5つの実力派ブランドが手がける、クリーンでモダンな"春アウター"に注目せよ!

  • 写真:三部正博
  • スタイリング:小林 新(UM)
  • ヘア:AMANO
  • 文:高橋一史

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トップメゾンが手がけるコレクションには、アート作品のごとくクリエイティブな服が存在します。着る人の想像力をかき立てるこうした服の中から、今春を先取りし、スタイルとして取り入れやすい5着のアウターをご紹介します。

ご紹介するアウターは、創造性に定評がある5ブランドから厳選した最新コレクションです。パーカからテーラードジャケットまで、幅広いバリエーションでセレクトしました。その一着一着に、強い個性が感じられるものばかりです。このアウターを主役にしたコーディネートとあわせてご覧ください。

メゾン マルジェラ――スーパーレイヤードで魅せる、白のワークジャケット

ジャケット¥145,800、中に着たコート¥334,800、Tシャツ¥27,000、パンツ¥128,520、シューズ¥92,880(すべて税込)/すべてメゾン マルジェラ(メゾン マルジェラ トウキョウTEL:03-5725-2414)

この白のコットンアウターは、いまという時代の申し子たるビッグサイズです。肩をずるっと落として、羽織るように着るのが気分です。カバーオールなのかジージャンなのか、その境界線が曖昧になっています。
「メゾン マルジェラ」の発想には、メゾンのコードであるノンジャンルなミックススタイルがあります。フラップ付きの極端に大きなポケットの上に、さらにパッチポケットが重ねられ、ボタンは“タックボタンと呼ばれるメタル仕様。肩にも補強パーツが付き、ディテールだけを見るとワークウエアそのものです。ただし色はネイビーやカーキでなく、クリーンな白。リラックスした中にも緊張感を孕み、洗練された印象になっています。
ここでのコーディネートはコートの上にジャケットを羽織る、1980年代に一時的に流行した重ね着に通じる前衛スタイル。コートをアウターでなくロングシャツと考えて、自由にビッグサイズならではの装いを愉しみましょう。

背中のヨークの切り返しが袖の縫製ラインにつながり、視覚的に丸みを帯びるように工夫されています。

ジル・サンダー――都市風景に馴染む、アクティブなレインジャケット

ジャケット¥388,800、パンツ¥138,240、シューズ¥100,440(すべて税込)/すべてジル・サンダー(オンワードグローバルファッションTEL:0120-919-256) ソックスはスタイリスト私物

世界のメンズウエア界で現在、各社が最も力を入れているのが、「機能性ウエア」です。アクティブなライフスタイルにフィットする実用的な服を、みながこぞって追求しています。ファッション性を重視するモードブランドも例外ではありません。
新しいクリエイティブ・ディレクターになって勢いを増す「ジル・サンダー」は、伝統的なレインウエアに倣ったアウターをリリースしました。生地は表面がコットンで、裏面がポリウレタン加工されたハリ感のあるもの。ラグラン袖や身頃が、糸による縫製でなく圧着技術で接合されているのも、レインウエアに準じた仕様です。縫い目からの水の浸入を防ぐ効果が期待できます。襟を写真のように付属のチンフラップで覆えば、風の侵入もシャットアウト。
他にも斜めになったフロント、スナップボタンなど、アウトドアウエアに通じるディテールが数多く見られます。ただしそのシルエットは、裾を広げたエレガントなもの。まさしく男ゴコロをくすぐる、機能と美しさが融合した逸品ジャケットです。

着ると背中の裾が持ち上がり円錐形のシルエットを描く、布の分量感に深く配慮されたアウターです。

クロムハーツ――ロゴグラフィックが印象的な、トラックジャケット

パーカ¥206,280(税込)/クロムハーツ(クロムハーツ トーキョーTEL:03-5766-1081) ニット¥33,480(税込)/ジョンスメドレー(リーミルズエージェンシーTEL:03-5784-1238) パンツ¥8,640、シューズ¥15,900(ともに税込)/ともにヴィンテージアイテム、ベルト¥4,860(税込)/ブラケットオリジナル(ブラケットTEL:03-6416-8079) シャツはスタイリスト私物

