「レッドブル・エアレース」の熱き世界へようこそ!

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    新時代のモータスポーツとして、世界中で注目度が高まっている「レッドブル・エアレース」。青空を舞台にエキサイティングな戦いを繰り広げるその世界を紹介します。

    「エアレース」の世界とは?

    いまや世界的に注目される「レッドブル・エアレース」ですが、競技としてスタートしたのは11年前、2003年のことです。レース自体は新しいものと言えますが、航空史をひも解けば、1920年代にはすでに特別な機体を操って、500㎞/hを超えるスピードで競うレースがあったといいます。そうした男たちのDNAを濃厚に継ぎながらも、さらに過激に発展したのが、このレッドブル・エアレースなのです。
    旋回中、大地を頭上に眺める。©Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
    パイロンを通過したのち急上昇を行う、アメリカ人パイロット、カービー・チャンブリスの機体。パイロットは10Gというすさまじい負荷に耐えながら操縦を行っている。©Samo Vidic/Red Bull Content Pool
    このレースでユニークなのは、「エアゲート」とよばれる巨大なパイロンで3次元的にコースが設定され、アクロバティックな飛行技術が要求されることです。はじめてそのレースを見ると、飛行機がこれほど自在に空を飛び回れることに、多くの人があらためて驚くことでしょう。
    また、会場構成がコンパクトになったおかげで、水上公園や港など都市に近い場所での開催が可能となり、テレビの前だけでなく、多くの観客が目前でレースを楽しむことができるようになりました。
    レースのスポンサーであるレッドブルロゴをまとった機体。パイロットは大ベテランのピーター・ベゼネイ。 ©Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
    オフィシャルタイムキーパーである「ブライトリング」のロゴが、スタートゲートのパイロンを飾っている。©Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
    エアレースは多くのサポートによって成立していますが、なかでも特別な役を担うふたつの企業について触れておきましょう。まずは、ご存じ「レッドブル」。「翼を授ける」というメッセージとともに、多くのエクストリームスポーツを支援する彼らは、この競技の誕生にも深く関わり、現在も主催者として競技を発展させていく役割を担っています。エアレースにおける父のような存在、といって間違いではないでしょう。
    そして、その欠かせないパートナーがスイス機械式時計の雄「ブライトリング」です。プロフェッショナルのための計器として航空業界に深く関わるブライトリングは、「ブライトリング・レーシングチーム」を組織してレースに参加、さらに今季からはシリーズのオフィシャルタイムキーパーとして、重要な役割を担っているのです。

    最高峰のモータースポーツであること。

    すべてのチームに供給される、ハーツェル社のカーボンファイバー製プロペラ。©KOJI NAKANO / BREITLING JAPAN
    では次に、このスポーツの重要なエレメントである“機体”について触れておきましょう。レースでは現在、3社の機体が用いられていますが、主流となっているのは、そのうち2社(アメリカのエッジ社とMXS-R)です。キリモミ飛行や急旋回など曲技飛行を行うための「エアロバティックス機」をチューンアップしたもので、機体をさらに軽量化し、エンジンもパワーアップ。この競技において最大限の性能を発揮するよう、モディファイされています。
    プロペラの直後に搭載された、ライカミング社製のエンジン「AEIO-540-EXP」。排気量は8850cc。信頼性確保のため圧縮比は10:1に制限され、ルールによってすべての機体が同エンジンを搭載する。©Jörg Mitter/Red Bull Content Pool
    今季からレッドブル・エアレースでは、エンジンとプロペラは各チーム共通のものを使用することが決められています。エンジンはいわゆるレシプロエンジンで、世界最大の航空用エンジンメーカー「ライカミング」製の水平対向6気筒エンジン。クルマで言えばポルシェと同様のレイアウトですが、排気量は8850ccと911の最新モデルの2倍以上。最大出力は340~350psと大差ありませんが、エアレース機の重さはポルシェの半分以下。レースで最も重視されるレスポンスの鋭さは、スポーツカーの比ではないと言えるでしょう。
    1000分の1秒単位を競うため、ピストンやシリンダーといった重要パーツは専用メーカーによる熾烈なチューニング競争が行われています。しかし、空中でのトラブルが深刻な事態に直結する競技だからこそ、100%の信頼性がマスト。繊細さと豪快さ、過激さと頼もしさ。こうしたまったく相反する要素をバランスさせているのが、レッドブル・エアレースの機体なのです。
    コクピットでフライトに備えるナイジェル・ラム。目の前にあるのが操縦桿。右に倒せば機体も右に傾き、手前に引けば上昇する。操作性は、もちろんクイックだ。©Samo Vidic/Red Bull Content Pool
    空力を優先させた驚くほどコンパクトなコクピットをのぞいてみると、いくつかの計器やスイッチに囲まれて、操縦桿の存在感が際立っています。パイロットたちはレース中、両足で操作するラダーとこの操縦桿で機体を操り、コントロールします。スタートからゴールまではたえずフルスロットル! エキサイティングなレース展開は、この操縦桿を握るパイロットたちの腕にかかっているのです。

