都会の初夏に映える、イラストレーター・ソリマチアキラの洒脱で大人なリゾートスタイル

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:小暮昌弘
  • 協力:若梅 

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雑誌や書籍の挿絵、ANAカードのキャラクターなど、どこか懐かしくもスタイリッシュなイラストを描くソリマチアキラさん。雑誌などでタイドアップしたスーツスタイルをよく見かけますが、日差しも強まるこれからの季節、Tシャツや半袖シャツであればどのように着こなすのでしょうか。初夏を彩る「リゾートスタイル」というテーマで話を聞いてみました。

ソリマチアキラ●1966年、東京生まれ。フリーランスのイラストレーターとして雑誌や書籍の表紙などの挿絵、広告制作などで活躍。

洒脱な作品を数多く描き、ウェルドレッサーとしても名高いイラストレーターのソリマチアキラさん。英国調を含め、欧米のヴィンテージファッションをこよなく愛します。今夏、英国の老舗ブランド「サンスペル」とコラボし、リゾート感あふれるTシャツ&シャツを発表したソリマチさんに、自身のリゾートスタイルを紹介してもらいました。イメージしたのはアガサ・クリスティ原作、1982年公開の『地中海殺人事件』です。劇中では、地中海のマヨルカ島を舞台に白麻のスーツやピンチバックジャケットで着飾ったコロニアルスタイルの紳士たちが登場。そんなレトロな時代の空気感を、いまの着こなしでどう表現するのでしょうか。

「サンスペル」とのコラボレーションのために、ソリマチさんが描いたイラストレーションのひとつ。イメージソースは夏のリゾートスタイルです。ボーダー柄のビーチパラソルの下でシャンパンを嗜むお洒落なカップルが描かれています。

シンプルなTシャツを、トラウザーズでドレスアップ

「リゾート気分で都会を歩くのは気恥ずかしい部分もありますが、そういう気分だけでも着こなしに取り入れられれば」とソリマチさん。全体をワントーンでまとめれば、街に馴染むクラシックな着こなしになります。

「リゾートスタイルで頭に浮かぶのはクラシック、あるいはオーセンティックな情景です。アガサ・クリスティ原作の『地中海殺人事件』やジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇』といった古い映画に登場しそうなスタイル。主役じゃなくても映像の中に普通に登場するような人たちのスタイルが特に好きなんです」

実践しているリゾートスタイルのイメージについて、こう語るソリマチさん。Tシャツを着てもテーラードなトラウザーズを合わせドレスアップするのがソリマチ流です。しかも全体の色みをワントーンにおさえたコーディネートが、都会で映える“大人のリゾートスタイル”を感じさせます。Tシャツに合わせた首元の茶系のスカーフとまっ白なキャンバススニーカーに、クラシックなスタイルを愛するソリマチさんのファッションセンスが薫ります。

Tシャツは1994年に誕生したフランスのブランド「アナトミカ」。かなり厚手のコットン生地で、ミリタリーウエアのルーツをもつチノーズとの相性もよさそうです。チノーズは日本の「ブッチャープロダクツ」。太めのシルエットがソリマチさんの好みです。
アッパーからソール、シューレースまで白で統一されたシンプルなキャンバススニーカー。ボーダーTシャツと同じく、英国の「サンスペル」がデザインしたものです。茶系でまとめたコーディネートを邪魔しません。

クルーネックのTシャツはフランスの「アナトミカ」で、ヘビーウェイトのコットン生地が使われています。ボトムスに選んだチノーズは「ブッチャープロダクツ」のものです。カジュアルなチノーズでも裾はダブルで、しかも4.5cmのダブル幅。テーラードのトラウザーズと同じような感覚で着こなします。首元のスカーフ含め、全体を茶系でまとめています。「スカーフは暑い夏に汗を拭くときにも使いますね」とソリマチさん。白のキャンバススニーカーは英国の「サンスペル」。素足で合わせて、足元を軽やかに見せます。

