いま世界のクリエーターたちを虜にする「オニツカタイガー」。孤高の日本製スニーカーの真価に迫ります。

  • 写真:森山将人(mili)(p1、p2) ジョナサン・ダニエル・プライス(p1、p3) アレキサンドレ・タバステ(p1、p4上) 加藤里紗(p1、p4下) 文:佐野慎悟(p1〜2) コーディネート&取材:長谷川友美(p3) 石坂紀子(p4上) 長谷川安曇(p4下)

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日本生まれのオニツカタイガーが、いまなぜ世界の主要都市で高い人気を誇るのか? 愛用クリエイターたちの証言とともに、〝ニッポンメイド〞の魅力について考えました。

海外に訪れる機会の多い方であれば、欧米やアジア諸国の都市部で、オニツカタイガーのスニーカーを見かける機会が増えていることに、既に気づいていることでしょう。日本はもちろんのこと、ここまで世界の都市に浸透した日本のスニーカーブランドは、過去を振り返ってもそうは見当たりません。しかもこの世界的な人気は、ブランド側が戦略的に仕掛けたものではありません。各地で自然発生的に起きている現象だからこそ、興味深いのです。最初にその兆候が見られたのは、2000年代初頭のことでした。情報感度の高い一部のファッショニスタから始まり、ニューヨーク、パリ、ロンドンと、ファッションシーンをリードする各都市で、その流行はじわじわと拡散されていきました。クラシックな日本のレザースニーカーが、なぜいま世界で人気なのか? まずは時代の変化に敏感なクリエイターの審美眼を通して、オニツカタイガーの実力に迫ります。

俳優・池内博之が語る、経年変化の味を楽しめるスニーカーの魅力とは?

朴訥としたワークテイストの大人なセットアップに、レトロな佇まいのスニーカーが好相性。ネイビージャケット¥62,640(税込、以下同) 、ベスト¥31,320、シャツ¥34,560、パンツ¥38,880/すべて【ミロック】(ミロック TEL:03-6455-1440) その他スタイリスト私物 
スタイリング:三田真一(KiKi inc.) ヘア&メイク:ShinYa(PRIMAL)

世界中のクリエイターの目線を通して、〝ニッポンメイド〞を掲げる孤高のスニーカーの魅力に迫る本企画。トップバッターとして登場してくれたのは、国内外の映画をはじめ、ドラマや舞台などで幅広い活躍を見せる、俳優の池内博之さんです。彼がコーデュロイのセットアップと合わせた一足は、「ニッポンメイド」シリーズの「メキシコ66デラックス」。オニツカタイガーストライプが初めて搭載されたアイコニックなマスターピースを、日本の職人技と上質な素材づかいにより、さらにブラッシュアップさせたモデルです。

シックなワントーンコーデに、ネイビー×ホワイトの挿し色がフレッシュなアクセントを添える。スニーカー「メキシコ 66 デラックス ネイビー×ホワイト」¥22,680/オニツカタイガー(アシックスジャパンお客様相談室)
スタイリング:三田真一(KiKi inc.) ヘア&メイク:ShinYa(PRIMAL)

「特に収集しているわけではないのですが、気がつくとどんどんスニーカーの数が増えていて、すぐに靴箱がいっぱいになってしまいます」と語る池内さんは、洋服に合わせやすいシンプルなスニーカーが好みだと言います。
「基本的に普段は落ち着いた色みの服を着ることが多いので、今日履いているネイビーのものみたいな、ダークトーンのスニーカーを選ぶことがほとんど。これならジャケットスタイルにもデニムパンツにも合うし、夏場はショートパンツに合わせてもいいですよね」

世間ではハイテク系のスニーカーもブームだが、オニツカタイガーの、特に「ニッポンメイド」シリーズの魅力はどこにあるのでしょうか?
「すごいですよ。〝ニッポンメイド〞は。まず他のレザースニーカーと比べて革がとてもやわらかくて、最初から足馴染みがいいんです。まるで履き込んだ革靴みたいに。やっぱり日本人の足型に合っている感覚がありますし、大量生産品にはないクラフトマンシップが感じられて、信頼が置けます」
1949年のブランド誕生以来、日本人のために一途な靴づくりを続けてきたブランドだけに、履き心地とモノづくりへのこだわりは、スニーカーの端々から強くにじみ出ているようです。

