これまでの常識を覆した走りの体験、「マクラーレン GT」が指し示す次世代グランドツアラーのカタチとは。

  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)
  • 文:サトータケシ

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「マクラーレン GT」は、グランドツアラーの新機軸を打ち出したモデルだ。ではそのデザインやエンジニアリングにおいて、従来のグランドツアラーとなにが異なるのか。自然と人間の営みが生み出した絶景と対比することで、マクラーレン GTが提示する新たな世界観がはっきりと見えてきた。

「マクラーレン GT」は、スイッチの操作でフロント部分の車高を20mm上げることが可能。見知らぬ土地へ行く際には、実に有用なメカニズムだ。

マクラーレン GTは「GT(グランドツアラー)」というネーミングの通り、長距離を快適に駆け抜けるために開発されたモデルだ。ただし従来のグランドツアラーとは異なる個性をもつ、革新的なGTと言える。これまでGTといえばどっしりと安定した走りで、粛々とトリップメーターの数字を増やしていくようなモデルだった。けれどもマクラーレン GTは、デザインも走行性能も刺激的。線を引くように走行距離が伸びるというより、爆発する点が連続して遠くまで行くようなイメージだ。今回はマクラーレン GTの先鋭的なデザインとエンジニアリングを際立たせるために、自然が生んだ奇観である千葉県富津市竹岡の「燈籠坂大師(とうろうざかだいし)の切通しトンネル」の絶景と対比させてみた。

「すべてのものに理由がある」という、独自の設計思想。

前ヒンジの跳ね上げ式ドア「ディヘドラルドア」には、半ドアを防ぐオートクローズ機構が備わる。サイドシルが低くて狭いので、乗り降りも容易だ。

マクラーレンの各モデルには、確固たる設計思想がある。それは「すべてのものに理由がある」というもので、この考えはマクラーレン GTのデザインにも反映されている。飾り立てることが目的ではなく、まずドライバーを中心に、運転に専念できるように造形されているのだ。これだけ車高が低くて尖ったスタイリングなのに、運転席からの視界が良好なのはちょっとした驚きを感じる。おそらく、F1での極限のバトルで培ったノウハウの賜物なのだろう。そして空気の流れを最適化することや、エンジンの重心を低く車体を軽くすること、GTにふさわしいラゲッジスペースを確保することなど、機能をカタチにしていった。つまり盛る方向ではなく削ぎ落とす方向のデザインで、この引き算の美学が唯一無二の個性を生んだのだ。

真横から見ると前後のオーバーハングが短い、ミッドシップレイアウトらしい引き締まったスタイリングであることがわかる。

マクラーレン GTの走行感覚は、従来のGTの特徴である重厚な走りとは一線を画すものだ。アクセルペダルを踏み込めば、電光石火のレスポンスでV型8気筒ツインターボが反応。ハンドルを切れば、まるで自分とマシンが一体化したかのように意のままに曲がる。この鋭い切れ味は、車体を軽くしたことで生まれた。マクラーレン GTの「モノセルⅡ-T」と呼ばれるシャシー(基本骨格)は、超軽量で強靭なカーボンファイバー製なのだ。と同時に、路面状況からクルマの動きを予想して足まわりのセッティングを変えるという、先進的なサスペンションシステムや、徹底した遮音によって快適な静粛性も確保している。結果として、リアルスポーツカーの軽快感とラグジュアリーカーのリラックス感を両立するという、これまでの常識を覆すモデルとなったのだ。

抑揚のあるリアビューは、空気の流れを最適化することを第一義にしたデザイン。高速で走るグランドツアラーは空力性能が重要となる。

マクラーレン GTは、エンジンをドライバーの背後に搭載するミッドシップレイアウトを採っている。F1マシンがこのレイアウトであることからもわかるように、重量のあるエンジンを車体の中央に積むミッドシップは、優れた旋回性能を誇る。一方で、グランドツアラーは真っ直ぐな道を安定した姿勢で突き進むことも求められる。そこでマクラーレン GTは、空気の流れを整えてマシンの動きを安定させるための工夫も施されている。たとえば固定式のリアウィングやリアディフューザーといったエアロパーツが、エアロダイナミクス性能を引き上げた。結果として、「よく曲がる性能」と「真っ直ぐ走る性能」を高度にバランスさせることに成功したのだ。

