既存の概念を覆して輝く、いま注目すべき4人の女性たち。

  • 写真:森山将人、殿村誠士
  • 文:藤村はるな

Share:

多様性が広まり、個としての活躍が評価され始めて久しい昨今。注目のクリエイターから映画の中のヒーローまで、時代を映す4人の女性たちを紹介します。

多様性が尊ばれる現代。SNS上で個人が自由に発信するなど、肩書や組織を離れた活動が盛んになり、かつてないほど個の在り方が問われる時代でもあります。この変革期に、自らの個性や才能を武器に活躍する4人の女性たちがいます。既存の枠にはまらず、個の魅力を放ち続ける彼女たちを追いました。

人の心を癒したい、その信念で筆を握り続ける。

小松美羽●1984年、長野県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。2009年に阿久悠のアルバム『Bad Friends』のジャケット画を担当し、注目を浴びる。出雲大社に奉納された「新・風土記」や、大英博物館所蔵の「天地の守護獣」など代表作も多数。現在、台湾企業のHTCと共同でVR技術を用いた作品を制作中。

神獣をモチーフにした作品が大英博物館に所蔵されるなど、世界的に注目されるアーティストの小松美羽。精力的な活動の陰には、アートが社会で果たす役割にひたむきに向き合う、一貫した信念が息づいていました。
「昔は、作品を見た人から『怖い』『不気味だ』という意見をもらうことも少なくありませんでした。でも、作品と鑑賞する人には相性があります。“嫌い”という声が増えれば、その分“好き”という人も増えるはずです。いままでも、そしてこれからも、『私の絵が一部の人に癒しを与えている』という思いを変えずに描き続けます」

「便利な一方で、心を病む人も多い現代においてこそ、何千年も昔から人々が積み重ねてきた生きる知恵や宗教観、思想を私の作品に融合させて、発信していきたいです」と語る小松。自身の作品にそれらを活かすべく、ユダヤ思想など、幅広い宗教や思想の研究を日々重ねています。
現在作成中の、山犬をモチーフとした作品。作品を見た人の魂とつながるために、できるだけ神獣たちの目は、大きく印象的に描くように心がけているといいます。
『三位一体』 2019年 アクリル絵の具 27×35cm 『キャプテン・マーベル』にインスパイアされ、小松が描き出したのが、地球のマグマをイメージした赤と宇宙の青を、中立的な緑で結んだ神秘的な作品です。「地球と宇宙の大いなる力が三位一体となり、彼女の真のパワーを進化させる様子を表現しました」と語ってくれました。

独自の撮影方法の根底にある、「アフリカ人はかっこいい」という思い。

ヨシダナギ●1986年、東京都生まれ。幼少期、テレビで見たマサイ族の姿に感銘を受ける。2009年に単身アフリカに飛び、少数民族の写真を撮影し、発表。独学で学んだというその鮮やかな色彩の写真が評価され、注目を浴びる。18年にはベスト作品集『HEROS』を発表。3月13日から京都、東京、福岡、神奈川、大阪で写真展「HEROS2019」を開催予定。

2009年以来、アフリカの少数民族を撮り続けてきたフォトグラファーのヨシダナギ。そのファッショナブルな写真の数々は、「アフリカ=貧困」というイメージを拭い去り、「かっこいいアフリカ」という新鮮な側面を伝えます。その特徴的な写真に当初は批判の声もありましたが、自身のスタンスを信じ、撮り続けたことで世間の評価を得てきました。
「独学だからこそ、他のフォトグラファーがタブーとした撮影方法にも挑戦してきました。周囲から『ここまで画像補正するのはありえない』『これは写真ではない』とネガティブな声を投げかけられたこともありますが、それは私の強みのひとつだと思っています」

14年から撮り始めたエチオピアの少数民族スリ族。自らの体に絵をかき、草木で装飾する彼らの存在を初めて知った時、「こんな妖精のような民族がいるんだ」と衝撃を受けたそうです。
カメラや写真にはあまり興味がない、というヨシダさん。こだわりのなさが既存の写真にはない「かっこいいアフリカ」の独自表現を可能に。使用するのは、ニコンD810。
カバンはアフリカでの盗難対策として、あえて使用感のあるものを持ち歩きます。カバン作家カガリユウスケの、錆び汚れ加工が特徴的な「都市型迷彩シリーズ」で特注依頼。

「こうすればできるかも」が積み重なれば、無理も可能に。

大宮エリー●1975年、大阪府生まれ。広告代理店入社後、CMプランナーを経た後、06年に独立。映画『海でのはなし。』で映画監督デビュー。現在、CMやテレビドラマ、舞台、本、絵画など、幅広いジャンルで活躍し、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクターとしての肩書ももつ。絵とことばで綴る作品集『虹のくじら』(美術出版社)が発売中。

映像から本、絵画、ラジオなど、多岐にわたり活躍する大宮エリーも、話題のクリエイターのひとりです。
「どんな仕事でも依頼されるたびに、それは“自分が果たすべき小さな使命”だと感じます。だから、一見無茶な課題でも、無理だとは決めつけません。以前、30秒のCMが70分のショートフィルムに変更になり、周囲から『無茶だ』と猛反対されました。でも、『やるしかないので』と私の決意を見せた結果、現場の雰囲気がポジティブに変わり、作品は無事に完成しました。何事も無理と思わなければ、解決策は見つかるはずです」

