「U」の文字盤には、幾何学的に整然と描かれた円弧と線分の一方で、クラシカルなローマ数字が位置につく。デザイナー自身がその先端にいるモダンの表象と、古代ローマ＝紀元前からの記号が、数千年のギャップを超えて邂逅した。シンプルさがミニマルなレベルを踏み越し、腕時計の普遍性に接近するさまはスリリングだ。未来的でありながら普遍的でもあるスタイリッシュな新作「U」はさまざまなファッション・スタイルの腕元にもマッチする。
構造とディテールは巧緻を極めている。切削加工で曲面を仕上げたガラスと、カーブする文字盤の視覚的コンビネーション。逆アールを描く未来的なケースサイドのダイナミズム。垂直方向への可動ラグを得て、手首に官能的なテクスチャーを与えるバンドは、革では天然ヌメ革を採用し、特別に薄いメタルバンドは手首を舐めるように添う。自分で簡単に長さ調整ができる構造は、サプライズギフトにも絶好だ。
プロジェクトがデザインの意思を認め、困難な製作をメーカーが実現する。 ISSEY MIYAKEプロデュース、和田 智デザイン、セイコーのデベロップ＝理想のトリニティは、新しいかたちを生んだのである。