【ピアジェを巡る6つの逸話】第5回:超絶技巧による、美しきトゥールビヨン

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:並木浩一
  • イラスト:コサカダイキ

Share:

1874年創業、至高の技が光るウォッチ&ジュエリーメゾンのピアジェ。この連載ではピアジェのものづくりの全貌について、6つの視点から紐解いていく。第6回は薄型時計「アルティプラノ トゥールビヨン」に施された、超絶技巧について解説する。

わずか4.6㎜の厚みしかない薄型手巻きムーブメントにトゥールビヨンを収めることは、それだけで至難の業だ。繊細を極めるキャリッジの重さはわずか0.2ℊ。

ピアジェのつくる新作は、世界の時計関係者からの注目を常に集める。見た目に優れたニューモデルというだけでなく、瞠目の技術を秘めているに違いないという期待感で目を逸らせないのだ。今回紹介する「アルティプラノ トゥールビヨン」は、そうしたピアジェの技術なしには生まれない時計である。
薄型時計の傑作コレクション「アルティプラノ」の名に背かず、ケース厚はわずか7.4㎜にまで抑えられている。そこに、現代時計ブランドの技量が試される複雑技術トゥールビヨンを装備する、自社製「Cal.670P」ムーブメントをのせた。
ブリッジなしに1点でキャリッジを支えるフライングトゥールビヨン機構は、製作もバランスの保持も、難度がきわめて高い。さらにチタン製のブリッジを組み込み、髪の毛1本の細さしかない部品も駆使した。頭文字Pを掲げたキャリッジは、わずか0.2ℊの重さしかもたない。格上の超絶技巧を、ピアジェは当然のような冷静さで見せる。トゥールビヨンと時刻表示は2時と8時で対称化され、無限のシンボル8の字形の影を描いた。薄くて軽く、複雑で精緻で、この上なく美しいトゥールビヨン。ピアジェは人の期待と想像を、何度でも超えてみせる。

自社製薄型手巻きムーブメント「Cal.670P」搭載の「アルティプラノ トゥールビヨン」。オフセンターから放射状に伸びる流麗なサンレイ模様を、ギョーシェ仕上げで浮かび上がらせた特別なブルーラッカー文字盤。ブルーのアリゲーター革ストラップも絶妙に映える。18Kピンクゴールド、ケース径41㎜、ケース厚7.4㎜、ベゼルにダイヤモンド60個(合計1.44ct)使用、サファイアケースバック、30m防水、世界限定88本。¥13,278,000(税込)
トゥールビヨンの開口部を2時方向、オフセンターの時分針を8時方向に置いた。アシメトリーであり、位相をずらしたシンメトリーでもあるこのユニークなレイアウトは、「Cal.670P」だけが描き出すアイコニックな平面構成と表裏一体。「アルティプラノのトゥールビヨン 」であることを訴求する個性であり、アイデンティティでもある。
ムーブメント地板はトゥールビヨン部分だけ開口しており、ここは表裏がつながったスケルトン仕立てのシースルー。トゥールビヨンの神秘的な構造と動作に十分な光を取り込み、完全な視覚の愉しみを確保する。円形の開口部を中心に水紋に見立てたような円弧を重ねるコート・ド・ジュネーブ模様は、緻密で完璧な印象を与える。

問い合わせ先/ピアジェ コンタクトセンター  TEL:0120-73-1874  www.piaget.jp