ブックディレクター・幅允孝が語る、本とお茶の意外な共通点とは。

  • 写真:杉田裕一
  • 文:小久保敦郎

Share:

日本のお茶を変えたい――。その志を掲げて製法とボトルデザインを刷新、昨年リニューアルしたキリン「生茶」がプレゼントキャンペーンを実施しています。このプレゼントのセレクターを務めるブックディレクターの幅允孝さんが、本の奥深き世界と、お茶との意外な共通点について語ってくれました。

「時にはお茶を飲みながら、一冊の本をゆっくり味わってほしい」と話す、ブックディレクターの幅允孝さん。本とお茶の魅力、その楽しみ方について解説してくれた。

お茶が楽しくなってきた、をテーマとして掲げているキリン「生茶」が現在、『あけてびっくり生茶箱』というプレゼントキャンペーンを実施中です。お茶に関連するアイテムを特製の茶箱に詰め込んだものですが、なにが入っているかは届いてからのお楽しみというユニークな内容。このキャンペーンの「あの人の生茶箱コース」で、セレクターを務めているのがブックディレクターの幅允孝さん。「本とお茶には共通点がある」という幅さんに、それぞれの魅力と楽しみ方についてうかがいました。

本との出合いの場をつくる、ブックディレクターという仕事。

幅允孝(ブックディレクター、BACH代表)。未知なる本を手にする機会をつくるため、本屋と異業種を結び付ける売り場やライブラリーの制作を行う。最近の仕事として「ワコールスタディホール京都」「ISETAN The Japan Store Kuala Lumpur」の書籍フロアなど。監修した『DESIGN IS DEAD(?)』がダイヤモンド社より刊行。

近年は国内だけにとどまらず、海外にも活躍の場を広げている幅允孝さん。そもそもブックディレクター自体まだ新しい職業ですが、どのような仕事なのかをうかがいました。

「ひと言でいうと、いろいろな場所に本屋さんや図書館をつくるお手伝いをする仕事ですね。書店などに人が来ないのであれば、人がいるところに本を持っていこう、という考え方がベースにあります」

確かにカフェやインテリアショップの一角に本が並ぶ光景を、よく見かけるようになった今日この頃。現代における本との関わり方を、自身の仕事を通して幅さんは次のように解説します。

「いまは検索型の世の中ですから、自分が知っている本しか手に取らない。だからこそ知らない本を手にする機会を、さまざまな場所に点在させることが大切だと考えています。以前は商業施設がほとんどでしたが、最近は病院や動物園など、これまでは本がなかった場所での仕事が増え、とても楽しくやらせていただいています」

「ブックディレクターという仕事は、本を選ぶのと同じくらい、どう差し出すかを考えるのが重要。手に取りたくなるような環境づくりを常に意識しています」と幅さんは語る。

本をめぐる環境については、販売部数の激減や書店の閉鎖などネガティブな話題も聞かれます。幅さんはこうした現状をどのように捉え、これから活動していこうと考えているのでしょうか。

「ブックディレクターとして事務所を立ち上げて12年経ちますが、幸運にも仕事が途切れることはありませんでした。それは本が売れないと言われる一方で、それでも本が傍らにあってほしいというムードが高まっているからだと思います。ネットの情報と比べ、本というメディアの魅力は、よく推敲されていること。デジタル媒体はすぐ書き換えられますが、本は印刷したら直すことができない。その分よく練られているし、ひとつひとつの文言に対して責任の所在がしっかりしています。いまはなんでも検索すれば、簡単に情報を得ることができる。でも重要なのは検索する能力ではなく、しっかりと自身で咀嚼すること。情報を移動させるだけではただのコピーで、誰かのテキストを読み込み、自分の中で血肉化できれば、それはちゃんとした力になる。自分を成長させようと考える時、接すべきテキストとして、本は相性がいいと思っています」

ページをめくりながらその本の成り立ちや面白さを解説し始めると、幅さんの口調は心なしか熱を帯びてくる。本への愛情が感じられる光景だ。
マレーシアのクアラルンプールに、昨年オープンした「ISETAN The Japan Store」。その書籍コーナーに並べるためにセレクトした本の一例。言語が異なる海外で日本文化を伝えるため、ビジュアルが美しくインパクトのあるものを選んだという。

これまでは本と縁遠かった場所で、次々と本との接点を仕掛けていく幅さん。置く本はどのようにして選ぶのか聞いてみると、「自分が好きな本を並べるだけでは、ただのおせっかい。対話をしながら最適解を探していきます」とのこと。たとえば京都市動物園の仕事は、入園料なしでも利用できるようになった図書館のリニューアルの依頼だった。

