世界の舞台芸術の最前線を東京で体感! 「フェスティバル/トーキョー18」の注目作をPenが厳選。

  • 文:白坂由里

Share:

毎年、池袋などの東京で繰り広げられる舞台芸術の祭典・フェスティバル/トーキョー18。舞台芸術の最前線に触れられる全16の演目から、必見のプログラムを紹介します。

写真は、伝統音楽とバンドがコラボするフェスティバル『ボンプン』。そのプロデューサーのローモールピッチによるカンボジア・カルチャー『ボンプン・イン・トーキョー』が池袋に上陸します。

2009年のスタートから10周年を迎える『フェスティバル/トーキョー』(通称F/T)。日本のみならずアジアの舞台芸術を牽引してきた、国内最大規模の国際舞台芸術祭です。今年は「脱ぎすて跨ぎ越せ、新しい人へ」をテーマに掲げ、都電荒川線の車内やまちなかで繰り広げる演劇など、多彩なプログラムが上演されます。
なかでもPenが注目するのは「アジアシリーズ」。これまでF/Tでは毎年アジア地域から1カ国を選び、その国の舞台芸術を中心とするプログラムを紹介してきましたが、今年は国境という枠組みを超えた「トランス・フィールド」をテーマに、タイ、カンボジア、バングラデシュから参加する、それぞれの歴史や文化、社会背景を反映する作品を上演します。

伝統と現代が融和する、カンボジアのカルチャーシーンを東京で。

カンボジアのカルチャー・シーンをリードする音楽バンドと、スバエクと呼ばれる影絵芝居(写真)や仮面舞踊などのカンボジアの伝統芸能を堪能できるプログラムです。
同会場の北千住BUoYでは、プノンペン在住のアーティストたちによる展示や上映『フィールド:プノンペン』も開催。現地の空気感を伝えるこちらにも足を運んで。

『ボンプン・イン・トーキョー』

カンボジアの首都プノンペンの郊外で3日間で14万人を動員するなど、若い世代から圧倒的支持を集めるフェスティバル『ボンプン』(村祭りの意味)。そのプロデューサーでアーティストのローモールピッチ・リシーが、平均年齢24 歳の国、カンボジアのビビッドなカルチャーを東京に届けます。

彼女が目指すのは、ポル・ポト政権時代に弾圧され、若者たちがアクセスできなくなってしまった伝統芸能と、現代の音楽・映像などが隣り合う世界。ジャンルや時代を超えて、現地の人気バンドによる音楽ライブ、伝統舞踏、レクチャーなどが繰り広げられます。
 

開催日時:11月10日(土)19時開演、11月11日(日)18時開演
開催場所:北千住BUoY B1F
上演時間:120分(予定)
料金:一般前売¥3,000(税込)
※スタンディング ※展示・トークなどの『フィールド:プノンペン』は、11月10日(14時~21時30分)、11日(14時~20時30分)同会場の2Fで開催(料一般¥500、途中入退場自由)

台本なしリハーサルもなしの、即興パフォーマンスに期待。

イラン出身の劇作家、ナシーム・スレイマンプール。ときに観客を交えながら、言葉の力や、言葉とアイデンティティの結びつきなどが浮き彫りになる過程は必見です。photo: David Monteith-Hodge
共演する豪華キャストにも注目。11月9日には塙宣之(ナイツ)、10日は丸尾丸一郎、11日はドミニク・チェン、森山未來が出演予定です。photo: David Monteith-Hodge

『ナシーム(NASSIM) 』

各ステージ異なるキャストで、リハーサルはなし。俳優は、 作品の内容や自分の役割を知らされないまま本番を迎える。 そんなユニークな作風を生み出したのは、イラン出身でドイ ツ・ベルリン在住の劇作家、ナシーム・スレイマンプールです。

兵役を拒否したために出国を禁止された経験をもつ彼がつくりだした、自身はイランにいながら作品を旅させるスタイルの前作は世界45カ国以上で翻訳上演され、ウーピー・ゴールドバーグらも出演しました。今回は、母語であるペルシャ語で伝えることを主眼とした作品を上演。俳優はたったひとりで、作家本人がスライド越しに出す指示に従い、話し、 行動します。


開催日時:11月9日(金)19時30分開演、10日(土)14時開演、11 日(日)14時/18時開演
開催場所:あうるすぽっと
上映時間:70分(予定)
料金:一般前売¥3,500(税込)
※10日 はポスト・パフォーマンストークあり