「サンスペル」のボーダーTシャツをトラウザーズにタックインして着こなすソリマチさん。トラウザーズは日本を代表するテーラー「バタク」のものです。「サンスペルのTシャツは品がよく、大人っぽいでしょう。テーラードのトラウザーズとも相性がいいんですよ」とソリマチさん。

ふたつ目のスタイルはリゾート感あふれるボーダーTシャツを取り入れた着こなしです。ボトムに選んだのが、ベルトレスタイプのトラウザーズ。リネンがクラシックなテイストを演出します。足元はソールの薄いエレガントなダンスシューズを。素材にはやわらかなレザーが使われています。パナマハット、ラウンドタイプのサングラスがクラシックなリゾートスタイルを彷彿させますが、ソリマチさんにとって帽子やサングラスは単なるアクセサリーではなく、実用品です。

「日本の夏は日差しも強いので、帽子は必需品ですね。サングラスにも同じことがいえます。イラストレーターは目を使う仕事。日差しが強い夏には、サングラスを手放せませんね」

パナマハットのなかでも最上級と言われるモンテクリスティでつくられた帽子を愛用。「ブランドやメーカーの名前はわからないのですが」とソリマチさん。トラウザーズの素材は夏らしいリネン。リネンもパナマハットも、1930年代にリゾートを楽しんだ紳士たちが愛したものです。
英国の「クラウン」のエレガントなダンスシューズ。英国靴の故郷、ノーザンプトンでつくられており、やわらかな革で履きやすさも抜群。ダンスの国際大会などにも使用されている本格派です。英国好きのソリマチさんらしいセレクト。

白×ネイビーのボーダーTシャツは英国の「サンスペル」。首元のネイビーのトリミングがクラシックなテイストを奏でます。Tシャツをタックインして、ベルトレスのトラウザーズに合わせているところも、ソリマチさんらしいスタイルです。トラウザーズは「バタク」で仕立てたもの。白のレザーシューズは英国の「クラウン」のダンス用です。実用品として使っているというサングラスは英国の「カトラー&グロス」。帽子は最上級のパナマハットをつくる南米のモンテクリスティで手がけられたものです。

1950~60年代の雰囲気を醸す、開襟シャツ

オフホワイトのオープンカラーシャツにカーキのチノーズをコーディネート。足元のグルカサンダルも茶と全身をワントーンで着こなします。「本当のリゾートに行けば、もう少しトーンを上げたい気分になりますが、街中ではこれぐらいの色みがいいのでは」とソリマチさん。

ソリマチさんがリゾートスタイルで合わせるシャツは、開襟タイプです。

「クラシックな開襟シャツが好きなんですよ。1950〜60年代の雰囲気を感じます。この開襟シャツ、去年くらいから店頭に再び並ぶようになりましたが、それまでは全然なかったので、探して購入しました。裾のラインがスクエアなので、裾を出して、さらっと着ることが多いですね」

パンツはTシャツのコーディネートで登場したチノーズを再び合わせています。購入時にはもっと太いシルエットだったものを、好みに合わせて、シルエットを変えたそうです。

愛用のサングラスはアメリカの老舗アイウェアブランド「モスコット」。ウェリントンタイプのセルフレームで「レンズの色は薄めのブラウンを選んでいます」とソリマチさん。
足元は、リゾート気分を満喫できるグルカサンダルです。1886年創業という英国の老舗シューズメーカー「チーニー」のもので、渋さがありながらもモダンな佇まいが、ソリマチさんの着こなしにマッチしています。

シルエットをアレンジした「ブッチャープロダクツ」のチノーズに合わせているのが、日本の「サンリミット」の開襟シャツ。

「このシャツは、『コム デ ギャルソン・シャツ』を担当していたデザイナーが手がけたもの。(仮縫いなどに使われる布の)シーチングのような色合いが気に入っています」

選んだ靴はグルカサンダルです。英国ノーザンプトンの老舗「チーニー」製で、いかにもリゾート気分を盛り上げてくれるデザインです。ここでも全体の配色はワントーンで。チノーズをはいてもクラシックなテイストを感じさせます。

