フィアット×山形の緞通、イタリアと日本のモノづくりが育んだ絆。

  • 写真:杉田裕一
  • 文:和田達彦

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日本との絆をより深く結びたいという思いから、イタリアの自動車メーカー、フィアットが取り組む「フィアット×メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」。日本各地の優れた伝統工芸品とその技術に新たな光を当てる活動の今回の舞台となったのは、山形・山辺町です。

今回の作品テーマは「山形の緞通(だんつう)」。フィアットのエンブレムをモチーフにしたラウンド型の緞通マットを製作することとなった。

「イタリアの伝統工芸にも、イタリア人が知らないものがたくさんありますが、それは日本でも同様。そうしたものを皆さんに伝えていきたいのです」と語る、FCAジャパンのマーケティング本部長を務めるティツィアナ・アランプレセ。

「フィアット×メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」は、オリジナルの協働プロダクトづくりを通して、日本各地の優れた伝統工芸を紹介する活動です。日本のモノづくり文化の継承を目指すNPO法人メイド・イン・ジャパン・プロジェクトとともに、その技術に新たな光を当ててきました。そして今回のコラボレーション相手となったのは、山形・山辺町のオリエンタルカーペットが手がける毛織物の「山形緞通(だんつう)」です。

巧みな糸染めと手仕事が生み出す、山形緞通の繊細なぼかし表現。

完成した「山形県 山形緞通マット」。2006年から採用されているフィアットの現行エンブレムをあしらったラウンド型のマット。フックガンという工具を用いてキャンバス生地に毛糸を差し込んでいく手刺で織られ、グラデーションによってエンブレムの立体感が見事に再現されている。

緞通とは絨毯の別名ですが、一般的には中国で発展したスタイルのものを指します。現在のイラン周辺で誕生したペルシア絨毯と比べて厚みがあり、製品によっては表面を削って立体感を出す加工が施されている点などが主な特徴です。

オリエンタルカーペットは、中国から技術者を招いて1935年に創業。かつては染色の町として栄えた山形の山辺町でしたが、当時は主だった産業、特に女性が働ける場が少なくなっていました。そんな町を、絨毯づくりを産業として広めることで盛り上げていきたいという思いがあったといいます。以来80年以上にわたり、機械織が主流となった現在も「手織・手刺」によるハンドメイドの絨毯づくりにこだわり続けています。その技術は高く評価され、同社の製品は皇居の新宮殿やバチカン宮殿、歌舞伎座など、国内外のさまざまな施設に納品されています。また2013年には、オリジナルブランド「山形緞通」を立ち上げ、著名デザイナーのコレクションをはじめ、斬新なデザインの緞通を意欲的に送り出しています。

デザイン図をもとに、縦糸に横糸を結んでカットしていく作業を繰り返す手織の工程。熟練した職人でも、1日に織り上げられる長さはわずか7cmほどだという。
毛糸の染色工程。色出しは気温や湿度などの諸条件によって微妙に変わるため、基本的に製作する緞通ごとにそのつど色合わせを行った上で染色する。
木組みの工場の中でモノづくりについて語り合う、FCAジャパンのティツィアナ・アランプレセ(右)とオリエンタルカーペットの渡辺博明社長(左)。
製品によっては、新品の時から使い込んだような風合いを出すためにオリジナルのマーセライズ加工を施す。1945年に建造された木組みの工場で行われる工程だ。

山形緞通の最大の魅力は、その豊富な色づかいにあります。使用する色は2万以上におよび、ぼかしやグラデーションといった繊細な表現も可能。オリエンタルカーペットではデザインから毛糸づくり、織り、そしてアフターケアまですべての工程を社内で行っています。織りの工程は、縦糸に横糸を結んでカットする作業を繰り返して織っていく「手織」と、フックガンという工具を用いてキャンバス生地に糸を差し込んでいく「手刺」の2種類があります。200×140cmの一般的なサイズの絨毯の場合、手織で約3カ月、手刺で約1週間はかかるそうですが、いずれも高い技術を要する作業。手織や手刺の作業以降は、ひとつの製品を最後の仕上げまでひとりの職人が担当します。