「そもそもメイド・イン・ジャパンのスニーカー自体がかなり珍しいから、それを履けていること自体に価値を感じます。さらに〝ニッポンメイド〞のスニーカーは職人が手作業でつくり上げる言わば作品のようなもの。〝世界に一足しかない、僕だけのスニーカー〞という感じがして、大事に履き込んでいきたい気分にさせてくれます」
常に飾ることなく、自然体の魅力あふれる池内さんと、当たり前のことを当たり前のようにこだわり抜いた結果として生まれた「ニッポンメイド」のスニーカーは、まるで旧知の仲のようです。

池内博之(俳優)
1976年、茨城県出身。10代の頃からモデルとして活躍し、97年に俳優デビュー。海外映画への出演も多く、2016年に公開の中国映画『レイルロード・タイガー』では、ジャッキー・チェンとの共演も果たした。

英国人アーティスト・トム・ダウンが、その鉄壁のモノづくりを賞賛。

デニムパンツを中心とした、シンプルな着こなしが多いというトム。彼のワードローブにマッチする「メキシコ66」のスタイルとカラーパレット。ラペルジャケットやシャツと合わせれば、スマートなシーンでも活躍。

「オニツカタイガーの魅力は、都会的で洗練されたデザインと、職人の手仕事を感じさせるていねいなつくりに表れていると思います。カジュアルなのに、さまざまなスタイルやシーンに合わせることのできる絶妙なクラシック加減。しっくりと馴染む履き心地のよさは、イギリス人がいちばん大切にしている〝subtle〞(名状しがたい、緻密)な感覚にぴったりくるんです」

洗練されたフォルムと革の質感が、カジュアルな着こなしに品を与える。シックなカラーはトムのお気に入り。スニーカー「メキシコ66 ブラック×カーボン」¥12,960/オニツカタイガー(アシックスジャパンお客様相談室)

普段から、ベーシックなスマートカジュアルの着こなしが多いというアーティストのトム・ダウン。スポーティなハイテクスニーカーは好みではないが、自転車での移動やアトリエでの作業に適した稼働性や着用感も、スニーカー選びには欠かせないという。
「メキシコ66は、機能性とスマートなデザインを両立した希有な存在だと思います。アーチのサポートもしっかりしていて軽くて、本当に動きやすいんです。加えて、カラーバリエの豊富さも、ロンドンで幅広い層に支持される理由のひとつです。僕は自分の作品にも投影されているように、くすんだ色彩の服が多いので、このブラック×カーボンを愛用しています」
創業当時、製造が最も難しいと言われたバスケットボール用スニーカーの製造販売を行い、成長を続けてきたオニツカタイガー。トムは、「現代のスポーツシューズに、大きな影響を与えている」と言う。

「オニツカタイガーには、本物の革だけがもつしなやかさがあります。また、手作業で洗いをかけることで生まれる温もりを感じるディテールに、伝統工芸を育んできた日本ならではの、熟練の職人技を感じます。日本のモノづくりにこだわったブランドの姿勢が、シンプルなスニーカーに個性を与えているのだと思います。一足一足、違った表情をもっているから愛着が湧くんです」
質実剛健。イギリス人のDNAに組み込まれたクラフトマンシップを、オニツカタイガーが手がけるスニーカーにも感じているのだと言う。

「英国文化にも伝統的なクラフトマンシップが息づいていますし、アーティストとして作品づくりをする身としても、ていねいな仕事ぶりと細部へのこだわりに、非常に刺激を受けます。さらに、これだけクオリティの高いスニーカーを、手頃な値段で提供しているというのもすごいことだと思います。ひとりでも多くの人によい製品を提供したいというつくり手の想いとこだわりを強く感じます。そんな職人気質な高潔さも好きなんです」

