疾走するデザイン、「Audi Sport」を目撃せよ!

  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)
  • 文:サトータケシ

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超軽量のレーシングバイクから都会的なアウトドアジャケットまで、ライフスタイル全般にわたってプロダクトを展開する新ブランド、「Audi Sport」をご存じですか?

上の写真をご覧になって、不思議に思った方がいるかもしれません。もちろん、「Audi(アウディ)」というブランドも「Sport(スポーツ)」という言葉も、それぞれ単体ではご存じのはず。では、ふたつの言葉がひとつになっているのはなぜでしょうか。しかも「Audi」は自動車のブランドのはずなのに、この写真は自動車には見えません。

実は、「Audi Sport(アウディ スポーツ)」というまったく新しいブランドが誕生したのです。興味深いのは、このブランドが自動車のみならず、ライフスタイル全般を網羅するチャレンジングな姿勢をとっていることです。「Audi Sport」がどのような世界観をもち、どのようなプロダクトを展開するのか。じっくりと確認してみましょう。

「軽さ」を追及した、妥協なきレーシングバイク。

デザインを担当したのはミュンヘンにあるアウディ コンセプト デザイン スタジオ。50台限定でプレートにはシリアルナンバーが刻まれる。サイズは48、51、54、56、58の5種類。価格は税込で¥2,500,000

このロードバイクだけを見たら、「Audi Sport」をロードバイクのブランドと誤解するかもしれません。写真の「Audi Sport Racing Bike」はそれくらい本格的なロードバイクで、自動車メーカーのステッカーを貼っただけの自転車とはまるで次元が違うのです。

誤解がないように付け加えると、「Audi Sport」が送り出すプロダクトは自転車だけではなくアパレルなどライフスタイル全般にわたっています。けれどもこれだけ真剣に、本格的なロードバイクをつくるところに、このブランドの世界観が表れているのは間違いありません。

「Audi Sport Racing Bike」を紹介するにあたっては、まず「Audi」というブランドの本質からひも解く必要があります。「Audi=新しくてオシャレ」というイメージは、日本でもすっかり定着しています。けれども、その背景にある「Sport」の存在は、あまり知られていません。

Audiの企業スローガンは、「技術による先進(Vorsprung durch Technik)」というものです。軽くて強いアルミボディや独創的なフルタイム4駆システム「quattro(クワトロ)」など、Audiは進んだ技術で自動車界を牽引してきました。そしてこの先進的な技術は、ラリーやレースなどのモータースポーツから生まれてきたのです。

たとえばquattroは、1980年代のWRC(世界ラリー選手権)で投入された技術です。ラリー界を席巻したその技術は市販モデルにフィードバックされ、「速くて安全、しかも快適で楽しい」という新しいスタイルの四輪駆動車のパイオニアになったのです。また、ル・マン24時間レースでは、ディーゼルエンジンではじめてガソリンエンジンに勝利するという快挙も成し遂げました。

つまりAudiの「新しくてオシャレ」というイメージは、モータースポーツで新しい技術を生み出してきた確かな背景があってのものです。Audiというブランドは、技術トレンドを引っ張ったことで、トレンディな立ち位置を獲得したのです。

フレームに用いられるのは、ルマン24時間レースに出場したAudi R18 e-tron quattroのコクピットにも使われたCarbon Sport社製の東レT1000カーボン。

「Audi Sport」が展開するプロダクトにも、このコンセプトは共通しています。たとえばこのロードバイクは、フルカーボンフレームを採用し、徹底的に軽さを追求しています。フレームやフォークは、ツール・ド・フランスなどを走る超一流選手がホイールに選ぶことで知られるCarbon Sport社のLightweightブランドとの共同開発。しかも、Audiのレーシングマシンと同様のカーボンを用いるというこだわりようです。

結果として、この「Audi Sport Racing Bike」は総重量5.8kgという超軽量を達成しました。ちなみにUCI(国際自転車競技連合)は競技目的の自転車の最低重量を6.8kgに定めているから、「Audi Sport Racing Bike」で競技に出るなら1kgほど“おもり”を積まないと反則になってしまいます。それくらい、このロードバイクは軽いのです。

ホイールはCarbon Sport社LightweightブランドのMEILESTEIN Cモデルで、前後合計で1180gという軽さを誇る。変速システムにはデジタル変速システムのShimano Dura Ace Di2 9070シリーズを採用。
sella ITALIA製のサドルに用いられるファインナッパーレザーは、見た目に美しいだけでなく、手触りの滑らかさも抜群。

フロントフォークに施されたマットブラック×レッドというカラーリングは、Audiのレーシングカーを連想させます。けれども、似ているのは見かけや雰囲気だけではありません。Audiは自社の軽量化技術を「Audi ultra(アウディ ウルトラ)」と呼んでいますが、ロードバイクに注がれる超軽量へのこだわりは、アウディのクルマづくりと共通しているのです。

