2020年の東京をアートで変える! 東京都とアーツカウンシル東京がいままでにないチャレンジを募集。かつてない企画公募が目指すものとは。

  • 写真:上野元行
  • 文:猪飼尚司

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2019年秋から20年秋まで、東京で開催する芸術文化事業を広く一般から募る『Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募』がスタートします。このかつてない試みを展開するのが、東京都とアーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)です。20年の東京でアートが担う役割とは、企画公募が目指すものとは――。アーツカウンシル東京の機構長・三好勝則さんに話を伺いました。

昨年11月に開催された、デジタルアートと電子音楽の国際的な祭典『MUTEK』の助成もアーツカウンシル東京は行っている。©Shigeo Gomi, Ryu Kasai

1964年に東京で開催されたオリンピックは、都市の様相を大きく変えました。半世紀以上を経た2020年。再び東京にオリンピック・パラリンピックがやってきます。世界が注目するスポーツの祭典が繰り広げられる東京という都市に、世界中が注目し、多くの人々が集まります。それだけに、都市としての機能や特性が、改めて問われる機会となるでしょう。

また、あまり広く知られていませんが、実はオリンピックは「文化の祭典」でもあり、それはオリンピック憲章にも明記されています。この20年を軸に、“芸術振興”という枠組みから東京に大きな変革をもたらそうとしているのが、東京都とアーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)です。これまでにも『六本木アートナイト』や『恵比寿映像祭』をはじめとした多くの芸術文化事業の主催や助成、支援はもちろん、人材の育成から国際的なネットワークづくりに至るまで、多岐にわたる活動を行ってきました。そんな東京都とアーツカウンシル東京が20年に向けて取り組む、最大規模の企画公募事業となるのが『Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募』です。

『Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募』の募集を伝えるポスター。ジャンルや経験は問わない代わりに、意気込みや独創性、チャレンジングな精神が求められる。

人々の活動や、地域社会に対する意識がアートにつながる。

2012年より、アーツカウンシル東京の機構長を務める三好勝則さん。東京大学法学部を卒業したのち、自治省(現総務省)に入省。行財政や地域政策に関わる制度の立案、執行に携わる。また東京都生活文化局文化振興部長、香川大学大学院教授を歴任してきた。

「都市は勝手に成長したり、進化したりするものではありません。人々がなんらかの目的をもってその場所に集まり、寄り添い、活動を生み出すことで、都市は形成されていくのです。経済的な発展だけが都市を成長させるのではなく、そこに観光や教育、そして芸術文化など複合的な要素が必要。それらがバランスよく存在することで、都市はより豊かな発展を遂げるのだと思います」

こう語るのは、アーツカウンシル東京の機構長を務める三好勝則さん。あらゆる芸術文化振興事業に関わり、多くのクリエイターの活動をサポートしてきたアーツカウンシル東京が現在、目指すべき芸術振興の意義とはどんなものなのでしょうか。

六本木のショップや文化施設を舞台に、オールナイトで現代アート、デザイン、音楽、映像、パフォーマンスなどを楽しむイベント「六本木アートナイト」を開催。©六本木アートナイト実行委員会

「芸術文化は、特定の知識や技術をもつクリエイターだけから生まれるものとは限りません。そこに暮らす人々それぞれの有機的な活動、地域に溶け込む社会的な意識によっても、豊かな芸術文化が生まれると考えています。東京というバラエティに富み、ある種雑多でボーダレスな都市だからこそ、この地における文化事業の可能性は無限大にあるのです」

2020年に向けて大きな変革を待つ東京のポテンシャルをさらに引き出すために、東京都とアーツカウンシル東京が共同して企画しているのが『Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募』です。これは専門家である必要もなく、個人、グループ、団体、企業など誰でも応募することができます。ジャンルも音楽、演劇、美術、映像、マンガ、ゲームや、ファッション、インテリア、建築、食文化まで、ジャンルを特定せず、複合的な活動も対象となります。アイデアが採択されれば、東京都とアーツカウンシル東京の主催事業として制作委託されることになり、20年の事業で自らやってみたいと温めてきた企画が実現できます。