ベンガル語の語りと歌で、平和を願う。

語りと歌で織りなす、ベンガルの伝統的な演劇形式と、織物や新聞紙、身体を効果的に用いたエネルギッシュなパフォーマンスも見どころです。
写真中央が、劇団ショプノ・ドルの代表、ジャヒド・リポン。photo: Swapnadal

ショプノ・ドル『30世紀』

演出家・俳優のジャヒド・リポンが代表を務め、バングラデシュの首都ダッカで 創立された劇団ショプノ・ドル。広島平和記念日に合わせて、2002年から17年に わたり毎年上演し続けてきた、原爆の悲劇を描いた代表作『30世紀』をついに日本で初上演します。時と場所を超え、未来に向けて平和を願う作品です。


開催日時:11月3日(土)18時開演、4日(日)14時開演
開催場所:東京芸術劇場シアターウエスト
上演時間:90分
料金:一般¥3,500(税込)
※4日はポスト・パフォーマンストークあり

公園を舞台に繰り広げる、鮮やかなダンス

昨年はキッチュなデザインの「サル」たちが躍動した演目『Toky Toki Saru』でも好評を博したピチェ・クランチェンによる作品です。
造形的な衣装も見ものです。今回は、適応能力の高さや「エイリアン」のイメージとも重ね合わされるタコがモチーフ。

『ミックス(MI(X)G) 』

タイの振付家ピチェ・クランチェンが手がけるF/ Tのオープニングプログラム。 公園全体をパフォーマンス空間として、移住・移民をテーマに、タイやフィリピン などアジアの各地から集まったダンサーが出演します。パフォーマーはカラフルなバルーン状の衣装で登場、思わず観客たちも参加したくなる楽しい演目になるに違いありません。


開催日時:10月13日(土)15時開演、14日(日)15時開演
開催場所:南池袋公園
上演時間:120分
無料
※雨天決行、荒天中止。14日はポスト・パフォーマンストークあり

ここでしか出合えない、全16のプログラム

松田正隆が率いるマレビトの会の『福島を上演する』では、4日間4 回にわたって、8 人の劇作家による戯曲群を上演。
写真家の森栄喜による『ア・ポエット・ウィー・シー・ア・レインボー(A Poet : We See a Rainbow)』では、詩の朗読のパフォーマンスが行われます。

ほかにも、現代演劇の鬼才・松田正隆が率いるマレビトの会の『福島を上演する』、木村伊兵衛写真賞を受賞した注目の写真家・森栄喜による『ア・ポエット・ウィー・シー・ア・レインボー(A Poet : We See a Rainbow)』など、多彩な全16のプログラムが展開します。

10月13日から約1カ月繰り広げられる舞台芸術の祭典、フェスティバル/トーキョー。観客の私たちも参加したくなる楽しい演目から、平和や政治を考える演目まで、いまこの時代について考えるさまざまなプログラムをぜひ体感してください。

人と都市から始まる舞台芸術祭
フェスティバル/トーキョー18『脱ぎすて跨ぎ越せ、新しい人へ』

開催期間:10月13日(土)~11月18日(日)
開催場所:東京芸術劇場、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)、南池袋公園ほか
TEL:03‐5961‐5202
プログラム:『MI(X)G (ミックス)』、ショプノ・ドル『30世紀』、『ボンプン・イン・トーキョー』、『フィールド:プノンペン』、『A Poet: We See a Rainbow』(ア・ポエット:ウィー・シー・ア・レインボー)、『境界を越えて~アジアシリーズのこれまでとこれから~』、L PACK.『定吉と金兵衛』、『ラジオ太平洋』、マレビトの会『福島を上演する』、『テラ』、ドキュメント『Changes(チェンジズ)』、ナシーム・スレイマンプール × ブッシュシアター『NASSIM(ナシーム)』、『ディレクターズ・ラウンジ』、シンポジウム『フェスティバル・アップデート』、『FTステーション』、『ディスカバリー・プログラム』
主催:フェスティバル/トーキョー実行委員会
豊島区/公益財団法人としま未来文化財団/NPO法人アートネットワーク・ジャパン、
アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
アジアシリーズ共催:国際交流基金アジアセンター
※F/T18は東京芸術祭2018の一環として開催される。情報はすべて8月31日時点。詳細はHPにて要確認



www.festival-tokyo.jp