    注目すべき、パイロットたち。

    次に、いま注目すべきパイロットを紹介します。まずひとり目は、現在のポイントリーダー、オーストリアのハンネス・アルヒです。現役の空軍パイロットたちが居並ぶこのレースで、彼の経歴はユニークです。15歳でハンググライダーの初飛行をした後はクライミングの世界で活躍。30代にはパラグライダーでのアクロバティック競技に身を移し、パイオニアのひとりとして活躍します。ほかにも、崖や高所から飛び降りるベースジャンプなどエクストリームスポーツで活躍した後、飛行機でのエアロバティック飛行の扉をたたき、ヨーロッパのエアショーなどでキャリアを重ね、2007年からはいよいよ、レッドブル・エアレースに参加します。
    並外れた集中力、アグレッシブなフライトスタイルで、初参戦から頭角を現し、2008年には早くもワールドチャンピオンに輝きます。2009年、2010年にもシリーズ2位となって、今年もポイントリーダーとしてレース全体を牽引する、最重要人物にほかなりません。
    ブライトリング・レーシングチームに所属し、熟練した技能を誇るイギリス人パイロット、ナイジェル・ラム。 ©KOJI NAKANO / BREITLING JAPAN
    次に紹介するのは、ごく初期からレッドブル・エアレースに参加する熟練パイロット、ナイジェル・ラムです。英国軍パイロットとして第二次世界大戦で活躍した父をもつ彼は、生まれ故郷であるローデシア(ジンバブエ)空軍に18歳で籍を置き、1980年まで経験を重ねた後、イギリスへ移りエアロバティックチームに参加。その後30年以上にわたって30カ国以上で1700回以上のテスト飛行を行うという、参加選手中もっとも豊富な経験を有しているのです。その飛行スタイルはシャープで直線的。機体の向きを一気に変えて、パイロンを攻めていく熱いもの。現在はブライトリング・レーシングチームのパイロットとして、期待を一身に担っています。
    世界を舞台に活躍する日本人パイロット、室屋義秀。この競技におけるパイオニアとして、レースの世界を超えて幅広く活動を行っている。 <a href="http://yoshi-muroya.jp" target="_blank">yoshi-muroya.jp</a> ©KOJI NAKANO / BREITLING JAPAN
    そして、もうひとりがわれらが“ヨシ”、室屋義秀です。福島を拠点に活動する彼は、アジア人として初のレッドブルエアレーサーです。少年時代から空の世界に憧れて、20歳のときにアメリカでパイロットライセンスを獲得、96年からエアロバティック飛行の世界に身を投じました。98年からエアショーでのフライトをはじめ、現在まで200以上のショーでフライトを重ねています。レッドブル・エアレースへの参戦は2009年から。空軍や航空会社での経験をもたず、独力で道を拓いてこの場所にたどり着いた希有なパイロットと言えるでしょう。
    最新鋭からひと世代前にあたる機体を駆って、歴戦の強者たちにひけを取らない飛行を見せる室屋は、2014年の第2戦、クロアチアのレースで初の表彰台にたどり着きます。参加パイロットの中では若い世代に属する彼ですが、技術や戦術面での高いクオリティをあらためて見せつけ、「その先」への周囲の期待はますます高まっています。