『猫のマルモ』(小学館)や『生きるコント』(文藝春秋)、『大宮エリーの なんでコレ買ったぁ⁈』(日本経済新聞社)など、作家として多数のコラムやエッセイを執筆。
画家としても活動しており、生演奏にのせたライブペインティングなどを行っています。その様子は真剣そのもの。
大宮エリーがスナックのママとして、毎回ゲストを迎え、酒を飲みながらゆるくトークする番組「スナックエリー」。毎週水曜22時にUstreamで配信しています。また、その独特な視点から、ラジオのMCとしても多数参加。

〝本当の自分〟を求め、不屈の心で立ち上がる。

キャプテン・マーベル(ヴァース)●クリー帝国の精鋭ソルジャー集団・スターフォースに所属するエリート・ソルジャー。6年前、瀕死の重傷を負い、すべての記憶を失っていたところを、スターフォースの司令官によって発見され、一流の軍人として育てられることになる。失った記憶の代償に、ヴァースという新しい名と“規格外の強大な力”を得る。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.

そして、マーベル・スタジオ作品初の女性単独ヒーローがキャプテン・マーベルです。ヒーローといえば男性が描かれがちでしたが、そんな常識を覆す存在。すべての記憶を失うというハンデを背負いながらも、不屈の精神を武器に何度も立ち上がる彼女の姿勢に、多くの人が共感と希望を抱くでしょう。

1990年代半ば、宇宙に名を馳せるクリー帝国で生きる、女性エリート・ソルジャーのひとりであるヴァース。家族や友人、過去の生活など、すべての記憶を失った彼女は、新たな名前や戦う目的、仲間を与えられていました。しかし、過去の記憶のフラッシュバックや悪夢に悩まされ、その心はいつも居場所がない孤独感や居心地の悪さにさいなまれていたようです。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.
クリー人の宿敵であるスクラル人に襲撃を受けたヴァースは、彼らの宇宙船で囚われの身になったものの、非常用ポッドで脱出に成功。そのポッドが不時着したのは地球であり、ロサンゼルスのビデオショップでした。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.

ストーリーの鍵となるのは、〝失われた記憶〟。

“記憶”の手がかりに導かれ、たどり着いたのは空軍基地。そこでヴァースが目にしたのは、自身の過去に隠された秘密を解き明かす、重要な鍵となるものでした。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.

3月15日公開の『キャプテン・マーベル』は、主人公であるヴァースの失われた記憶をめぐる、サスペンスフル・アクションです。6年前に記憶を失くし、フラッシュバックや悪夢に悩まされていたクリー人の戦士・ヴァース。そんな彼女に、他人に化ける能力をもつ謎の敵からの襲撃が迫ります。彼らの目的は、彼女の記憶に隠された“ある秘密”を捜し出すこと。自らの記憶を守る壮絶な戦いに身を投じながらも、ヴァースは自身の過去に隠された真実を追い求めることになります。記憶の断片が紡ぐ、主人公の過去。その先に待っている、衝撃の結末とは……?

キャプテン・マーベルは、アイアンマンのように今後のマーベル・ヒーローの中心となるキャラクターです。本作が、4月26日公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』にどのようにつながっていくかも気になるところ。 
その一方で、アベンジャーズ誕生のきっかけについても明かされるため、アベンジャーズを知らない人にとっても、その世界へと誘う最初の映画となるはずです。
さらに、舞台はアベンジャーズ誕生前の1990年代半ば。宇宙からの脅威も、超人的なパワーをもつヒーローの存在も知られていない世界でそれらがどう描かれるのかも、見どころのひとつ。

マーベル初の黒人ヒーローを描いた、昨年公開の話題作『ブラック・パンサー』に続き、今回は初の女性ヒーローと、性別や人種にとらわれない作品を輩出するマーベル・スタジオ。
個の多様性を重んじる現代社会において、自身の能力を活かした強大なパワーと不屈の精神で敵に立ち向かうキャプテン・マーベルの姿は、まさに時代の求める新たなヒーロー像といえます。本作を通じて、目の前に迫る世界の変革を、ぜひその肌身で感じ取ってほしいものです。

常識にとらわれず、己を信じ、社会に影響を与え続ける彼女たち。その姿から、いまの時代が見えるはず。

キャプテン・マーベルを演じたのは、‘15年に『ルーム』でアカデミー賞主演女優賞を獲得した実力派女優のブリー・ラーソンです。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.
スクラル人は、長い耳と緑色の肌をもつトカゲに似た姿ですが、なんにでも姿を変えられる能力を備えます。そのスクラル人を率いるタロスが、ヴァースを追って地球に降り立ち、変身を繰り返して彼女を追い詰めます。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.
ヴァースは記憶を失った代償に、驚異的な破壊力の光子ビームを操る唯一のクリー人。狙撃してくるタロスと壮絶な戦いを繰り広げます。ⓒMarvel Studios 2019 All rights reserved.

『キャプテン・マーベル』
監督/アンナ・ボーデン&ライアン・フレック
出演/ブリー・ラーソン、サミュエル・L.ジャクソン、ベン・メンデルソーンほか
2019年 アメリカ映画 2時間5分 3月15日より全国の映画館にて公開。
ウォルト・ディズニー・ジャパン
http://disney-studio.jp