新世代を体現する、モダンでラグジュアリーなインテリア

美しいステッチやパイピングがあしらわれた最上級のレザーと、アルミニウムの硬質な輝きが織りなすインテリア。モダンでラグジュアリーな世界観を表現している。

マクラーレン GTに乗り込んで真っ先に感じるのが、エクステリアとインテリアの世界観がシームレスにつながっているということ。インテリアにも「すべてのものに理由がある」という設計思想が貫かれ、シンプルで無駄のない機能美がドライバーを包み込む。そして走行感覚がこれまでのグランドツアラーと異なるように、インテリアの設えも新たな提案がなされている。ウッドパネルで重厚に仕上げるのではなく、上質なレザーと無垢のアルミニウムを用いることで、モダンでラグジュアリーな空間を演出しているのだ。タッチパネル式のインフォテインメントシステムは直感で操作が可能で、このあたりのインターフェイスも実に現代的な仕様となっている。

横方向の強いGを受けてもしっかりと身体をサポートするホールド性能と、長時間座っても疲れを感じさせない快適さを兼ね備える優れたシート。

グランドツーリングを楽しむためには、キャビン内を快適にしなければならない。光を効果的に取り込んだ明るいキャビンは、見晴らしがよいことで解放感もあり、気持ちよくドライブすることができる。また長距離、長時間のドライブで重要な役割を果たすシートの設計にも細心の注意を払っている。完璧なドライビングポジションを得るためにテクノロジーとノウハウを注いで新開発したシートは、シンプルな形状でありながら、ドライバーの身体はもちろん心まで包み込むようにホールドしてくれる。そして最高級のグレインレザーにあしらわれた繊細で美しいステッチやパイピングは、マクラーレンのクラフツマンシップを象徴するものでもあるのだ。

420リットルの容量を誇るリアのラゲッジスペース。185cmのスキー板とブーツを2セット、あるいはゴルフバッグと手荷物を収納可能だ。フロントにも150リットルの荷室がある。

ミッドシップレイアウトを採用したクルマは、運動性能に優れる一方でラゲッジスペースが最低限になる、というのがこれまでの常識だった。けれどもマクラーレン GTは、そんな常識を過去のものにした。吸気と排気のメカニズムを工夫することで、ドライバーの背後のエンジン上部にラゲッジスペースを確保。そしてこの荷室スペースのフロアに「スーパーファブリック」という革新的な新素材を配することで、大切な荷物を安心して格納できる空間となった。強固なガードプレートを適正な間隔で並べたスーパーファブリックは、傷や染みに対して強い耐久性を発揮し、熱や衝撃からもラゲッジを保護してくれるのだ。

自然と人智が育んだ景観と、次世代を体現したグランドツアラー

千葉県富津市竹岡の「燈籠坂大師の切通しトンネル」は、館山自動車道を富津竹岡インターチェンジで降りて約5分で到着する。知る人ぞ知る景勝スポットだ。

千葉県富津市の「燈籠坂大師の切通しトンネル」は、燈籠坂大師へと続く参道であり、弘法大師が行脚中にそこで休憩したという口碑が残されている。もともとは登り下りが急であったために、明治から大正とおぼしき時代に切通しトンネルを手掘りした。その後、昭和に入ってからは新しい工法でさらに掘り進められ、現在のカタチになったとされる。トンネルの高さは約10m、長さは約100mで、自然と人智が合わさって生まれた奇観に思わず息をのむ。この景観の中にマクラーレン GTを置いてもしっくりと馴染むのは、マクラーレンのデザイン哲学が動植物など自然美をモチーフとしているからなのだろう。

ステータスを誇るための押し出しの強さや、これ見よがしの華やかさがあるわけではないのに、確固たる存在感を湛えているのがマクラーレン GTの特徴だ。

マクラーレン GTは、あらゆる面で従来のグランドツアラーの常識を覆すモデルだ。無駄な装飾のない、流れるようなスタイリングは、野生動物を彷彿とさせる。リアルスポーツのタイトなドライブフィールと、地の果てまで駆け抜けたくなるコンフォータブルな乗り心地の両立は、「快適性=重厚な乗り心地」という従来のイメージを一新するものだ。さらにミッドシップレイアウトでありながら、大人2人が余裕をもってドライブ旅行に出かけることができる室内空間も確保している。これらの特徴は、どれもモータースポーツの最高峰を戦うことで得た高度なテクノロジーとノウハウから生まれたもの。マクラーレンでしか開発することができなかった新世代のグランドツアラー、それがマクラーレン GTなのだ。

マクラーレン GT

●サイズ(全長×全幅×全高):4683×2045×1213mm
●エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
●排気量:3994cc
●最高出力:620PS/7500rpm
●駆動方式:MR(ミッドシップエンジン後輪駆動)
●車両価格:¥26,950,000(税込)

問い合わせ先/マクラーレン・オートモーティブ
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