    そして、男たちの物語は続く。

    ではいよいよ、実際のレース展開を見てみましょう。コース設定は開催地で異なりますが、スタートからゴールまでの所要時間は1分強。スタートのパイロンゲートを370km/h以下という規定速度で通過した後、スラローム状に通過するシケイン、水平に通過するレベルゲートなどで構成されたコースをたどります。
    ゲートは決められた高さで、決められた姿勢(角度)で通過しなくてはなりません。しかもその幅はわずか13m。機体の幅は約8mあるので、通過する際のクリアランスは両翼でたったの2.5mずつ。これを時速300km以上、最大10Gという負荷の中で行うのですから、パイロットたちが簡単そうに飛行しているのも、本来は驚くべきことなのです。ちなみに、もし翼がパイロンをヒットしてしまった場合は、機体にダメージが及ばないようパイロンが大きく裂けるように設計されています。そして、レースの進行に影響が及ばないよう、特別なクルーがボートで駆けつけ、すみやかに傷んだパーツの交換を行うのです。
    シケインを通過するハンネス・アルヒ機。スムースなラインどりでスピードをのせたままコースをクリアしていく。©Samo Vidic/Red Bull Content Pool
    レースは週末に行われ、土曜日に予選、日曜日に決勝が行われます。予選は純粋なタイムアタックで、12名のパイロットがひとりずつフライトし、順位を決めていきます。翌日曜日の決勝では、12人がタイム順に6組にわかれ、ひとりずつタイムアタックを行う「トップ12」を行って、次のラウンドへ進む勝者を決めます。勝者である6名に、敗者の中でタイムの優れた2名を加えた計8名が第2ラウンドである「スーパー8」へと進むと、同様に2名ずつタイムを競い、勝ち残った4名がいよいよ優勝を決めるための最後のラウンド、「ファイナル4」へと進みます。
    重要なのは、アグレッシブに攻めながらも、確実にステージをクリアするフライトを行うこと。ここでも確実さとアグレッシブさ、2つの正反対の要素が問われるのです。

    マレーシア・クアラルンプールから南へ25kmにある新興都市、プトラジャヤの人工湖を会場として行われた今回のレースでは、ポイントリーダーであるハンネス・アルヒがラウンドを順当に勝ち進む一方で、「トップ12」で室屋を破ったナイジェル・ラムが熱のこもったフライトを見せ、「スーパー8」でも3番目の好タイムをたたき出します。その勢いをそのまま「ファイナル4」に繋げたラムは、ポイントリーダーのハンネス・アルヒ押さえて、キャリア初となる優勝を見事に飾りました。
    機体を大きく傾けながら飛行するナイジェル・ラム機。翼にはチームスポンサーであるブライトリングのロゴがあしらわれている。 ©Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
    44戦目にして初勝利し、チームメイトに祝福されるナイジェル・ラム。
    レース後、表彰台の中央でトロフィーを掲げる選手たち。左から、2位のハンネス・アルヒ、この日の主役ナイジェル・ラム、3位のオーストラリア人パイロット、マット・ホール。©Predrag Vuckovic/Red Bull
    2007年から数えて44戦目、これまで2位を6度獲得しても届かなかった初勝利に、チームメイトはもちろんのこと、ライバルであるパイロットやレース関係者からも祝福の声がやむことはありませんでした。この日の結果を「自分でも驚きだ」と語るナイジェル・ラム。「戦術、そして飛び方について沢山学ぶことができた」と語っていました。この勝利によって2014年のシリーズ総合ランキングでも3位につけた”遅れてきたヒーロー”は、総合優勝を争うパイロットの勢力図に大きな影響を与え、2014年のシリーズをさらに盛り上げるキーパーソンとなったことは間違いありません。

    次なるレースが行われるのは、7月26日~27日。開催地はバルト海に面した海辺の都市、ポーランドのグディニァです。その後も8月16日~17日には英国・ロンドン近郊のアスコット。続いて9月6日~7日はアメリカのダラス・フォートワースと続いていきます。
    レースの最新情報は公式ウェブサイトでチェックでき、スポーツ専門チャンネル「J SPORTS」でもプログラムが放映されています。興味を持った方はぜひ、チェックしてみてください。あなたをさらに虜にする熱い世界が、そこに待っているのです!

    レッドブルエアレース www.redbullairrace.com
    ブライトリング・ジャパン www.breitling.co.jp