異なるスタイルで腕元を彩る、ベル&ロスの腕時計3選。

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:柴田 充

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スポーティな機能性、伝統と歴史が息づくスタイル、そして先進的なモダンデザイン。そんな多様な魅力を備え、時計愛好家はもとより、クリエイターやファッショニスタを虜にする腕時計ブランド、ベル&ロス。3つの人気コレクションから、注目モデルの魅力を探った。

左から、ダイバーズウォッチの「BR03-92 ダイバー ブラック マット」、ブレスレットと一体化したアーバンデザインの「BR05 ブラック スティール」、ヴィンテージミリタリーをモチーフにした「BRV2-92 ミリタリー ベージュ」。

ベル&ロスは、プロダクトデザイナーのブルーノ・ベラミッシュと学生時代の友人であるカルロス=アントニオ・ロシロが1994年にフランスで創業した腕時計ブランドだ。“形は機能がつくる”をモットーとして、それは都市、海、ヴィンテージといったシーンやオケージョン、スタイルの異なるコレクションであっても通底している。機能に裏付けられたデザインは、フランスらしい洒脱さを備えるとともに、多様化する現代のライフスタイルにフィットする。

都市に生きるプロフェッショナルツール「BR05 ブラック スティール」

「BR05 ブラック スティール」●自動巻き、ステンレス・スチール、ケースサイズ40×40㎜、パワーリザーブ40時間、100ⅿ防水。¥605,000(税込)

BR05は、ブランドの中心にある航空機の世界観から、まったく新しいコレクションとして誕生した。今回テーマとしたのは、都会における機能美を表現したアーバン・インストゥルメント。視認性、機能性、信頼性、高精度というブランドの理念に従いながらも、アクティブかつ大人の知性を感じさせる洗練されたデザインで、現代を生きる都市生活者のライフスタイルを映し出している。

ケースと一体となったラグを下方に広げ、装着感も優れる。リュウズとガードのデザインは、ブランドロゴを想起させる。

時計の普遍的なフォルムといえば、丸と四角がまず挙がるだろう。ベル&ロスは、2005年に発表したBR01でこのふたつを融合し、オリジナルスタイルとして新たに確立した。BR05はその文脈に沿いながら、ミリタリーテイストのコックピット計器のデザインを都会的なスタイルに昇華した。四角と丸を対比しつつ、なめらかなフォルムに仕上げることで一体感を生み、さらにブレスレットへとラインをつなげる。アイコニックなベゼルのビスは、ネジ穴を放射状に整えることでデザインの洗練を感じさせている。

全面を覆う自動巻きのローターには、スーパーカーのホイールを思わせる美しい星形のオープンワークを施す。

シャープな面と硬質な素材感を生かしたデザインは、マスキュリンな強靱さを漂わせる。正面から見える面は美しいサテンで仕上げ、エッジ部分のみポリッシュ仕上げを施すことで、まるで彫刻のような輝きを放ち、ジュエリーのような華のある存在になっている。その美しさはケースバックにも貫かれ、ベル&ロスとしては珍しいシースルーバックを通し、ムーブメントの精緻な動きを見て楽しむことができる。

より深く、海の世界にチャレンジする「BR03-92 ダイバー ブラック マット」

「BR03-92 ダイバー ブラック マット」●自動巻き、ブラックマットセラミック、ケースサイズ42×42㎜、パワーリザーブ40時間、300m防水。¥478,500(税込)

ほとんどのダイバーズウォッチが丸形である理由は、角形ケースは構造的に気密性や堅牢性を確保するのが難しいからだ。この常識を覆したのが2017年に登場したブランド初の角形ダイバーズだ。BR03-92をベースに、300mの高い防水性能や回転式ベゼルの機能を違和感なく取り入れた。航空機のコクピット計器とダイバーズという異なるジャンルでも、プロフェッショナルのための時計を追求するブランドの精神は通じ合っている。

