【TRUME、時を刻むアナログの鼓動】Vol.1 針表現を追求した、ロマンの結晶。

  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER/p1、p3)
  • 文:ガンダーラ井上

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アナログウォッチに先端技術を包み込み、エプソンが満を持して放つ新ブランド「TRUME」。7人の識者がその魅力に迫る連載シリーズの第一回は、腕時計ジャーナリスト・並木浩一さんが登場。

TRUMEのファーストモデルはGPSセンサー、気圧・高度センサー、方位センサーを搭載。アクセサリーのエクスパンデッドセンサーとの接続を可能にしながら、光発電だけで稼働します。TRUME TR-MB8001エクスパンデッドセンサー付きモデル。¥302,400

TRUME(トゥルーム)は、エプソンが立ち上げた新コンセプトウォッチのブランド。なぜエプソンが腕時計をつくるのかと疑問をもつかもしれませんが、そのルーツを辿れば、1942年に創業した時計部品の製造組み立て事業が起点となっています。そして現在にいたるまで、一貫して国産腕時計の開発製造を続けてきました。そのエプソンが、満を持して開発した自社ブランドとは、どのような腕時計なのでしょうか。腕時計ジャーナリストの並木浩一さんにファーストインプレッションを聞きました。

エプソンが満を持して自社ブランドで、腕時計を開発。

高度計や方位、気圧などあらゆる計器を針で表現するという、アナログにこだわった表現が特徴。

エプソンは1969年、世界初のアナログクオーツ腕時計を開発しました。それ以来、長年磨いてきたクォーツをタイムピースにしながら、GPS受信によるタイムゾーンの識別と時刻の自動修正を実現。さらにこのTRUMEには、半導体を活用したセンシング技術によるプラスアルファの機能も注ぎ込んでいます。

記念碑となるファーストモデルは各種のセンサーで測った結果をデジタルではなく、極めて精密なステッピングモーター駆動によって、文字盤に配されたアナログの針で指し示します。

すべての製造工程を自社でできるエプソンだからこそできた、緻密で複雑な機構。

「エプソンがアナログにこだわったのは非常に面白い視点であると思います。時計の針は正午に真上を向きますよね。それは太陽が真上にいる時間帯であることを示しています。アナログ針が12時間で1周する動きは、時計が生まれる前から私たちが経験し続けてきた天体の動きを移し替えたもの。アナログの針が回って反復するという動きそのものが、体感的にわかりやすい。すなわちアナログ時計というものは〝身体性〞をもって時間やそれ以外の何かを伝えるものなのです」。そう語るのは、腕時計ジャーナリスト、並木浩一さん。

アナログのもつ身体性が、 自己を拡張する。

上位機種に付属するエクスパンデッドセンサーは、温度、紫外線、歩数、消費カロリーを計測するアクセサリー。各種データはBluetooth通信でウォッチ本体に送られ、アナログ針で表示されます。

「アナログというものを単なるノスタルジーとして扱うべきではないと思います。私の体験として、針のある腕時計と触れ合うことで所有する人間と腕時計の界面に意識が向かい、人とモノとの関係が不可分なものになっていくと感じています。それは、腕時計のもつ機能や世界観を自分に取り込み、いままで以上の自分へと変身する〝自己拡張〞へとつながるのです」

TRUMEは本体で高度、気圧、方位を測ることができ、さらに付属のエクスパンデッドセンサーで紫外線、温度、消費カロリー、歩数といった多彩なデータ計測が可能となっています。「TRUME=TRUE+ME」という意味が込められたネーミングが示す通り、ユーザーの置かれた状況(真実の自分)を正確に捉え、自分がいまどこにいて、これからどのように行動すべきかを判断する指針となってくれる腕時計です。

「デジタルでは数値をセグメントの切り替えで行います。それに対しアナログ針は質量と運動量を伴い動いている。人によると思いますが、針が一定の角度で動くのとデジタル表示で6が7になるのとでは大きな違いがありますし、僕としては針が動いて欲しい。それは根源的な〝グルグルの誘惑〞です。体感としてクロックワイズに針が回ることで何が起きているのかを人間は即座に意識できます。それは時刻だけでなく高度や気圧も同じで、分量として捉えやすいのです」

並木浩一 ●1961年神奈川県生まれ。出版社で雑誌編集長、編集委員を経て独立。Penにて腕時計記事の連載に加え、特派員としてSIHH、バーゼルワールドを毎年取材。著書『腕時計のこだわり』など多数。桐蔭横浜大学教授。

TRUMEの多彩な機能の中でも特に並木さんが注目したのは高度計。ボタン操作でALT(高度計測モード)にすれば、2時位置の2本の計測針が千と百の位を、センター針が下2桁の計測値を示します。毎秒計測により、刻々と変化する高度を3本の赤い針の動きから感じ取ることができるのです。

「必要性を議論する前に、まず高層エレベーターで高度計測をして針が動く様子を眺めてみたいですよね。TRUMEはエプソンが設計・製造した腕時計だから技術的に優れているのは頭で考えればわかることです。とはいえ技術を深く追求し、突き抜けた先にはそのような論理的な枠を超え、スペックで語るだけのものではなく象徴的でロマンティックな存在になってくる。それがアナログ腕時計のもっているロマンと融合しているのです」

エプソンが草創期から描き続けてきた夢を高密度に実装し、ユーザーとともに新たな一歩を踏み出す腕時計。それがTRUMEなのです。

問い合わせ先/エプソン販売株式会社 TEL:050-3155-8285

http://www.epson.jp/products/trume/