ピーター・フラヌスは、1971年UCバークレー卒業。ジャーナリズムを学んだあと、ワイン業界に。各ワイナリーでの修業を経て、独立。ワインの味わいにはバランスが大切だといいます。
近年、シャルドネにはまだ及ばないものの、ソーヴィニヨンの人気は着々と上昇中。またソーヴィニヨン・ブランのワインを造るとしても、自分が飲みたいと思うワインだけに絞り込んで造ろうとする生産者も登場しています。あえて生産量を増やさず、限定生産でとことん納得のいくものを造る。ただし、良質な畑を探しだすことには妥協を許さない。ピーター・フラヌスが、まさにそうです。
ソーヴィニヨン・ブランは彼が2番目に手がけた品種。彼も、ドライクリーク・ヴィンヤードのようにロワールタイプのワインを目指しました。そのために彼は、クローンと土地を選び抜きます。クローンはややエキゾティックな香りがするムスケタイプに、土地は、ナパバレーでも風が吹く日が多く、冷涼なカーネロス地区にしました。さらにこの土地がきわめて痩せているため、樹が伸びようとする勢いは抑えられます。
彼自身は、青っぽい香りは好みません。しっかりと完熟させたことで出てくる、メロンやピーチの風味を大切にしているのです。一部、古樽で熟成させたキュヴェをブレンドしており、口中での充実感も十分。ちなみに彼のソーヴィニヨン・ブランはサンフランシスコのレストランでも高い人気となっています。
低温で発酵させることで、香り高く仕上げるようにしています。シーフードや貝類を使ったお料理との相性がよいそう。
樽発酵でクリーミーなワインを造る「フェラーリ・カラーノ」。
すみずみまで手入れが行き届いた美しい庭に囲まれた「ヴィラ・フィオーレ」。この建物の中にテイスティングルームがあります。その向こうには美しいブドウ畑が広がっています。
ソーヴィニヨン・ブランのワインにあまり強い樽の香りがつきすぎないように、古い樽で寝かせることもあるのです。
「フュメ・ブラン」は、フェラーリ・カラーノにとって、大規模な建築工事をして、豪華なワイナリーが完成し、このワイナリー名でワインを世に出す、記念すべき門出のワインでした。1987年が待望の初リリース(ワインは1986年物)。法律家で、さらにネバダ州のホテルとカジノで財を築いたカラーノ夫妻は、ワイナリーがあるドライクリークから始まって、ほかの地区にも次々と畑を獲得、12ヘクタールだった自社畑がいまでは769ヘクタールにも拡大しました。
そしてこのフュメ・ブランもいまでは3カ所の畑のブドウがブレンドされるようになりました。樽の風味はほとんど感じられず、酸が下支えするフルーツがストレートに楽しめるワインです。
一方、「ソーヴィニヨン・ブラン」。こちらはひとつの畑で収穫されたブドウを、すべて樽の中で発酵して造られたワインです。はじめに感じられるのは樽の甘い香り。しかしそれ以外にも、ネクタリン、白桃、ジャスミンティー、そしてほんのすこしエルダーフラワーの香りも。豊かな酸がクリーミーな質感を彩る飲みごたえが印象的です。
フェラーリ・カラーノの「フュメ・ブラン」(左)はライムやレモンの香りが特徴的。わずかに青草の香りも。厚みがあるが酸があるので、切れ味もいい。「ソーヴィニヨン・ブラン」(右)は樽の甘い風味が豊かですが、それに負けない果実味があります。
冒頭でも説明したように、1970年から80年代前半にかけては、「ソーヴィニヨン・ブラン」とはワイン名で名乗らず、「フュメ・ブラン」と名乗ったワインが多かったようです。そして現在、「フュメ・ブラン」と「ソーヴィニヨン・ブラン」の両方のアイテムをリリースしているワイナリーでは、前者はより軽めでフレッシュかつ爽快な仕上がり、後者はときに樽で熟成させたことにより、厚みや粘性を感じさせる仕上がりのワインに使っています。このフェラーリ・カラーノ然り、ドライクリーク・ヴィンヤード然りです。ワインの味わいを予想する際に、ひとつの目安になりそうですね。(後編へ続く)
※アロマ豊かな「ソーヴィニヨン・ブラン」に出合う、カリフォルニアワインの旅。【後編】は、4月11日(火)公開予定です。