不要になった家電を電子楽器として蘇生。『エレクトロニコス・ファンタスティコス!~本祭I:家電雷鳴篇~』のフィナーレでは、家電が奏でる祭ばやしにのって参加者が盆踊りを楽しんだ。©Mao Yamamoto

これまでにないエネルギーと視点が、人と街を動かす。

「今回の企画公募は、我々にとっても新たなチャレンジ。どんなプロジェクトが集まってくるのか想像できないだけに、ワクワクしています」と語る、アーツカウンシル東京の機構長・三好勝則さん。

「私たちはいま、多様な価値観の中で生きています。街が住む人の存在によって変わるように、芸術文化もそれを考え、つくり出す人によって様変わりするもの。今回の公募によって、芸術文化が人を動かし、そして都市に浸透していく。そんな大きなうねりを起こすことができる企画が集まればと思っています」

モンマルトルの丘に多くの芸術家が集まったことでパリが芸術の都と称されるようになり、アーティストのアトリエが集まるニューヨークのソーホーに高級ブティックやレストランが誕生するなど、芸術文化の流れは時代そのものを動かし、街の様相を変えていきます。

『TOKYO数寄フェス』で上野公園噴水前広場に展示された、現代美術家・大巻伸嗣のインスタレーション作品『プラネテス ―私が生きたようにそれらも生き、私がいなくなったようにそれらもいなくなった―』。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、私たちに大きな感動と新しい感覚を与えてくれることでしょう。『Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募』も同様に、これまでに感じたことのないようなエネルギーと新しい視点を与えられるものになればと思っています。今回の企画公募は我々にとってもチャレンジ。どんなプロジェクトが集まってくるか想像できないだけに、ワクワクしています。東京に住む人の意識や訪れる人の行動そのものが変わるような、パワフルなアイデアを聞かせてもらいたいですね」

経験や実績はなくてもいいとのこと――。とにかく東京の街や人のために、なにかをなし遂げたいという意欲のある人は、ぜひ一度この扉を叩いてみてはいかがでしょうか。

住民ひとり、面積1.03㎢の小さな人工島、京浜島を舞台に開催された『鉄工島フェス』。さまざまなアートワークによる地域の再活性化を図った。©鈴木雄介

Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募

●対象分野:音楽・演劇・舞踊・美術・写真・文学・メディア芸術(映像、マンガ、アニメ、ゲームなど)・伝統芸能・芸能・生活文化(茶道、華道、書道、食文化など)・ファッション・建築・特定のジャンルにとらわれない芸術活動(複合)等
●事業規模:1事業につき数百万円から2億円を超えない範囲(協賛金や自己資金など、他の収入を含めた事業規模についてはこの限りではない)
●実施場所:東京都内
●対象期間:2019年秋頃から2020年9月までの間に実施・終了する企画
●応募について:個人・グループ・団体・法人の方々、基本的にどなたでも応募できる
●対象とならない事業:宗教的または政治的な宣伝・主張を目的とするもの、展示物や制作物等の販売活動を主な目的とするものは除く
●期待する企画内容:
・インパクトある芸術創造(芸術文化都市東京を世界にアピールできるクオリティがあり、21世紀の芸術文化を牽引する挑戦を感じる。また芸術性・話題性があり、国内外への発信力がある)
・あらゆる人々が参加できる(世代・国籍・障害などを超え、誰でも参加できる。また参加の仕方やプログラムに工夫があり、参加者にとっても記憶に残る体験を提供できる)
・アートの可能性を広げる(社会課題に向き合うことで、アートの新たな可能性を広げることにチャレンジしている。またアートの視点を活かした、ユニークな社会に対する問題(課題)提起力・発見がある)
※採択された企画は、東京都とアーツカウンシル東京の主催事業として、応募者側に制作等を委託します。

問い合わせ先/Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募事務局
TEL:03-6256-9921
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