A.ランゲ&ゾーネ、技術を芸術に高めた“ブルー”の衝撃。

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:並木浩一

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イタリアの古都フィレンツェでブルーの新作群を発表したA.ランゲ&ゾーネ。ノーブルで美しいその色はブランドの新たな魅力を描き出しました。

A.ランゲ&ゾーネが、魅力的なブルーの新作を発表したのはこの秋のこと。しかもそのひとつは、2年ぶりに登場したクラフトマンシップの精華「ハンドヴェルクスクンスト」です。ひときわ特別な存在の、長く途絶えていた魅惑のブルー文字盤。エングレーブとエナメルを駆使したブルーは、未知の仕上がりを見せます。麗都ドレスデン近郊を本拠とするブランドが、発表の場に芸術と工芸の都フィレンツェを選んだことも納得できるというもの。それは例外的なほど、芸術的な個性なのです。


驚くべき高さで釣り合う、技術的難度と完成度。

複雑にして華麗な、至高のブルー文字盤。「1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダー“ハンドヴェルクスクンスト”」手巻き、18Kホワイトゴールド、ケース径41.9㎜、ムーンフェイズおよびうるう年表示付き永久カレンダー、分積算計付きスプリットセコンド・クロノグラフ、パワーリザーブ42時間、アリゲーター革ストラップ、世界限定20本(すでに完売)。29万ユーロ(参考価格)

モデルの名は「1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダー“ハンドヴェルクスクンスト”」。とびきり複雑なコンプリケーテッド・ウォッチを、しかも極上の手仕事でフィニッシュしたことを端的に物語ります。

文字盤はまず18金ホワイトゴールドのプレートに、専門の職人が手作業で星を浮かし彫ります。その上からまた別の職人が透明度の高いエナメルを施して焼成。さらに永久カレンダーとクロノグラフ、ムーンフェイズ表示のスペースを切り出す工程が続きますが、薄い文字盤上の繊細な加工は芸術作品にも等しく、すべての文字盤が完成にたどり着くわけではありません。また、ハンターケースの裏蓋にもエングレーブとエナメル細工が駆使されました。

裏蓋には、ローマ神話の月の女神ルーナを取り巻くように雲と星をエングレーブ。透明感のあるブルーエナメルを透かして見せています。
ジャーマンシルバー(洋銀)をブリッジ素材に使う伝統的なムーブメント。粒状のグレナージュ仕上げを施し、視覚的にも優れています。

開発責任者のアントニー・デ・ハス氏によれば、この超越的な時計の構想は3年前に始まったといいます。「ムーンフェイズのイメージから、裏側に月の女神ルーナをあしらっています。月というテーマはとても伝統的でクラシック。この『1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダー』もクラシックなフェイスと機構ですので、ブルーをマッチさせたのです」

こうして極上ブルーのコンプリケーションは、20本だけが地上に現れることになりました。ごくわずかな数ですが、それが限界の数であるともいいます。

「A.ランゲ&ゾーネは時計師にフォーカスされることが多いのですが、時計師だけではなく、フィニッシングに関わる人間も多くいます。特に『ハンドヴェルクスクンスト』は、そうしたさまざまな人の技術を集めているからこそできる時計なのです」と、ヴィルヘルム・シュミットCEOは語ります。

技術的到達点と工芸としての完成度が、恐ろしいほどの高さで釣り合った腕時計。それは、ひとつの奇跡が存在するようにも見えるのです。

極上のダークブルーが紡ぐ、もうひとつの物語。

再誕したブルーの記憶と、めずらしいブルーの鮮烈。右:「サクソニア・オートマティック」自動巻き、18Kホワイトゴールド、ケース径38.5㎜、パワーリザーブ72時間、アリゲーター革ストラップ、防水30m。¥2,710,800 左:「ランゲ1」手巻き、18Kホワイトゴールド、ケース径38.5㎜、瞬転式アウトサイズデイト、パワーリザーブ72時間、アリゲーター革ストラップ、防水30m。¥3,834,000

フィレンツェで発表された“ブルー”は、A.ランゲ&ゾーネの魅力を再発見する好機となりました。「ランゲ1」「ランゲ1・デイマティック」「サクソニア」「サクソニア・オートマティック」の4モデルに登場したのは、シルバー無垢の地をブループレートで仕上げ、魅惑の色と艶を現した新ダイヤル。
過去にブルーのダイヤルがA.ランゲ&ゾーネに存在したのは1997年頃、千年紀の節目を目前にしたときだけのこと。その時には「ランゲ1」ほか数モデルのホワイトゴールド版に、同じ白色貴金属のプラチナケースにはないダークブルーの文字盤が姿をみせていました。ファンのあいだで語り草になるほどの色の深さと美しさが今回、次のステージに上がりました。「サクソニア」の2モデルにとっても新鮮な、ブルーとの組み合わせです。
この「ブルー・シリーズ」は、シルバー無垢のダイヤルの地に亜鉛プレート加工を施し、視線を吸い込むような印象的で深いブルーを発色します。艶やかに磨き上げられたロディウム仕上げゴールドの針とインデックスは、紺青と互いに引き立て合う最高のディテールです。手縫いのアリゲーター革ストラップも、ホワイトゴールド製ピンバックルを添わせたダークブルーで揃えました。
ひとはA・ランゲ&ゾーネの腕時計を、その精緻さだけでも最高の評価を認めてきました。そこに重ねられたブルーの色艶は、まだ見えなかった別の魅力を語り始めるのです。

世界中のメディアやインフルエンサーを招き新作が披露されました。後ろはフィレンツェのシンボル、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。
世界中のメディアやインフルエンサーを招き新作が披露されました。後ろはフィレンツェのシンボル、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。
ハンターケースの裏蓋には手作業のエングレービングの上にエナメル細工を施した、高難度の装飾が。その技術はフィレンツェでも実演されました。

問い合わせ先/A.ランゲ&ゾーネ TEL:03-4461-8080 www.alange-soehne.com  #alangesoehne #langetraces #1815handwerkskunst #langebluecrafts