山形のニットメーカーがつくる、和紙由来の糸を用いた無縫製・抗菌の立体ニ...

山形のニットメーカーがつくる、和紙由来の糸を用いた無縫製・抗菌の立体ニットマスク

山形のニットメーカーがつくる、和紙由来の糸を用いた無縫製・抗菌の立体ニットマスク

佐藤繊維が今回発売した「抗菌 洗える和紙ニットマスク」各¥2,970(税込)。大人用のフリーサイズで、色はホワイト、ネイビー、ピンク、モカベージュなど6色。

去年の6月、宮城県南三陸町の復興のための手編みのニット製品「佐藤繊維×ハート ニットプロジェクト」でご一緒した佐藤繊維社長、佐藤正樹さんからマスクに関する情報をいただきました。


佐藤繊維は山形県寒河江市に本拠を構える繊維会社で、糸の紡績からニット製品まで自社で一貫生産し、地元の寒河江でイタリアレストランを併設したセレクトショップ「GEA(ギア)」までプロデュースする会社です。


佐藤正樹さんは佐藤繊維の4代目社長で、『Pen』の誌面にも登場したこともあります。そんな佐藤社長が新型コロナウイルス感染拡大を受けて、自社でマスク生産に踏み切りました。


海外では多くのファッションメーカーがマスクや防護服の製造をすでにスタートさせています。日本でもシャープなどが不織布のマスクの製造を始めていますが、南三陸町に同行取材したときに医療分野への進出も考えていると語った佐藤社長のこと、情報をいただいたときに、マスクにも彼らしいアイデアがあるのではと思いました。しかし、こんな状況です。山形まで出掛けて直接話を聞くことはできません。それでテレビ電話でインタビューを試みました。まずはマスク製造を思い立った理由を尋ねました。


「3月の頭くらいにマスクが不足しているという話を聞いて、マスクのことを時間の許す限り集中的に調べました。マスクは不織布を使ったものと、ガーゼを使ったものが一般的です。私たちはニットを得意としているので、マスクをニットでつくれないかとまず考えました」


ニットに限らず何をつくるのにも研究を重ねる佐藤社長。今回はかなり急ピッチで製品化を実現したことがわかります。


今回、佐藤繊維がつくったマスクは一般的な不織布を使ったタイプではなく、和紙を素材に採用しています。


「マスクの素材を調べていくうちに、今後を考えると、マスクは洗えるものがやはりいいだろうと思いました。昔はほとんどのマスクは綿のガーゼでつくられていました。しかし湿度があると綿素材は乾きづらく、雑菌が繁殖しやすい。これから暑くなっていくことを考えて、綿ではなく、通気性があり、速乾性がある和紙をポリエステルで包む素材がいいと思ったのです。これまでの和紙の糸は紙を細長く裁断して撚って糸にするのでどうしても硬さが体感的に感じられます。今回の糸はスリット状にしたものをわざとくしゃくしゃさせ、ポリエステルと撚り合わせていますので、とてもやわらかい。和紙自体には“撚り”が入っていないので、吸水性が高く、すぐ乾きます。和紙自体も1㎡で12gという薄いものを使っています。これならば素肌に触れても痛くなく、肌触りがとてもいいんです」


資料を拝見すると、今回のマスクはニットウエアをつくる無縫製編み機を使っていて、縫製をまったくしていません。しかも顔を包み込むように立体的につくられています。


「縫製は一切行っていません。編み立てだけで立体的なマスクをつくっていますし、素材と、工夫された編み方により、ストレッチ性があるので顔にフィットします。家庭洗濯機で“洗い”のテストもしていますが、昨日までで180回を重ねています。たぶん200〜250回洗っても型崩れはしないと思われます。洗濯を150回重ねても新品とほぼ変わりませんし、素材が逆に柔らかくなるくらいです。シワもきれいに取れていい意味で味が出ています。さらに機能性を上げるためにシュガー・スクワラン加工とシルク・プロテイン加工などを施して、保湿性と抗菌性をアップさせています」


今回のマスクにはもうひとつの特徴があります。銅を使ったシートがマスクの中に入っていて、これが抗菌と防臭効果をアップさせると書かれています。


「以前からアクリルに銅化合物をコーティングした糸をつくっていました。もともとタッチパネルに対応できる手袋用に開発された糸なのですが、銅がそもそも持っている性質である抗菌性が強い糸なんです。JISの基準でこの糸を検査しましたが、一定時間で綿素材は菌が約1.7倍に増えるのに対して、銅でつくった糸は約三分の一に減ります(佐藤繊維の試験暫定データによるもの)。このシートを入れておけば、マスクは置いておくだけで、どんどん菌が減ってくれるのです。この糸をシート状に天竺編みで薄く仕上げていますので、マスク装着時もまったく違和感はありません。シートをマスクに入れたまま洗っても大丈夫です。毎日洗えて、しかも抗菌性が持続するという我が社らしいマスクが出来上がりました」


気になる価格は1枚2,970円(税込)と安価ではありませんが、何度も洗って繰り返し使用できることを考えると投資に十分値すると思えますし、マスクを再利用することは地球環境にも優しいことです。


佐藤社長はこの第1弾に続いて、マスク製作用に同社の別の機械まで導入して第2弾「スクエアタイプ」を早くも製品化しています。2つとも自社の「GEA」のオンラインストアで予約販売がスタートしています。


さらに夏向けにリネン素材を採用したマスクも開発もスタート、応援購入サービス「Makuake」内のページでは2020年4月28日からマスクの応援購入者を募るそうです。


気になる方はぜひ両サイトをチェックしてください。

山形のニットメーカーがつくる、和紙由来の糸を用いた無縫製・抗菌の立体ニットマスク

これが「抗菌 洗える和紙ニットマスク」の第1弾モデル。「スッキリしたデザインです」と佐藤社長は話します。耳にかける部分までニット。6色展開で、大人用のフリーサイズ。各¥2,970(税込)www.gea.yamagata.jp

山形のニットメーカーがつくる、和紙由来の糸を用いた無縫製・抗菌の立体ニットマスク

「抗菌 洗える和紙ニットマスク」の第2弾として最近発売されたスクエアモデル。佐藤社長は「1作目とは違う編み機で、顔をすっぽり覆うように仕上げました」。大人用のフリーサイズで、ホワイトとネイビーの2色展開。各¥2,970(税込www.gea.yamagata.jp