世界的に知られる山形緞通のぼかしは、微妙な色調に毛糸を染め分け、それを組み合わせる技術、そしてその毛糸を使って正確に織り上げていく技術があってこそなせるものなのです。完成した山形緞通マットを見て「毛糸でエンブレムのグラデーションまで表現されているのが素晴らしい。マジックのようです。日本の各ディーラーに置きたいですね」と、アランプレセは感嘆の声を上げました。

アートを感じさせるSUV、フィアットの「500X ポップスター プラス」

フィアットの「500X ポップスター プラス」。500ならではのキュートなデザインに、優れた居住性と利便性を備えたコンパクト5ドアモデルだ。

オーダーメイドに対応しつつ、自社製品にも意欲的に取り組んでいるオリエンタルカーペット。「イタリアのカロッツェリア(車体製造業者)のモノづくりを参考にしたんですよ」と語る、渡辺博明社長。「職人の手で暮らしを彩る製品がつくられているのですね」と、アランプレセも感心している様子です。

新品の時から使い込んだような風合いを出す加工を施す場合もありますが、基本的には新品の状態で半分、日々使うことで完成するという山形緞通。大胆なデザインと繊細な色づかいは絵画のような芸術性を備えていますが、それと同時に人々を足もとから癒し、もてなす実用品でもあるのです。これはフィアットのクルマとも相通じるところがあります。伝統に裏打ちされた技術によってつくられ、日常のツールとして使う中でアートを感じさせてくれるフィアットの「500(チンクエチェント)」。ガレージに佇むその姿を見る時、ドアを開けてシートに身を預ける時、そして軽快に街を駆け抜ける時。そのつど新鮮なインスピレーションを与えてくれるのです。

愛らしいフロントフェイスに丸みを帯びたボディ。現行の「500」の特徴を活かしつつ、SUVスタイルにまとめられている。
ブラック×ダークグレーのシックなインテリア。ダッシュボードは「500X」専用の素材を用い、質感高く仕上げられている。
リアパーキングカメラと各種センサーをはじめ、前面衝突警報システムや車線逸脱警報システム、自動ブレーキなど最新の安全機能を装備する。
リアまわりも500譲りのキュートなデザインだが、500Xはひと回りワイド。よりたくさんの荷物を積むことができる。

1957年に登場し、その愛らしいデザインと使い勝手のよさからイタリアはもちろん、世界中の人々に親しまれた2代目の「ヌォーヴァ 500」。そして先代のデザインを受け継ぎつつ、現代のクルマとして必要な性能を備えて2007年に発表された3代目「500」。2015年から販売されている「500X」は、このデザインを巧みに取り入れつつ、サイズアップしてSUVスタイルに仕立てられたモデルです。

3ドアの500に対し、500Xは5ドアの仕様。コンパクトながらゆとりのある室内空間は、4人家族が快適にドライブを楽しむことができます。また年ごとに機能や装備がアップデートされ、安全性と利便性が高められているのも魅力です。3タイプある500Xのうちこの「ポップスター プラス」は、1.4マルチエア140馬力のエンジンに6速乾式デュアルクラッチオートマチックトランスミッションを組み合わせ、高いパフォーマンスと低燃費を実現。質感の高いレザー張りのパワーシートに包まれながら、パワフルで小気味よい走りが味わえます。

フィアット 500X ポップスター プラス

●サイズ(全長×全幅×全高):4250×1795×1610mm
●エンジン形式:直列4気筒16バルブ マルチエア インタークーラー付きターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:103kW(140PS)/5000rpm[EEC]
●駆動方式:FF(フロントエンジン前輪駆動)
●メーカー希望小売価格:¥3,165,000(税込)

問い合わせ先/チャオ・フィアット
TEL:0120-404-053
www.fiat-auto.co.jp