世界に誇る日本の伝統工芸「漆器」は、数千年もの歴史があります。現代でも生活道具として暮らしに溶け込んでいますが、この漆芸をモダンアートへと昇華させたのが、漆芸家の村瀬治兵衛です。その優美なフォルムを湛えた作品は、グランドセイコーのエレガントな魅力に通じるものがあります。
化学的な特性によって硬化し、優れた耐久性をもつ“漆”を使った漆器は、日本の風土に合った変様を遂げ、生活に欠かせない実用品となりました。しかも長い年月をかけて技術を継承していくことでフォルムが洗練され、芸術的な価値を認められるようになりました。使ってよし、愛でてよし――。それが漆器の魅力なのです。それはグランドセイコーの腕時計にも当てはまります。自社一貫製造を行うマニュファクチュールブランドならではの独自性と機能、そして感性に訴える優美なデザインを実現した腕時計もまた、暮らしを彩る銘品と言えるでしょう。
ていねいな手仕事から、すべての創作が始まる。
造形と塗りに宿る、手仕事の痕跡。
本来、漆芸の世界では、ベースとなる木地をつくる木地師と、漆を塗って作品を仕上げる塗師が異なる分業制になっています。しかし当時の趣味人や芸術家の北大路魯山人との出会いにより、分業では限界があると考えたのが、愛知県名古屋で江戸時代から続く木地師の家系に生まれた初代・村瀬治兵衛でした。
彼は石川県輪島から職人を呼び寄せて漆塗りの技法を学び、伝統的な根来塗(ねごろぬり)の古い作品の復元や修理を手がけることで技術を高めていきました。この根来塗とは和歌山県の根来寺をルーツとし、下地に黒漆を、その上から朱漆を塗る漆芸。表面の朱漆が摩耗して下地が現れることで、それが味わいとなるのです。現当主となる三代目・村瀬治兵衛も、その伝統を受け継いでいます。デッサンし、素材と向き合い、木地をつくり、塗りを施す。そのすべての製作工程は、必ず人の手によって生み出されるものなのです。
美意識を凝縮した、その優雅な佇まい。
美しい工芸品と同じように、高級時計も人の手からしか生み出せません。小さなパーツまでていねいに磨き、やわらかなケースのフォルムや美しい光沢面をつくり出すのも、すべて職人の手の感覚によるものです。グランドセイコーが細部までこういった美しさを追求できるのは、ムーブメントからケースまで自社一貫製造するマニュファクチュールブランドだからであることは間違いありません。
特に時間を知るのにも携帯電話やスマートフォンでこと足りる時代に入ると、高級時計は嗜好品としての価値がいっそう高まりました。身に着けることで気分が高揚するような、所有する人の感性に訴えかける価値が求められるのです。この「SBGK007」は、そういった時代が求めたエレガントなドレスウオッチ。手仕事から生まれる優美な表情で、流れる時を特別なものにしてくれることでしょう。
緊張感のある曲線が、美しさを生み出す。
漆芸の基礎となる「木地」は、ろくろに固定した木材を回転させながら、鉋(かんな)で削って型をつくっていきます。職人は0.01mmの単位で、削る量を考えながら作業を進め、ろくろから外してじっと吟味する。そして自分の心の中で合点がいくと、次の工程へと進みます。使う道具は江戸時代から変わらないので、理想のフォルムをつくるためには、自らを鍛錬するしかありません。
緊張感をもってモノづくりと向き合うこと。そうすれば目が鍛えられ、精度が上がり、新たな形状が見つかります。そもそも根来塗は、祭器として大きな柱の寺で使用されていたものでしたが、これを現代の暮らしで使うのならば、サイズは小型化し、フォルムも変化していくことは必然。時代とともに歩み、感性に訴える美を探求することが大切なのです。
日本の美意識が導いた、心に響く優雅なフォルム
精度の追求が、美しいディテールを生む。
腕時計の業界では、メートル法導入以前のフランスで使われていた「リーニュ」という単位が用いられることがあります。1リーニュは2.255mmであり、リーニュの最小値は0.564mm。つまり、この数値以下の精度を出すという考え方は存在しなかったのです。しかしセイコーは違いました。早い段階で時計設計に使用する単位をミリに変更し、0.01mmまでの設計や加工の精度を目指しました。
