最新アイテムから空間デザインまで、「ボッテガ・ヴェネタ 銀座フラッグシップ」を楽しむための視点。

  • 写真:杉田裕一
  • 文:中島良平

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2018年12月8日、東京銀座にグランドオープンする「ボッテガ・ヴェネタ 銀座フラッグシップ」。同ブランドのブティックとしてアジアで最大となる約800平方メートルの売り場は、日本にインスパイアされたデザインで彩られています。グランドオープンを前にブティックを訪れました。

プロダクトが光に浮かび上がるような効果をもたせた什器が目を引きます。

銀座の晴海通りに面した場所に、「ボッテガ・ヴェネタ 銀座フラッグシップ」がオープンします。これまでに、ミラノ、ロサンゼルス、ニューヨークにオープンしたフラッグシップと同様に、地下1階から地上4階までの売り場がその地の文化を反映したデザインによって形づくられています。主張しすぎることなく高いクオリティで仕上げられたインテリアからは、職人技を大切にし、気品あるラグジュアリーを体現するブランドの特性が見て取れます。

「ライト」のキーワードが意味するのは、「光」と「軽快さ」。

ブランドを象徴する「イントレチャート」の編み込みを、900枚以上のメタルパネルで表現した外観。photo:Nacása & Partners Inc.

「イントレチャート」をモチーフとした印象的な外壁を見ると、シルバーのメタルパネルの代わりにガラスがはめ込まれている部分がランダムにあります。光の使い方を重視し、フロアごとに異なる光が大きな窓から注ぐように、このようなデザインが生まれました。建物の内部では、1960年代に生まれたライト&スペースというアートのムーブメントにインスパイアされ、幾何学形状と光の角度を計算したフロアデザインが実現しています。

4階のメンズウエアのフロア。自然光が注ぎ込む明るい空間の中央に見える什器は、イタリア産の大理石を用いたもの。
窓の周りは、折り紙をモチーフにした立体的な構造になっています。

幾何学的な形状を組み合わせた窓は、外から見ると升目状の均一なサイズですが、フロアごとに、窓の枚数もはめ込まれた壁面のデザインも異なります。窓の内側はすべて幾何学的な形状を組み合わせた立体的な壁面となっており、白い反射板が光を拡散させる役割を果たしています。

照明によってバッグ背面の壁までの奥行きが消え、プロダクトが光の中に浮かび上がるような印象です。
光を全体に拡散させるような照明で、影がほとんど生まれずにプロダクトの魅力が際立ちます。

プロダクトが並ぶ什器の照明も特徴的です。バッグなどがディスプレイされた壁の什器は、壁のコーナー部分が曲面に仕上げられており、奥行きがわからずどこまでも光が続くかのような構造になっています。その目的は、重厚感ではなく軽快さを表現すること。照明使いと真っ白な壁面の仕上げによって、影が生まれずにプロダクトが浮かび上がるような仕掛けが実現しています。

4階から地下1階までリボンのように1枚板の手すりが設置された階段は、次のフロアへ向かう時、気持ちを入れ替えるための静寂の意味を込めて、若干照度が落とされています。

「日本の職人技術」にインスパイアされたデザイン

1階のエントランスを入ると、江戸時代後期に建築で用いられた鉄平石が敷き詰められています。

1階のフロアは、旧来の日本家屋に特徴的な土間をイメージしています。自然光をうまく取り入れた空間では、日本の土間の構造を採用することで屋外の要素をできるだけ屋内に取り入れ、外から内へ自然に誘う現代建築的な試みをスマートに実現しています。

南イタリアの赤いアザレアの花やレモンなどが置かれ、華やいだ印象が演出されています。
石のフロアを通り抜けると、奥は天然のオーク材を用いたフローリング。家にお邪魔してプロダクトを見せてもらうような感覚を味わえます。

日本的な土間を採用したばかりではなく、「折り紙」のイメージから窓や壁面の幾何学的な形状が生まれたように、日本的な要素が店内のさまざまな場所にちりばめられています。日本の伝統的な職人技で、ディテールをていねいに仕上げているのです。

左官職人が漆喰を塗り上げ、石を埋め込んだ壁面。
木製の什器は、釿(ちょうな)という大工道具で波状に削り跡を残す「名栗面」を思わせる仕上げがされています。

とはいえ、店内の主役はあくまでもプロダクトです。こうした職人技の数々や什器の素材、構造といったものが無闇に主張することはありません。職人たちの高い技術と洗練されたアートディレクションによって、ハイクオリティでありながらも抑制の効いた世界観を形づくってきたボッテガ・ヴェネタの気質が、このインテリアからも感じられます。

什器の大理石はイタリア産のもので、日本とイタリアの融合がブティック全体で表現されています。

「プライベートに近い空間」で、じっくりショッピングを。

ジオ・ポンティなどがデザインした名作家具が、フロアごとに置かれています。

晴海通りから店に入ると、外と内をつなぐ役割をもつ土間をイメージした空間があり、鉄平石のフロアの先には、外部とは切り離されたオーク材のフローリング空間が広がります。おとずれたゲストの動きに従って場面と時間が展開していく「シークエンス」を重視したフロアデザインです。奥まで行くと、そこではゆっくりと商品を選び、プライベートな空間でのショッピングを楽しむことができます。

ボッテガ・ヴェネタのホームコレクションから「Tassello」「Rudi」のソファ・シリーズは、フラッグシップ限定の特別なカラーパレットで展開します。photo:Nacása & Partners Inc.
ゆったりした広さのフィッティングルームで、全身のコーディネイトをゆっくりと確認することができます。photo:Nacása & Partners Inc.

日本の伝統的な家屋、とくに茶室において重視されてきたのは、来客をもてなす構造だといわれています。門から建物までには植物が配された露地があり、にじり口という小さな入り口から頭を屈めて入ることで非日常の世界に向かう感覚を演出する、といったように。もちろん「ボッテガ・ヴェネタ 銀座フラッグシップ」は広々とした空間と高い天井が特徴的なので、侘び茶の空間とは異なりますが、来店客を非日常に誘い、もてなす心を建築で表現していることがわかります。もしかしたら、そこがこの建物のもっとも日本的な部分なのかもしれません。ゆっくり寛げるこの空間で、日常を彩る素敵な商品を探してみてはいかがでしょうか。

冬の着こなしに明るさをもたらすダッフルコート¥399,600(税込)
銀座フラッグシップ先行で発売されるアイテムも登場。オーナメント各¥21,600、コースター(6枚セット)¥42,120、チャージャープレート¥72,360、アイマスク¥34,560(すべて税込)
ハンドル部分にイントレチャートのモチーフをあしらったトートバッグ¥248,400(税込)

ボッテガ・ヴェネタ 銀座フラッグシップ

東京都中央区銀座5−6−1
TEL:03-6280-6612
営業時間:11時~20時
無休