「滞留時間が少ない人や子どもの利用が増えることを想定して、ビジュアルブックを多くしようと考えました。また鳥類の研究で知られる動物園なので、鳥の専門書はたくさんある。そこで別の観点から、鳥の後ろ姿ばかり撮影したロニ・ホーンの写真集『bird』や、手塚治虫の名作漫画『火の鳥』などをセレクトしました。本に興味のない人の好奇心をどうすれば誘発できるのかが重要ですから」

本を読むたび、お茶を飲むたびに異なる味わいを楽しむ。

「本に答えを求めるのは、解答が出ない状況に耐えられないからでは。考え続ける持久力と耐性を育む意味でも、読書は有意義だと思いますね」と、幅さんは語る。

プレゼントキャンペーン「あの人の生茶箱コース」のセレクターとして、「本の生茶箱」を担当する幅さんは、本とお茶には共通点があると指摘します。それは“どちらも時間をゆっくりと楽しめ”、“読むたび、飲むたびに味わいが異なる”ところだそうです。

「本は役に立つから読むというよりは、読んでいて楽しいからそうするもの。わかろうと思って読むよりは、読むことで疑問が出てくるほうが読書としては理想的ですね。すぐに答えが見つかるよりも、さらに疑問が出てくるのはいいこと。考えるという行為は、スリリングで楽しいものですから。たとえるならば、いつ芽が出るかわからない種蒔きのようなものです。お茶を飲むのも、やはりおいしいものを味わいたいから。ただ水分を吸収するだけなら、ほかの飲み物でもいいわけです。お茶を飲んで喉を潤しながら、ゆったりと寛ぐのも大切な時間。健康のためだけではなく、そのひと時をじっくりと味わう。そのために本を読んだりお茶を飲んだりするのは、一番優雅なことのような気がしますね」

平均すると一日に200冊程度の新刊が出ているという日本。「面白いと思える本に出合える場所を、あちこちに点在させることが重要」と、幅さんは考えている。
“時間”というテーマで本を選ぶとしたら、というリクエストに応えてくれたのがこちら。幅さんが担当する「本の生茶箱」では、どんなセレクトになるか楽しみだ。

そんな幅さんが担当する「本の生茶箱」が、どんな選書になるのかも気になるところです。話の流れから、仮に“時間”をテーマにセレクトするとどうなるのか、その一例を挙げてもらいました。

「たとえば最近、新しいバージョンで刊行された杉本博司の写真集『THEATERS』。世界各地の映画館やドライブインシアターで映画の上映中ずっとシャッターを開き続け、長時間露光することによって撮影された写真。どんな映画が映されていたとしても画面は真っ白になりますが、そこに流れた時間や物語について考えさせる作品集です。それから大人が読んでも示唆を感じとれる絵本『まばたき』(文:穂村弘、絵:酒井駒子)と、時間泥棒の話を綴ったミヒャエル・エンデの童話『モモ』の愛蔵版などでしょうか。アートブックや絵本、童話など、いろいろな種類の本を織り交ぜてセレクトしたいですね。これはあくまでも一例ですが、その人が普段手に取らない本と出合える機会になれば、と考えています」

江戸時代後期から茶葉を輸出する際に使われていた茶箱をモチーフとした、プレゼントキャンペーン用の特製生茶箱。どんなアイテムが入っているかは、届いてからのお楽しみに。

「いまはさまざまな娯楽のコンテンツがあり、時間の使い方にもシビアになっている時代。でも時にはお茶を飲みながら、一冊の本をゆっくり味わってもらえると嬉しいですね。自分だけのかけがえのない時間を過ごすパートナーとして、お茶と本は最適な存在だと思います」と、幅さんは語ります。

今回のキャンペーンでは、当選者全員に同じ本を贈るのではなく、それぞれ別のアレンジを加えてセレクトする予定とのこと。この心を込めてていねいに選ばれたプレゼントは、まさに“あけてびっくり”するような特別なものになりそうです。なんでも検索すればわかってしまうこの時代、箱を開けるまで中身がわからないワクワク感を楽しんでみてはいかがでしょうか。

キリンビバレッジ『あけてびっくり生茶箱』プレゼントキャンペーン
実施期間:実施中~4月20日(木)
実施エリア:全国
対象商品:生茶のペットボトル商品(2ℓ、555mℓ、525mℓ、430mℓ、300mℓ、280mℓ)
※紙パックおよび缶の商品と、カフェインゼロ生茶、食事の生茶、ホット生茶は除く
当選人数:全コースで合計6050名
応募方法:ラベルに印字してあるバーコードを切り取り、応募封筒に添付、必要事項を記入して郵送

●問い合わせ先/キリンビバレッジ お客様相談室 TEL:0120-595-955
www.kirin.co.jp/products/softdrink/namacya/namachabako.html