繊細なデザインと究極のテクノロジーを併せもつ「Audi RS4 Avant(アバント)」。このモデルを読み解くと、アウディ・ブランドの本質が浮かび上がってきます。
通常は「好き・嫌い」や「カッコいい・カッコ悪い」で判断したくなるクルマのデザインも、アウディについてはもっと深く語りたくなります。それは、このブランドのデザインには、確固たる美学が感じられるからでしょう。
アウディの各モデルは、インパクトのあるフロントマスクやボディサイドのラインの数を増やすことでわかりやすく個性を表現するのではなく、タイムレスな美しさを目指してデザインされているのです。それは、Audi RS4 Avantを例にとるとよくわかります。
みんなで楽しめる、新時代のスーパーカー
ボディサイドの面の構成は、一見シンプルに見えます。目立つのは、ヘッドランプから始まりテールランプに至る、ショルダーラインだけです。そしてこの凹状のラインの絶妙ともいえる幅と深さによって、ボディにはしっとりとした陰影が生まれました。複雑な形状のパネルを使わずとも、光と影を表現することは可能なのです。ミース・ファン・デル・ローエの「神は細部に宿る」や、「レス・イズ・モア(少ないほうが豊かだ)」といった名言が思い出されます。
シンプルな美しさを表現するには、技術力の高さも重要な役割を果たします。たとえばボディパネルのつなぎ目を意識させない工作精度の高さや、塗装の品質が造形美を際立たせます。
高度な技術力は、もちろんパフォーマンスにもつながります。RS(レーシング・スポーツ)という名称を冠するこのモデルには、アウディA4のラインアップ中でも最も高度なメカニズムが与えられました。外観はステーションワゴンであるけれど、中身はスーパーカー。「レースは技術の実験室である」という同社のコンセプトに基づいて、レースで得たノウハウと技術を注ぎ込んでいるのです。しかも快適性や実用性は一切損なわれていないから、家族や友人と出かけることができます。みんなで楽しめるスーパーカーという、実に個性的なモデルなのです。
興味深いのはアウディRS4はワゴンボディのアバントにだけ設定されること。アバンギャルドと語源を同じくするアバントは、仏語で「前に」という意味。つまりワゴンは荷物を運ぶためのクルマではなく先進的なビークルだと考えているわけで、ここにもアウディという企業のクリエイティブな世界観が表れています。