日増しに気候が穏やかになり、薄着へと向かっていく春には、スポーティな服が恋しくなるものです。やわらかい素材のジップアップパーカこそ、つい着たくなるアウターの代表格ではないでしょうか? ただし大人にふさわしいパーカには、高級感や現代的なエッセンスが欠かせません。そこで見逃せない逸品が、「クロムハーツ」のパーカタイプのトラックジャケットです。
黒のボディに白でロゴを施したコントラストは、世界的なファッション傾向とリンクするグラフィック表現。両袖に大きなロゴを配するデザインも、ストリートスタイルに通じます。こうしたモダンさに加え、ディテールに贅を尽くすのがクロムハーツの流儀。ファスナーのジップトップは、シルバーのダガーやクロスボールが施され、ポケット口や裾にはレザーのパイピングが配されています。カジュアルなようでいて貫禄がある、大人のデイリーな装いをクラスアップさせるパーカなのです。
ここではこの服を、タートルネックセーターとストライプシャツの上に、さらに重ね着しました。フレンチトラッドな上品さにクールな味わいを加え、着こなしに軽快な動きを与えています。

ライダースのように袖口をファスナーで開閉できます。そのジップトップにはシルバーのクロスボールモチーフが。

ディオール――タペストリーを纏う、華やかロングコート

コート¥723,600、タンクトップ¥237,600、パンツ¥104,760、ネックレス¥361,800、ソックス¥28,080、シューズ¥113,400(すべて税込)/すべてディオール(クリスチャン ディオール ショールームTEL:0120-021-947)

ヨーロッパの室内装飾であるタペストリー、もしくは部屋の中で着るガウン。こうした優雅で伝統的なテイストを身にまとうかのようなロングコートが、「ディオール」から登場しました。ディオール オムといえば、スポーツやストリートとテーラリングを融合させた作風が有名ですが、それとは趣向が異なると感じる人も多いでしょう。実は同ブランドはこの春より、アーティスティック・ディレクターがキム・ジョーンズに代わりました。このコートは、新生ディオール オムが提案するエレガンスに即した一着なのです。
オーセンティックなチェスターフィールドコートがベースになっています。前身頃がエプロンのように後ろ身頃とセパレートされ、春らしく脚さばきが軽快に仕立てられています。胸にはパッチポケットがあり、身頃とていねいに柄合わせされているのは、クチュールメゾンならではの凝った服づくりです。
ここでは、靴をスニーカーにして、コートと同柄のソックスを合わせてコーディネート。エレガンスこそスポーティに、それこそがモダンな服の着方です。

前身頃をめくった内側は、ダークな色に切り替えられています。複雑なディテールを有するコートです。

トム ブラウン――セットアップ発想で着る、紺のロングジャケット

コート¥156,600、スウェット¥118,800、シャツ¥71,280、パンツ¥153,360、シューズ¥132,840(すべて税込)/すべてトム ブラウン(トム ブラウン 青山TEL:03-5774-4668) ソックスはスタイリスト私物

冬の終わりから春にかけて、重厚さを控えめにしたドレスアップをしたいとき、上下を揃えるセットアップ発想が決め手になります。ジャケットとパンツを同じ生地で揃えるだけでなく、一方のアイテムを似た色や素材にしたり、スーツに限りなく近い着方を狙うのがセットアップの醍醐味です。
「トム ブラウン」のジャケットは、こうした着こなしに活用したいアイテム。身体に沿うオーセンティックな形ながら、着丈はコートのような長さ。Vゾーンや両サイドポケットの位置は高く設定されており、この服はまるでショートジャケットの裾だけをグッと伸ばしたようなバランスです。裾のスリットもウエスト近くまで深く開けられ、アイコニックなトリコロールリボンが顔を覗かせています。
コーディネートで合わせたパンツは、生地端が切りっぱなしの、デニムに似た表情の一本。靴は英国調のウィングティップです。自分流に個性を発揮して、テーラリングの新しいスタイルを追求してみましょう。

スリットのトリコロールテープは、トム・ブラウンのアイコンモチーフ。ジャケットの裏地はシャツのようなピンクストライプ。