カーデザインの視点を取り入れ、生まれ変わった「STANDARD」

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:高野智宏
  • ムービー:HIROBA

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世界的なデザイナーである和田智氏による監修で、定番モデルのリデザインを行った「JINS DESIGN LAB.」。ジンズの先端的プロジェクトの試みをフリーのバイヤーとして活躍する山田遊さんはどう見たのでしょうか?


これまで、眼鏡づくりの聖地、福井県鯖江市の眼鏡職人と協働した「meets Sabae」シリーズなど、高品質なモデルを生み出してきたジンズのデザインプロジェクト「JINS DESIGN LAB.」。今回、このプロジェクトが手がけたのは、ブランドの中核を成す定番モデル32型、計128種のリデザイン。

監修を務めたのは、日産やアウディ社で研鑽を積み、アウディ時代には日本人として初めて主力車種のデザインを手がけた、カー&プロダクトデザイナーの和田 智氏。ジンズの定番シリーズ「STANDARD」のデザインに関して和田氏は「シンプルなラインが構成する美しいプロポーションや流れるように走るハイライトなど、カーデザインのアプローチも取り入れ〝真に美しい普通〟を目指した」と語っています。世界的デザイナーのたぐいまれなる美意識と知見を投入し、細部までリデザインされた「STANDARD」。いったいどのような進化を遂げているのでしょうか?

デザインの“目利き”が共感した「定番をリデザインする」こと。

山田遊。1976年、東京生まれ。南青山「IDEE SHOP」を経て、2007年に「method」を設立しフリーランスのバイヤーの活動を開始、数多くのショップ設立やリニューアルに携わる。著書に「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」(誠文堂新光社)など。

リデザインされ、装いを新たにしたジンズの定番シリーズ「STANDARD」。このインプレッションを依頼したのは、フリーランスのバイヤーとして、これまで国立新美術館ミュージアムショップ「SOUVENIR FROM TOKYO」のサポートディレクションや、羽田空港第2ターミナルと東急プラザ表参道原宿の「Tokyo’s Tokyo」のグッズセレクト。さらには「APEC JAPAN 2010」や「IMF 世界銀行年次総会」などの記念品選定協力など、バイイングを中心に多方面で活躍する山田遊さん。そんな稀代の目利きに、リニューアルした「STANDARD」は、果たしてどのように映るのでしょうか。

国内外の人気ショップを手がける山田さん。「バイイングはモノ選びのセンスに加え、各条件を踏まえたロジカルな思考も必要。そして、すべての要素を割り切った時に残る〝余白〟や〝遊び〟が、商品やショップの魅力につながるのだと思います」

「無駄な要素が削ぎ落とされ洗練された結果、全体的なクオリティが上がった印象を受けますね」
「STANDARD」シリーズから、いくつかのモデルを手に取って感想を述べる山田さん。とりわけ、シンプルなラインによる、流れるようなフォルムに感心されたようです。
「個人的にプロダクトにおける美しさは、パーツ同士をつなぎ合わせる接合部が、どれだけ高い精度で仕上げられているかが重要な要素だと思う。そうした視点で見ると、この「STANDARD」はフロントからヨロイ、そしてテンプルにいたるすべての接合部がきれいにデザインされている。接合部がスムーズに仕上げられているからこそ、この美しいプロポーションが生まれているのだと思います」

リデザインされた「STANDARD」シリーズに、山田さんは「全体的にディテールにおけるクオリティが確実に上がっている。なにより眼鏡のフォルムがキレイだなと感じます」と、高く評価。

山田さんは、和田氏によるデザインがカーデザインからのアプローチにも深く納得した様子。「それこそクルマは無数のパーツの集合体で、接合部の美しい仕上げが最もシビアに求められるプロダクト。そんな、和田さんならではのデザインアプローチがシームレスなフォルムや、流れるようなハイライトを生むのでしょうね」。さらに山田さんは、今回、和田氏がこだわった「音のクオリティ」にも関心を示します。
「確かに置いた時、安っぽい音がしませんね。商品選びは視覚からの情報が大きな要素を占めますが、聴覚をはじめ、持った時の質感、触覚も人間の感覚に訴えかける重要なポイント。感覚への影響も考慮したデザインに、バイヤーとして共感します」

「持った時の質感もいい。視覚のみならず聴覚や触覚にまでこだわってデザインされたことに感心します」と、山田さんは和田氏のデザイン哲学に感嘆する。

なにより山田さんが共感を覚えたのが、定番のリデザインに取り組むジンズの姿勢のようです。
「定番はずっと変わらないモノと思われがちですが、実は違う。たとえばバーバリーのアイコンであるトレンチコートも、時代と技術の進化に伴って常に細部をリファインし続けている。そうした改善が反映されているからこそ新鮮さを失わず、時代を超えて高い価値をもち続けられる。それは、商品はもちろんブランドに対しても言えることではないでしょうか」
最後に、バイヤー的な視点から「STANDARD」シリーズを評価していただきました。
「 ここまでこだわって、細部まで考えぬいたものを、この価格で販売できるのはやっぱりすごい。価格まで含めて、全体的なディテールが積み上げられた価値のあるものだと思います。これは、欲しくなりますね(笑)」