トム・ダウン(アーティスト)
1987年、イングランド中部バーミンガム生まれ。ウィンブルドン・カレッジ・オブ・アートでファインアートの修士号を取得、ロンドン南西部にアトリエを構える。絵画作品を中心に、王立芸術院夏期展への出展も果たす。

パリのホテル経営者・アドリアン・グロアグエンが語る、幸運を運ぶシューズとの想い出。

デニムを穿く時は、今回のような明るい色を足元に選ぶアドリアン。スニーカー「メキシコ66バーチ×インディアンインク」¥12,960/オニツカタイガー(アシックスジャパンお客様相談室) その他は私物

「オニツカタイガーとの出合いは映画『キル・ビル』。主演女優のユマ・サーマンの履いている黄色いスニーカーがすごく印象に残っていて、すぐにチェックしました」と語るアドリアン・グロアグエン。彼はパリで人気のホテルを次々とオープンするキーパーソンです。彼が愛用しているのは「メキシコ66」というモデル。とにかく軽くて履き心地がいいので、いろんなホテルを行き来する忙しい毎日にぴったりだと言います。

「このオニツカタイガーのよいところは、カジュアル過ぎないところです。ジャケットやシャツにも合うし、ビジネスのミーティングでも違和感がない。それに微妙なこのグレーの風合いが気に入っています。だから毎日スニーカーで、革靴は年に数回、銀行にわざわざ出向く時くらい(笑)」

25歳でホテルを購入するため、多くの銀行に融資相談に行ったが貸してくれたのは1軒のみ。でも居心地のよいホテルを目指し働き続け、開業から3年間経った時、銀行担当者が2軒目をオープンしないかとホテルまで話をしにきてくれたと言います。5年間経ったいま、ホテルは既に6軒に。

「その時に履いていたのがオニツカタイガーでした。だから幸せを運んでくれるスニーカーなんです」

アドリアン・グロアグエン(ホテルオーナー)
ブティックホテルのオーナー。話題の「ホテル・ビアンブニュ」をパリにオープンしたばかり。経営のかたわら、自ら開発したスキンケアブランド「ボンヌ・ヌーベル」もボンマルシェで取り扱うなど好調。hotelbienvenue.fr

NYのファッションデザイナー・ロブ・ハイツが愛する、職人技が光る飽きのこないデザインとは?

ヴィンテージのような質感が美しく主張する一足をカジュアルの主役に。スニーカー「メキシコミッドランナーデラックス シルバー×グレー」¥25,920/オニツカタイガー(アシックスジャパンお客様相談室)その他は私物

ストリートカルチャーとクラシックなデザインが融合した、NY発のメンズウエアブランド「ノア」。ファッションデザイナーのロブ・ハイツは、ストリートウエア業界でのキャリアが長く、スニーカーカルチャーにも精通しています。欧米の大量生産のスニーカーと異なり、確かな日本製でクラフトマンシップ十分のオニツカタイガーは小さい頃から愛用しています。

「オニツカタイガーは、レザーがやわらかく足の形にしっかりフィットして、履き心地が素晴らしいんです。他社がブランドイメージをメインに打ち出す中、品質や質感はもちろんシワ加工にまでこだわった姿勢が、世界的に高く評価される理由だと思います」

またスケートボードなど、90年代のユースカルチャーを彷彿させる、飽きのこないデザインも魅力です。

「子どもの頃は、アシックスのスニーカーでランニングをしていたので、私たちの世代にとっては、どこか懐かしく、若い世代にとっては、新しいクールなデザイン。現代のファッションにマッチするので、スタイリングもしやすい」と、ロブさん。スニーカーのシルバーカラーが目立つように、ネイビーのジャケットやジーンズで、ウエアはシンプルにまとめて、カジュアルに着こなしたいと、話してくれました。

ロブ・ハイツ(ファッションデザイナー)
コネチカット州出身。中学生の頃から服づくりを始め、ストリートウエア「ファットファーム」に勤める。2015年より、ニューヨークで爆発的な人気を誇るメンズウエア「ノア」のファッションデザイナーに。www.noahny.com

問い合わせ先/アシックスジャパンお客様相談室 TEL:0120-068-806

www.onitsukatigermagazine.com/store