アーティスト小松美羽が描く、京都の苔と青もみじ。

  • 文:藤村はるな
  • 写真:蛭子真、榊水麗

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夏の京都を訪れたことがありますか。苔や青もみじなど、紅葉の時期とは異なる美しい世界が広がります。そんな京都の緑を、アーティスト小松美羽が描き出します。

常寂光寺が位置するのは、和歌の枕詞になるほど風光明媚な景観をもつ小倉山。歌人・藤原定家の山荘があった場所としても知られています。水源豊かな山肌という地の利と、住職2代にわたるていねいな管理により、約25000坪の境内には京都有数の美しい苔が生息。白みがかった白髪苔をはじめ、杉の樹のようなスギ苔や、ヒノキ苔など、多種多様な苔が集まる上、「苔が広がる竹林」などの珍しい光景も見られます。

もし理想郷があったら、こんな場所かもしれない。そう思わせるのが、嵯峨小倉山にある寺院・常寂光寺です。慶長元年(1596年)に歌人・日禛上人が開山。その名は浄土で最も美しい理想郷とされる「常寂光土」に由来します。戦時中に一度荒廃するも、豊かな自然を活かした寺にしたいと先代住職が一念発起し、苔の整備を開始。毎年初夏には、ビロウドの絨毯のような苔と透明感ある青もみじが調和する苔寺として、国内外から絶賛されています。

緑に包まれた常寂光寺で、6月27日にライブペインティングイベントを行うのが、強烈なタッチと神々しい世界観で知られるアーティストの小松美羽さん。その作品が大英博物館をはじめ多数の博物館に所蔵されるなど、世界的に期待されるアーティスト。そんな彼女もかつては己の感性を磨くため、京都の自然に触れていたといいます。

常寂光寺にて描かれる、緑とそこに息づく生命。

小松美羽(こまつ・みわ) ● 現代アーティスト。1984年、長野県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。出雲大社に奉納された『新・風土記』や、大英博物館所蔵の『天地の守護獣』など代表作も多数。

「20代の頃、『世界で勝負をするには日本を知るべき。そのためには京都を知らなくては』と知人に言われ、1年以上もの間、毎月京都の神社仏閣に通っていました。驚いたのが、京都は街と自然の距離が近く、植物と調和した土地だということ。神社仏閣には緑が息づき、東京や他の都市に比べて民家の庭や路傍に生える植物も生き生きとしている。その様子に心打たれました。いまの季節は、新芽が芽吹いて、京都のあらゆる植物が活発に動き出す。生命力あふれる姿を見られる貴重な瞬間だと思います」

なかでも常寂光寺のような苔と建物が調和した寺院には、特に心惹かれるのだと小松さんは続けます。

「苔生したお地蔵様や狛犬などの石像が好きなんです。まるで、神仏が苔でお洒落をしているようで愛らしくて。また、海外では苔は“邪魔者”として排除されがちですが、日本では美と捉えて、文化として昇華している。苔を見ると、自然をあるがままに愛でる日本の美意識を感じます」

ライブペインティングでは、京都の緑をテーマに描く予定だが、神秘的な境内で彼女はなにを生み出すのでしょうか。

「当日のインスピレーション次第なので、明確には決めていません。ただ、緑がある場所には、虫などさまざまな生き物が息づく。緑とその周辺の生き物の関わりも描けたらと思います」

京都の緑。そして、そこに息づく生命の循環。小松さんが描く自然の連鎖を、常寂光寺で目にしたいものです。

小松さんの他にも、11名のアーティストがそれぞれの視点で緑あふれる夏の京都を描き出します。ちぎり絵やコラージュ、色鉛筆など表現方法もさまざま。作品は「そうだ 京都、行こう。」サイトにて展示中。https://souda-kyoto.jp

コラージュで常寂光寺の自然と仁王門を表現。『常寂光寺 青と仁王門』 高棹祥太
緑美しい境内の様子を色鉛筆で描いた作品。『緑空』釘本 緑

小松美羽ライブペインティング
開催期間:2019年6月27日(木)
開催場所:常寂光寺
京都市右京区嵯峨小倉山小倉町3

SNS投稿企画「♯京都でみつけたみどり色」
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問い合わせ先/そうだ 京都、行こう。
https://souda-kyoto.jp