サドルにも要注目です。ロードバイク界でも有数のサドルメーカーであるsella ITALIA製で、Audi R8のシートにも用いる高級皮革、ファインナッパーレザーを用いているのです。スポーティとプレミアム、この両極を妥協することなく追求するのも、Audiのクルマづくりに通じています。

控えめでありながら、機能的で優れたデザイン。

Audiのクルマに関して、「インテリアのデザインが素敵」という意見を耳にします。ただし、そのインテリアをじっくり観察すると、実はシンプルでそれほど装飾的ではありません。色使いにしても、明るい色のレザーを使うケースはあるものの、それ以外のパーツはシルバーとブラックが主役で、挿し色にレッドが使われるぐらい。Audiのインテリアが、控え目でありながらすぐれたなデザインだと思えるのには理由があるのです。

まず、素材が選りすぐられています。同じ黒いレザーでも、よいものとそうでないものは艶も手ざわりも違うのです。シルバーのパーツにしても、ただギラギラしているのではなく、輝きに深みを感じさせるものを吟味しています。また、設計が精緻であることも、よいデザインだと思わせる理由です。パーツとパーツが隙間なくきっちりと並べられているから、高級感が伝わってくるのです。

もうひとつ、機能を優先してデザインしていることも重要です。無駄な飾りを排して必要なものを必要な場所に配置したAudiのインテリアは、すっきりしているから目に心地がいい。機能を優先しながら冷たい印象を与えないのは、細部にクラフツマンシップを感じるからでしょう。こうした「素材」「精緻」「機能」「細部」というキーワードは、そのまま「Audi Sport」の製品すべてに当てはめることができます。

都会的でスリムなシルエットのアウトドアジャケット。素材はポリエステル100%。S、M、Lの3サイズ展開。¥48,600
胸ポケットの赤いジッパーが挿し色となり、ライナーは「Audi Sport」のロゴ形状のキルティングに。袖口はマジックテープで絞ることができ、ウエストはドローコード付き。左下裾にゴム製のAudi Sportのロゴバッジが付く。

写真のメンズアウトドアジャケットは、形状も色使いもシンプルです。けれども薄く仕立てられたアウター素材は、シルクのようにきめ細やかで肌ざわりが非常にいい。

袖に腕を通せば、アームが立体裁断されているおかげで腕を動かしやすく、フロント、胸ポケット、腰ポケットはいずれも止水ジップを採用と、細部にまで機能が考えられています。しかもジップの引き手が隠れるようになっているので、ジップで何かを傷つけてしまう心配もありません。

ジッパー付きのポケットが数カ所に備わるなど充実した機能でビジネス用途にも対応する。サイズは57×32×26cm。「スマート アーバン ウィーク エンダー」¥34,560
斜めのラインが際立つデザイン。実際に使用するとジップ付きポケットやフタの使い勝手が秀逸で、デザインがきちんと機能から導かれた形であることがわかる。

機能を考え、素材を吟味し、細部にまで気を配り、引き算の美学でデザインを詰めるというスタンスはAudi collectionのラインナップにある「スマート アーバン ウィーク エンダー」と名付けられた旅行カバンにも見て取れます。

ショルダーバッグとしてもボストンバッグとしても使える、多機能かつ軽量の2ウェイバッグで、素材には軽さにこだわったナイロンを全面に使用、グレーの部分をAudi R8のグリルをモチーフにしたハニカム模様にすることで遊び心を演出しています。

斜めのラインが特徴ですが、実際に使ってみるとこれがデザインのためのデザインではないことがわかります。フタが斜めにカットされ、バックルひとつで留められているので、メッセンジャーバッグのように素早く開けて、内部にアクセスできるのです。

ボディの前後にポケットが付き、汚れたシューズなどを入れるために隔離されたスペースも備わっています。ボディ本体は緩衝材で包まれるので、カメラなどの精密機械を収納しても安心。ビジネスから週末の小旅行まで、さまざまなシーンで活躍するはずです。

「Audi Sport」を象徴する、新型 Audi R8とは?

