税抜)
小ぶりで可憐なプロポーションでありながら、極薄機械式ムーブメント、キャリバー430Pを搭載する「トラディション」。時計技術と宝飾技術の両方で、ピアジェの美意識を味わうことができます。手巻き、18KWG、ケース径26mm、パワーリザーブ約43時間。¥5,160,000(税抜)
バーインデックスとバトン針で構成する繊細なドレスウォッチのベゼルにダイヤモンドをセットし、さらなる華やぎを楽しむ「アルティプラノ」。さりげなくも、ドレスアップの格を上げます。手巻き、18KWG、ケース径38mm、パワーリザーブ約43時間。¥2,700,000(税抜)
オーバル形ダイヤルの優美さで人気の「ピアジェ グベナー」。レトログラード針などで表現する永久カレンダー機能に加え、8時位置のナイト&デイ付きデュアルタイム表示で実用性を高めます。自動巻き、18KPG、ケース径43mm、パワーリザーブ約80時間。¥6,440,000(税抜)
ケースバックにパーツを組み込む特殊構造の「アルティプラノ」。手巻き式のキャリバー900Pを使用し、ケース厚3.65mmを実現。ベゼルにはダイヤモンドをセットして、華やかさも加えました。手巻き、18KWG、ケース径38mm、パワーリザーブ約48時間。¥3,600,000(税抜)
ラウンドケース×クッションダイヤルという独特のコンビネーションで人気の「ピアジェ ポロ」。クロノグラフはクラシカルなツーカウンター式を採用しており、エレガントさがさらに極まります。自動巻き、18KPG、ケース径42mm、パワーリザーブ約50時間。¥3,260,000(税抜)
左:スモールセコンドを10時位置に収め、シンプルながら個性が引き立つ「アルティプラノ」。手巻き、18KPG、ケース径34mm、パワーリザーブ約43時間。¥1,632,000(税抜)。右:9時位置にカレンダーを備えることで精悍な顔を見せる実用系「アルティプラノ」。ケース厚は6.36mmに抑えている。自動巻き、18KPG、ケース径40㎜、パワーリザーブ約44時間。¥2,540,000(税抜)

問い合わせ先/ピアジェ:0120-73-1874
www.piaget.jp

アート・アンド・クリエイティビティ・エキシビジョン
ダリの手がけたダリ・ドールやエリザベス・テイラーの愛用していたカフウォッチなど20点ほどの貴重な時計が、ピアジェ 銀座本店にて期間限定で展示される。国内で目にすることのできる、またとないチャンスだ。
開催期間:開催中〜10/31まで
開催時間:11時30分〜19時30分
開催場所:ピアジェ 銀座本店
東京都中央区銀座7丁目8-5