半袖の開襟シャツにサマーウールのトラウザーズをコーディネート。頭にはリゾート的なパナマハット、首元にシャツと同系色のスカーフを合わせ、クラシックかつ洗練された印象に。大人の余裕を感じます。

最後はリネンの開襟シャツを用いたリゾートスタイルです。実はこのシャツにもソリマチさん独自のアレンジを加えています。ボタン糸をすべて取り替え、シャツと同じ色にしたそうです。そのシャツに組み合わせたのが、ドレスタイプのトラウザーズとビットモカシン。サマーウールのトラウザーズのしなやかな味わいやクラシックなディテールが往時のドレススタイルを彷彿させます。

シャツはアメリカのメーカー「インディビジュアライズドシャツ」です。オリジナルのボタン糸は白でしたが、シャツと色を合わせてブルーの糸に変えたそうです。パナマハットを持った左手には、「オメガ」のミリタリータイプの時計。
10年以上愛用している「グッチ」のビットモカシン。色は深いネイビー。まるで新品のように手入れが行き届いています。「夏にはスリッポンやスニーカーを素足で履くことが多いですね」

ボタン糸をアレンジした開襟シャツはアメリカの「インディビジュアライズドシャツ」。クラシックなトラウザーズは、日本の「バタク」製です。足元の靴は「グッチ」のビットモカシン。「ずいぶん前から履いています」と話しますが、手入れは完璧です。帽子はTシャツの着こなしにも登場したパナマハットで、時計は「オメガ」のミリタリータイプ。

披露していただいたどのリゾートスタイルにもソリマチさんの個性が表現され、なおかつモダンさも感じられます。リゾートスタイルといっても、アイテム自体は特別なものではなく、クラシックでオーセンティックなものばかり。これからの夏の季節に、カジュアルな着こなしのヒントにもなるのではないでしょうか。

「サンスペル」とコラボした、ノスタルジックなTシャツ

ソリマチさんが好きな古い映画のワンシーンのようなイラストレーション。紳士淑女がビーチで過ごした懐かしい時代のリゾートライフを連想させます。Tシャツ各¥11,880(税込)/サンスペル(サンスペル表参道店TEL:03-3406-7377)

モダンなリゾートスタイルを紹介してくれたソリマチさんがこの夏、160年の歴史をもつ英国の老舗「サンスペル」とコラボレーションしてTシャツや半袖シャツにイラストをのせました。

「英国で旅行シーズンに出回る昔のポスターや、プライベートビーチの海辺や岩場のシーンなどを思い浮かべながら描きました」

Tシャツに描かれたグラフィックは、レトロでノスタルジック。ソリマチさんの着こなしや人柄に通じるものがあります。巷で見かけるポップなデザインのTシャツとは違った印象で、大人の香り漂う仕上がりです。

夏のリゾートスタイルに最適な、イラストが総柄になったオープンカラーの半袖シャツ。素材はコットン100%。色はブルーと白の2色。同じ素材を使ったトランクスもあります。シャツ各¥25,900(税込)/サンスペル(サンスペル表参道店)
シャツやトランクスに使われているコットン生地には、ソリマチさんのイラストがグラフィカルにプリントされています。ビーチチェアやパラソルの下でリゾートライフを楽しむ様子が描かれています。

今回リリースされたのは、Tシャツが2種類。ボディには「サンスペル」のリヴィエラポロシャツやキャンバススニーカーが描かれています。またシャツやトランクスにはリゾートを楽しむ紳士のイラストが総柄で入っています。

「1950年代のアメリカやヨーロッパのヴィンテージウエアでよく見られるようなプリントシャツは昔から好きで、10代から20代の頃はよく着ていました」と話します。シャツのデザインはソリマチさんが好きな開襟タイプで、夏のリゾート気分を満喫できるでしょう。

気分が軽くなる季節、ファッションに取り入れたいちょっとした遊び心。ソリマチさんのモダンレトロな雰囲気のイラストであれば、大人も取り入れやすいはず。今年はこんなTシャツやシャツを着て、バカンスに出かけるなんていかがでしょう?