「普段は眼鏡をかけない僕でも、フロントとテンプルのバランスがよいことがわかる。快適ですよ」と、「STANDARD」のかけ心地を語る山田さん。

カーデザインの知見を取り入れ、美しく進化したディテール。

美しく流れるハイライトは、今回のリデザインの真骨頂。モデルはMCF-16A-197 86。

和田氏による、カーデザインのアプローチを用いたデザインでひとつのポイントに掲げられたのが、クルマのボディのように美しく流れるハイライト。その特徴が最も表現されているのが、このモデルです。
前モデルではテンプルに配されていた装飾を排除し、ヨロイ(智)裏の段差をなくすことで面の歪みがないなめらかで美しいフォルムへと修正されました。これにより、テンプル全体にハイライトが走り、その輝きはスームズに流れるモダン(つるの先)へと美しく収束されています。フロントのカジュアルな表情は一変、サイドからはエレガントにと、見る角度でガラリと印象が変わる、色気のあるルックスへとリファインされました。

絶妙な重さのバランスに、カーデザイナーの実力を感じる。モデルはMCF-16A-187 86。

こちらのモデルは一見、きわめてクラシカルなデミ柄のボストンタイプですが、さらなる洗練さと快適性を追求し、随所に改良が施されています。最大のポイントは重量バランス。よりシンプルで美しいフォルムを実現するため、フロントにおける厚みの変化を最小限にとどめるとともに、前後の重量バランスを整えるため、テンプルのボリュームを若干増量。これにより、前後バランスが改善、かけ心地が向上しました。また、テンプル内側の段差をなめらかに調整することで光の当たり方が均等になり、透過によるデミ柄の美しさを際立たせるなど、クラシックなフォルムに豊かな表情をも獲得しています。

「つなぎ目」の美しさを実感できる。モデルはMMN-16S-092 96。

前モデルではヨロイに施されていた装飾的なデザインを取り除き、上から見たとき丁番やリムロックが見えないようデザインすることで、フロントとヨロイとの接合部がより洗練されたフォルムへと刷新されました。また、テンプルを歪みやねじれのないラインに変更することで、シームレスで流線形の美しいラインが強調されています。
しかも、ボリューム感のあるテンプルとの重量バランスを取るため、フロントリムの厚さを0.8mmから0.9mmへと僅かに調整。その結果、洗練された都会的なデザインと快適なかけ心地を両立する、よりクールでスタイリッシュなモデルへと仕上げられました。

すっきりとしたフレームラインが印象的。モデルはMMF-16A-181 94。

以前はフレームサイドに配置されていたリムロック(レンズ留め)をクリングス(鼻当て)へ内包した特殊機構の採用により、よりすっきりとしたフレームラインへとリファインされています。
また、モダンの合口にメタルパーツを配置することで、ヨロイからテンプル、そしてモダンへと継ぎ目なく流れるようなフォルムを実現しています。さらに、フロントもレンズシェイプに沿った緩やかなラインを描くことで、あたかも1枚のシートから切り出されたような一体感を描き出すことに成功。シリーズ随一のスマートさを誇る定番モデルが、男の顔にクールなフィーリングをもたらします。

シンプルさが際立つ、メタルフレームの一本。モデルはMMF-16A-185 95。

一切の装飾的な要素を取り除いた、眼鏡の原型を思わせるほどに無駄のないデザインが、研ぎ澄まされた美しいプロポーションを際立たせています。
しかしその実、丁番のかみ合わせ部やモダンへとなめらかに広がるテンプル形状、そして、よりクラシックな印象をあたえるブリッジなど、ディテールには緻密に計算された造形を潜ませた、古典的なフォルムにモダンな仕掛けを宿すシンプルなモデルです。
また、フロントとテンプルともに繊細なヘアライン仕上げが施されており、大人の男にこそ似合う一本といえるでしょう。

リデザインによって、洗練さを極めた5つの定番モデル

MMF-16A-185 95

シンプルな美しさを追求し、リファインされたメタル製のボストンモデル。洗練の佇まいは男性の顔に気品をもたらすとともに、クラシカルなフォルムはツイードのジャケットなど秋冬の装いに好相性。これからの季節にマストな一本です。¥8,532(度付きレンズ代込み)

MMN-16S-092 96 

メタルの輝きと流線形のシャープなラインが、タフなビジネスシーンでクールな印象を演出してくれるハーフリムモデル。重要なプレゼンテーションなど、「ここ一番!」という時に勝負スーツとともにコーディネイトしたいモデルです。¥8,532(度付きレンズ代込み)

MCF-16A-187 86

これぞ定番というスタイルの、アセテート製のボストンモデルです。リデザインによる洗練のフォルムと、光の透過によって際立つデミ柄が、秋冬のダークでいてヘビーな装いに軽快でカジュアルな雰囲気をもたらしてくれます。¥8,532(度付きレンズ代込み)

MCF-16A-197 86

オンタイムのビジネススーツはもちろんのこと、美しいハイライトが走るテンプルの存在感は、パーティなどハレの舞台の装いにも映えるエレガントなモデルです。ファッションアイテムとしても大活躍してくれること間違いありません。¥12,960(度付きレンズ代込み)※11月下旬発売予定

MMF-16A-181 94

フロントからテンプル、そしてモダンと1枚のメタルシートから切り出されたかのような、一体感のあるラインがスタイリッシュさを演出。また、マットなブラックカラーも、男の顔にクールなフィーリングをもたらしてくれることでしょう。¥8,532(度付きレンズ代込み)

●問い合わせ先/ジンズ TEL:0120-588-418(10時〜17時 土日祝を除く) www.jins.com