Audi Sportのロードバイク、ジャケットに加え、Audi collectionのバッグを紹介してきましたが、このブランドの軸となるのは、やはりクルマです。そして「Audi Sport」の最高峰に位置づけられるのが、Audi R8。「Audi Sport」の象徴であるこのモデルはいかなるクルマなのでしょうか? さっそくひも解いてみましょう。

Audiのエンブレム、フォーシルバーリングスは、4つの自動車メーカーの団結を示す意味があります。19世紀後半に設立されたホルヒとヴァンダラー、1910年代に設立したアウディとDKWは、アメリカ資本に対抗して1932年に一致団結をしたのです。

2016年に第2世代へと進化した新型Audi R8は、初代モデルと同じくサーキットで磨いた技術とノウハウが詰め込まれたクルマです。たとえばその基本骨格。アルミとCFRP(炭素繊維複合材料)を組み合わせたASF(アウディ スペース フレーム)は、フレーム単体で200kgという軽量化を達成。1g単位で重量を削り取るレースで磨いた軽量化技術が結実しています。

Audi R8は、この手のスーパーカーとしては異例と言っていいほど快適で運転がしやすいモデルですが、それにも理由があります。過酷なルマン24時間レースで勝つためには、ドライバーの負担を最小限にする必要があるからです。

LEDヘッドライトを搭載する、造形的にも非常に優れたフロントビュー。Audi R8 V10 plusは、ドライバーの視界を格段に広げるレーザーハイビーム付きLEDヘッドライトを装備。

ル・マン24時間レースでは、夜間に暗闇の中を超高速で走る必要があります。そこからヘッドライトの高性能化が求められました。Audi R8が標準装備する左右それぞれ37個ものLEDを備えたLEDヘッドライトや、オプション(R8 V10 plusには標準装備)のレーザーハイビーム付きLEDヘッドライトも、レースに勝つための技術として開発されたものです。60km/h以上で作動するのが、通常の2倍の範囲を照らすレーザースポット。先行車や対向車を認識すると自動的にパターンを変え、光を当てないように制御する技術もル・マン24時間レースの実戦で開発されました。

スーパーカーの性能を秘めながら、都心で粛々と走らせればプレミアムカーと変わらない快適性と使い勝手のよさを提供するAudi R8は、まさに「インテリジェント・スーパーカー 」の呼び名にふさわしいモデルなのです。

ドライバーの背後にエンジンを搭載するミドシップレイアウトを採用。ガラスのフード越しにエンジンを眺めることができます。

スーパーカーの主役といえばやはりエンジンです。Audi R8は自然吸気の排気量5.2ℓV型10気筒エンジンを搭載。ハイパワーを誇るのはもちろん、現代のスポーツカーらしく燃費にも配慮。負荷が低い状態でエンジンの半分を休ませるシリンダーオンデマンドや、アクセルペダルをオフにした時にエンジンを駆動系から切り離すコースティングモードなどで、高い燃費性能を実現しています。

ルマン24時間レースの歴史を振り返れば、ディーゼルエンジン初の優勝もハイブリッドシステム初の優勝も、どちらもAudiによって成し遂げられました。パワーはもちろん、効率にもこだわるという技術は、極限の戦いのなかで培われてきたのです。

そしてこのエンジンを隠すのではなく、あえて外から見えるようにする美的センスも興味深いものです。額装したアート作品のようでもあり、スケルトンの時計のようでもあります。

Audi R8の美しいサイドビュー。ミドシップレイアウトを採用したそのフォルムは、フロントが短く、リアが長く見え、秘めた機能を表現するものとなっています。

Audi R8のシルエットの特徴はルーフ(屋根)の頂点が車体中心より前方に位置すること。ドライバーの背後にエンジンを積むミドシップらしく、フロント部分が短く、リア部分が長く見える造形となっています。このあたりも、デザインのためのデザインでなく、内に秘めた機能を表現するデザインです。

ロー&ワイドな独特のプロポーションや、LEDヘッドライトが形作るフロントマスクの表情など、Audi R8は「未来的」という表現がふさわしいスポーツカーです。コクピットに座ると、その想いはさらに強まります。目の前のインストゥルメントパネルのTFTディスプレイに、スピードメーターやタコメーターだけでなく、ナビゲーションシステムなどの情報を必要に応じて呼び出すアウディ バーチャル コックピットが、ドライバーを未来に誘います。インターネットから様々な情報を入手できるAudi connectや、スマートフォンのように直感で操作できるインターフェイスと合わせて、新しい時代の新しいマシンだということが伝わってくるのです。

そして美しいステッチが施された、滑らかでやわらかいレザーのシートに腰掛けると、Audi R8がスポーティさとラグジュアリー、そして新しさをすべて備えた、希有なモデルだということを心から実感するのです。(サトータケシ)

Audi R8 V10 plus 5.2 FSI Quattro

サイズ(全長×全幅×全高):4426×1940×1240mm
エンジン型式:V型10気筒DOHC
排気量:5204cc
最高出力:449kW(610PS)/8,250rpm
駆動方式:クワトロ(フルタイム4WD)
トランスミッション:7速Sトロニック
価格:¥29,060,000(税込)

問い合わせ先/アウディ コミュニケーションセンター TEL:0120-598106 

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