この先進性こそが、キレのある平面と稜線に象徴されるグランドセイコーの造形美へと結びついたのです。「SBGK007」のケースは、平面を活かしつつラグへとやわらかに連なっていきます。そしてこのやわらかなラインに沿うように、ドーム型デュアルカーブガラスとカーブダイヤルを組み合わせました。その姿は仏堂の頂上や橋の欄干などを飾る宝珠(ほうじゅ)のようでもあり、特別な時間を手元で刻んでくれるのです。
自然の表情をとどめた、野趣あふれる器。
根来塗の修復や写し(作品の形状などを模倣すること)などで経験を積んだ当代の村瀬治兵衛は、しだいに新しい造形を求めるようになります。椀や盆などの伝統的な食器は、既に先人たちがつくってきました。だからこそ自分ならではの、理想とする漆芸の表現を追求するのです。自身の感性に導かれながら創作活動に打ち込むと、10年ほど前から国内外でモダンアート作品として評価されるようになりました。
原木の荒々しい質感をそのまま活かした「銀彩鉈削 水指(ぎんさいなたそぎ みずさし)」は、山奥で数百年育った野趣あふれる欅(けやき)材を使った作品。自然ならではの造形を漆芸へと昇華させた創造性が高く評価されて、東京国立近代美術館工芸館やアメリカのフィラデルフィア美術館に収蔵、スイスで開催されるアート・バーゼルにも招かれました。こうした新たな刺激を受けることで、さらなる創作への探求心が生まれるのです。
機能と実用に寄り添う、優美な腕時計。
1960年に誕生したグランドセイコーは、最高峰の実用時計という評価を受けてきました。スイス・クロノメーター規格よりも厳しい基準で精度を追求し、視認性や装着感を大切にすることで着ける人に寄り添う姿勢は、まさに“正確な時を刻み、伝える”という時計の本質に沿っています。それゆえ本当にいい腕時計を持ちたいという人々の心を捉えたのです。
グランドセイコーが考えるドレスウオッチとは、どんなものなのでしょうか。このエレガンスコレクション「SBGM221」は、アイボリーのダイヤルや緩やかに流れるラグのラインが印象的な、クラシックでエレガントな表情を見せるモデルです。しかも身に着けるシーンを想定し、暗い空間でもしっかりと光を反射するように多面カットされた針やインデックスによる高い視認性と、GMT機能を備えています。これはフォーマルな場において、求められる役割や実用性を追求しているからに他なりません。
暮らしに寄り添い日常を彩る、エレガントな機能美。
研ぎ澄まされた感性、技術が宿る漆芸品。
三代目・村瀬治兵衛の漆芸は、原木との出合いから始まります。逆によい木材との出合いがなければ、作品をつくることはできません。木地づくりに取りかかるまでに何年も待つこともあり、結果的に採算度外視になることも多々あるそうです。しかし「これを逃したら一生後悔するだろう」と思わせるほどの木材との出合いもある。だから創作活動に終わりはないのです。
ここまで自分自身の創作表現を追求できるのは、木地づくりから漆塗りまですべての工程を一貫して製作しているから。“心で受けて、身体でつくる”わけですから、他人には任せられないのです。しかも彼の作品はどれも、道具として使うことを前提にしているため、現代の暮らしに馴染む機能性やサイズ感も意識しているとのこと。このような条件があるからこそ、作品に研ぎ澄まされた美しさが生まれるのです。
機能性にも配慮した、優雅なフォーマルモデル
腕時計は、所有者の人生という時間を刻むものでもあります。であればライフスタイルのさまざまなシーンを彩る、そんな特別な腕時計があってもいいのではないでしょうか。この「SBGK007」は、パーティや式典などハレの舞台に合わせたいモデルです。新たに開発した手巻機械式の薄型ムーブメントを搭載することでケース全体の厚みを抑え、流麗な曲面を描く風防ガラスとダイヤルでやわらかなフォルムをつくりながら、なお11.6mmという薄さにまとめています。
そのため手首に綺麗に馴染み、シャツの袖口にもスッと収まります。それでいて大きな針やインデックスには光を反射させる美しいカットを施し、パワーリザーブは約3日間を確保するなど、機能性や実用面もしっかりと意識された仕様になっています。人生の大切な時間を刻む特別な腕時計は、それを所有する者のライフスタイルも豊かに彩ってくれるのです。
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