ベースモデルの特徴だった幅広ベゼルは、ダイビングスケールを刻んだ回転式に換装しても違和感はない。

ベル&ロスのダイバーズの歴史は古く、1997年に遡る。防水1万1100mという最深記録を樹立し、以降2カウンターのダイバーズクロノグラフや回転リングを内蔵したトノー形を発表。BR03-92 ダイバーはその系譜を継ぐ。防水性を確保するため、初のねじ込み式リュウズを採用し、ケースはBR03-92の1.8㎜から2.8㎜に厚みを増し、ガラス厚も1.5㎜から2倍に近い2.85㎜へと強化された。デビューから2年を経て、ダイヤルカラーだけでなく、ブロンズやセラミックスといったケース素材のバリエーションも拡充している。

視認性を維持する蓄光スーパールミノバを採用。誤読を避けるため、経過時間の計測に不要な時針は省かれる。

新作では、軽量かつ強度に優れ、耐摩耗性や耐傷性、低アレルギー性も備えるマットブラックセラミックをケースとベゼルに採用。さらに鉄製ケージを内蔵し、耐磁性も向上している。またISO 6425国際規格で定義されるダイバーズの要件を満たすため、針やインデックスなどは暗所で25cmの距離からも容易に読み取れるスーパールミノバをコーティングし、さらに時針と分針も明確に判別できるように時針はオレンジに塗られている。

ヴィンテージのロマンが薫り立つ「BRV2-92 ミリタリー ベージュ」

「BRV2-92 ミリタリー ベージュ」●自動巻き、ステンレス・スチール、ケース径41㎜、パワーリザーブ40時間、100m防水。¥352,000(税込)

自社のアーカイブ復刻やヴィンテージデザインは、いまやウォッチトレンドのひとつになっている。BRV2-92もそのひとつ。ブランドの創立から続く丸形ケースのコレクションをベースに、よりクラシカルなパイロットウォッチのテイストで仕上げた。ボンベ風防にサンドベージュの文字盤を組み合わせ、砂漠を夜間航行した郵便輸送機の時代を甦らせる。機能性ばかりでなく、こうしたロマンティシズムが薫るのもベル&ロスらしさだ。

かつてプラスティックやプレキシガラスを用いていたボンベ風防は、耐傷性に優れるサファイアクリスタルで再現。

このコレクションは2017年のリニューアルで、ケース径をそれまでの43㎜から2㎜ダウンし、より引き締まった印象になった。ベゼルは、1994年に時計ブランドのSinnと共同開発した初期モデルのデザインを取り入れて薄型に。さらにミリタリーカーキをイメージしたサンドベージュを採用する。これに合わせてインデックスもすべて数字表記になり、ヴィンテージテイストを演出する一方、経過時間を計測する回転ベゼルやリュウズガードを備えるなど、モダニティも損なわない。

NATOストラップでも人気の高いファブリックストラップを専用開発し、開閉の仕様もクラシックにこだわった。

ベル&ロスの時計には、究極の機能を追求する象徴としての「ミリタリー」と並び立ち、時に磨かれた価値を表す「ヴィンテージ」がある。特に共同創業者兼CEOのカルロス=アントニオ・ロシロは熱烈なヴィンテージマニアで知られ、そのスタイル構築を担っている。専用開発されたERIKA社のキャンバスストラップは、伸縮性に優れた心地よい装着感に加え、バックルに引っかけるシンプルな仕様で開閉も容易だ。こうしたタイムレスな風合いに、時計への愛着はさらに増すだろう。

都市、海、ヴィンテージをテーマにした3コレクションは、いずれも時代の感性が息づき日常生活に寄り添う。そして独立系ブランドならではのオリジナリティが唯一無二のスタイルとして腕元を飾るのだ。

問い合わせ先/ベル&ロス ジャパン
TEL:03-5977-7759
www.bellross.com