ラスベガスが日本美術に注目?! アーティストの制作過程を公開する、MGMリゾーツ初の試みとは。

  • 写真:鈴木香織
  • コーディネート& 文:稲石千奈美

Share:

いま世界から注目を浴びている日本美術。ラスベガスの滞在型リゾート、MGMリゾーツも大きな関心を寄せているひとつです。MGMリゾーツ会長自らが仕掛けた、日本美術のプロジェクトを紹介します。

MGMベラッジオホテル内には、アーティストの制作過程を見学できるスタジオが新設されました。

一般的にはリゾートやカジノがイメージされるラスベガスですが、実は数々のアートにも出合える場であることをご存じでしょうか。

ラスベガスを拠点とするMGMリゾーツは、カジノだけでなくレストランからショッピング、ショーやコンサートなども体験できる滞在型リゾート・デスティネーションです。どの分野も世界トップクラスのプロが手がけており、もちろんアートも例外ではありません。著名作家による作品を筆頭に、約800点を超える現代アートコレクションを所有しており、マヤ・リン、ジェームズ・タレル、ロバート・ラウシェンバーグらの作品をホテルロビーや廊下、レストランなど公共の場に惜しげもなく展示しています。そして、近年世界的に注目される日本美術にも力を入れています。ベラッジオホテル内にあるギャラリーでは日本を代表する芸術家、草間彌生の展覧会も開催中です。

幻想的な草間彌生の展示『ナーシサス・ガーデン』は、4月28日まで。
左から、アーティストの向山喜章と、MGMリゾーツ・インターナショナル会長のジム・ムーレン。

「芸術を支援することは、企業としての重要な使命だと考えています」と語るのは、MGMリゾーツ会長ジム・ムーレン。現代美術への造詣が深く、大学時代から日本美術に魅せられてきたムーレンは、今回、画期的なプロジェクトを立ち上げました。
昨年6月には、東京を拠点にグローバルに活躍するアーティストの向山喜章をラスベガスへ招聘。新設のスタジオで作品の制作過程を公開するという、MGMとしても初めての機会を設けたのです。
スタジオは一面が大廊下に面したガラス張り。訪問客は、向山が舞うように全身で刷毛を動かしながら色を塗り重ねる姿をウィンドウ越しに見学できます。「創作する姿が作品に反映されると信じている」と言う彼は、MGMのホテルに半年間滞在し、ラスベガスの日常と非日常を五感で体感しながら、そこで感じたことを作品に表現しました。

美しい動作で刷毛を動かし色を塗り重ねる向山。手前は色や光を探求する試作で、奥に見える正方形のカンヴァスが24点からなる主作品『ヴェンダータ100:シックスエレメンツ・アンド・ザ・シーズンズ』の一部。
MGMリゾーツのベラッジオホテル1階にあるファインアーツギャラリーに隣接したスタジオは、多くの滞在客が立ち止まり、ウィンドウ越しにアート制作を見学できる稀有な機会を提供しています。

向山が制作しているのは1m四方の正方形24枚のカンヴァスからなる、真言密教六大の四季折々を表現した絵画。高野山で育ち、仏教文化に親しんだ向山が常にモチーフとしてきたのは魂、祈りといった、人に内在する光。その対極ともいえるラスベガスの眩い光や色を体感し、ふたつの要素をカンヴァスに展開しています。
そんな彼の姿勢を、ムーレンはこう語ります。「彼はスピリチュアルなアーティストで、作品には深い祈りや魂が込められている。全身全霊を込めて作品を生み出す姿をお客様に見ていただくことで、ラスベガスで日本の美や静謐を体験することができるのです」

試作も見学できるのが、このプロジェクトの醍醐味です。

この取り組みは、今後も日本人の若手芸術家を対象に継続すると言います。さらに日本でも芸術を支援し、規模を問わず芸術家や建築家とコラボレーションを重ねていく予定です。
エンターテインメントや経済活動では、芸術が中心となることで、美や夢がより広がっていけるのではないかと言う向山。「日本でもこのようなリゾートが実現し、社会にもっとアートがうまく溶け込んでいけば、大きなグルーヴになるのではないかと期待しています」

ベラッジオ ラスベガス
住所:3600 S Las Vegas Blvd, Las Vegas, NV 89109
TEL:888-987-6667
全3,933室
※マッカラン国際空港からクルマで約10分。
www.bellagio.com


ベラッジオ・ギャラリー・オブ・ファインアーツ
『オブリタレーション・オブ・エタニティ』『ナーシサス・ガーデン』

TEL:888-488-7111
開館時間:10時~20時
無休
料金:一般15ドル
※開催中~4/28 
www.mgmresorts.com/en/entertainment/bellagio/gallery-of-fine-art.html