「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ ~“生”ってなに?編~

「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ ~“生”ってなに?編~

「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ ~“生”ってなに?編~

宇ち多゛の前には、平日は13時前後から、土曜はなんと午前8時過ぎから、口開けを目指して大行列ができる。特に土曜日はチーフのソウさんが自転車で出勤するまでは、京成立石駅沿いの道に駅出口で前後に別れて客たちが並んでいる。それぞれの列は宇ち多゛の表と裏に入る人たち。つまり、初めから座る席もあらかじめ決まっているということになる、凄い。

そこまでしてみんなが並ぶ目的は、口開けにしかありつけない美味しいご褒美があるからだ。「ツル」は焼き物編、「ホネ」は煮込み編で、後日くわしく紹介するとして、今日は生のプレミアムである「シンキ」について。いや、その前にこの店の呼びものである生とはいったい何だろう?普通の店なら、生と言えばドラフト。だがビールさえ余り出ないココで生ビールなんぞあろうはずがない。

生とは生のモツ、つまりモツ焼きにする前のモツだ。ただ生と言っても、ちゃんとボイルしてある。当局の指導でレバ刺しが御法度になるまでは、レバーだけはほんとの生だった。それでは、生の種類について1つずつおさらいして行こう。

「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ ~“生”ってなに?編~

まずネタの種類は9種類、そして、口開け後すぐに無くなってしまうシンキがある。
基本的に、カシラとツル以外はすべて生で食べることができるわけだ。
シロ生は小腸、一切の臭みなんて、もちろん宇ち多゛ではあるはずがない。時々街で出会う、ゴムのような噛み切れない感じも皆無、さすがとしか言いようがない。
ガツ生は胃袋、ここも店によって当たり外れが大きいが、見事なまでに立派なガツだけが使用されている。ハツ生は心臓、ナンコツ生は軟骨。そして、人気のアブラ生は脂ではなく、カシラの脂が多い部分、むしろコラーゲン質だ。

アブラ生だけに関しては、「アブラ少ないとこ」、「アブラ多いとこ」を指定できる。もし遅めの出勤でカシラが売り切れていたら、「少ないとこ」を焼いてもらうと、ほぼカシラ風味になる。タン生だけは、串に刺さないスライスされた状態で出され、普通のとこか「あかいとこ」を選ぶことができる。これも早めにオーダーしないと無くなってしまう部位の1つだ。

そして、レバー生と言うと、現在はややこしいので、まぁ、すべてがボイルなのだがレバーだけは「ボイル」と呼ぶ。これが実は、まるでレバーペーストのような超絶な旨さで、平日のみのご馳走の1つだ。残るテッポウ(直腸)生とコブクロ(子宮)生のセットが「シンキ」、皆が競い合う口開けだけのお楽しみアイテムの筆頭になる。

「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ ~“生”ってなに?編~

ところで、シンキのとこでテッポウとコブクロの1本ずつ、と書いた。実は宇ち多゛の串はひと皿2本しばり、だが生の場合だけ1本ずつのセットが許される。ボイルした生には、醤油がひとまわしされて出されるが、ほとんどの人は「お酢かけて」を希望。そうすると、宝焼酎と一緒に並んでいるミツカン酢が回しかけられる。このモツに酢醤油状態の味を覚えると、もう宇ち多゛なしでは暮らせない身体になってしまうはずだ。

復習すると、シンキは平日の口開けのみ、ボイルは平日のみ。しかし、コブクロがだいたい先に無くなるので、「テッポウあるよ」と言われたら「アブラ少ないとこ混ぜてお酢」とか「ボイル混ぜてお酢」とか注文する。贅沢にテッポウ2本なら「だけ、お酢で」と言えばいい。最初は難しいかもしれないが、少しずつ覚えて行けばいい。

注文の仕方は、まず1本ずつか、2本セットかを決め、お酢をかけるか、かけないかを決める。だから、単に「シロ生」と注文すれば、2本セットでお酢なしの皿が登場する。ねっとりと甘いボイル(レバー)を塩で食べたいと思ったら、「塩」と言えばちゃんと出してくれる。誰もが強面と思っているこの店、実は限りなく優しくホスピタリティの塊だって気付く頃には、宇ち多゛語をスラスラと話せるようになっているはずだ。

そして、生の味付けにはもう1つ禁断のスペシャルがあるのだが、それは通い詰めてからのお楽しみ。でも、もし行列で僕を見つけることがあったら、そっと聞いてみて欲しい。きっと、すぐに口を割ってしまうはずだから…。