【ピアジェを巡る6つの逸話】第6回:限界を超えて夢を具現化する、メゾンの先進性。

  • 文:並木浩一
  • イラスト:コサカダイキ

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1874年創業、至高の技が光るウォッチ&ジュエリーメゾンのピアジェ。この連載では、ピアジェのものづくりについて6つの視点から解説する。最終回となる今回は、2018年に発表されたコンセプトウォッチ「アルティプラノ アルティメート コンセプト」を通し、ピアジェの先進性について語りたい。

手巻きモデルのパーツ数の常識をはるかに超えた、283パーツからなる緻密な構成。顕微鏡レベルでの作業も要求される組み立ては、超人的な技術と集中力を要する。

ピアジェが今年、正式に発売を開始した「アルティプラノ アルティメート コンセプト」は、時計史に残る偉業と賞賛されている。機械式手巻きながら、なんと2.0mmという薄さ。絶対に不可能と思われた“コンセプト”が、本当に実現した。初めて人の目に触れたのは2018年。文字通りコンセプトモデルとして披露された。華々しい存在は脚光を浴びたが、実用化に至るとは思われていなかっただろう。それでも未来に向けた意欲に、誰もが共感を寄せた。そして2年後、世界はピアジェの快挙を見ることになる。2mmというのは象徴的な数字である。

薄型時計のトップブランドとしてピアジェが勇名を馳せたのは、1957年発表の超薄型ムーブメント「9P」まで遡る。その薄さが、まさに2mmだった。限界を極めるそのようなタイトな空間に、今度は時計そのものを収めてしまった。強度を確保するために、ケースにはコバルト合金を採用。283ものパーツを駆使した設計は、薄さを少しも損なわない。すべて表側から見られる成果は奇跡的に立体的ですらあり、ピアジェらしい美しさをもつ。ピアジェの先進性は、未来の夢を見せるだけでは終わらない。鮮やかに現実化するまで一貫しているのだ。

ケースとムーブメントを一体化し、歯車は0.12mm、サファイアクリスタル風防は0.2mmの薄さに。新構造の香箱や一体型リューズなどの新たな技術も随所に盛り込み、プロトタイプ製作に4年を費やした、ピアジェの先進性の結晶。手巻き(900P-UCピアジェ自社製ムーブメント)、コバルト合金、ケース径41mm、20m防水、ブルーバルティモラテクニカルテキスタイル製ストラップ(厚さ1.5mm)、ピアジェブティック限定。¥48,400,000(税込)
すべてをさらけ出しながらも神秘的であるムーブメント。無駄な厚みはなく、あらゆる細部にこれ以上ない念入りな仕上げが施されている。
薄さと強度を同時に確保するためにコバルト合金を使用したケースは、腕時計の常識を超えたシルエットを見せる。超絶的な技術の達成は、ゼロに近づく未知の装着感をもたらす。

問い合わせ先/ピアジェ コンタクトセンター  TEL:0120-73-1874  www.piaget.jp