~焼き物編~「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ

~焼き物編~「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ

~焼き物編~「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ

子どもの頃、蟻が入った琥珀を初めて見た時には、興奮のあまり何度もくりかえし夢を見た。宇ち多゛の奥席で初めて琥珀色の液体に出会った時は、ただ黙って杯を重ねた。そして、もう大人だったから、夢を見る前にさっさと京成電鉄に乗り込んだ。

天羽の梅というシロップで淡い琥珀色に染められただけの25度の焼酎が、なぜこんなにも旨いのか?それは、ぐいぐいとモツ本来の旨味が押し寄せてくる、ここでしか味わえない強烈なインパクトの焼き物との相性が抜群にいいからだ。今風に言えば、ペアリングの妙、いやペアリングの1つの頂点かもしれない。

焼き物の種類は、お馴染みの「塩」と「タレ」のほかに、「素焼き」と「味噌」がある。たとえば「シロ塩」と注文すれば、すかさずソウさんか、アニキ、マスターと、その席担当のスタッフの方が「はい、シロ塩で(頂戴)」と注文を連呼する。


この際、店側の連呼がなければ、残念ながら注文は通っていない。自分がタイミングを逃したか、店内がうるさ過ぎたかのどちらかだろう。ちなみに宇ち多゛が私語禁止というのはとんでもない誤解だ。ただ客の注文を速やかに通すために、大声を禁じている。あくまでも、徹底したホスピタリティの結果なのだ。

「塩」には、さらに「うす塩」と「から塩」の指定もできる。限りなく、自分好みの味に焼いてくれるのだ。この辺りのキメの細かいサービスも、宇ち多゛が愛される所以だ。個人的な好みとしては、上質な素材本来の味を思う存分味わえる「うす塩」がお勧め。ただ、レバーやナンコツの「から塩」も人気が高い。

~焼き物編~「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ

続いての「素焼き」は、宇ち多゛の醍醐味の1つ、万人に人気が高い。もし早目に入店できたら、絶対に頼みたいのがカシラ。カシラの注文は1人1回のみ、しかも早い時間に売り切れてしまう。素焼きは、やや軽い「若焼き」も注文が可能だ。
ここで、実際の注文例と共に大推薦メニューを学習しよう。
「カシラ素焼きの若焼きお酢!」、そのひと言で宇ち多゛の最良のひと皿が登場する。

口開けではない、でも比較的早い時間に宇ち多゛に入店できたら、まず「生」を頼む。運が良ければ、まだテッポウがあるかもしれない。そして、生を食べ始めたら、おもむろに上の呪文を唱えて欲しい。ここのカシラを1度食べたら、世のカシラって何だったんだろうと、頭の中が?でいっぱいになる。新鮮なカシラだけが持つネットリとした感触、肉を頬張っている幸せに包まれる1本。もし売り切れていたら、「アブラ少ないとこ」を頼んで、次回の宇ち入りまで、じっと待とう。

~焼き物編~「宇ち多゛語」をマスターして、呑んベえの聖地立石へ

ここで、まず宇ち多゛でしか耳にしない「味噌」について触れよう。ここでの味噌とは、蕨市辺りで愛されている味噌ダレではない。二代目であるマスターの目の前で、ぐつぐつと甘美な匂いを放っている煮込みの鍋。潔くモツのみを味噌味で煮込んだ、宇ち多゛自慢の逸品だ。「味噌」とは素焼きされた串を、この煮込みの鍋の中に潜らせたもの。エッジの効いた煮込みの味とは趣が違う、マイルドな味わいの串になる。
味噌でのお薦めはアブラ、これはシンプルに「アブラ味噌で!」と言えばいい。

注文の順番は、ネタ→味→焼き加減(普通なら省略可)→お酢。最後の例文と一緒に「タレ」をおさらいしよう。宇ち多゛のタレは、よそでは出逢うことができない、歴史を感じさせる濃厚さで極めて美味だ。
もし平日口開けに宇ち入りできたら、ぜひ「ツルタレよく焼き」を注文して、レア部位の味の妙とタレが渾然一体となった味覚に身を預けよう。

そして、宇ち多゛でのハイライトの1つが「シロタレよく焼き」だ。こんがりと焼かれたエッジと、柔らかな本体が織り成す食感で口中は至福に支配される。そこにタレの濃厚で甘美な味覚が加わる時、今日も宇ち多゛に来れたことの喜びに心が熱くなるはずだ。

「シロタレよく焼き」は、宇ち多゛の時間を締めくくる上質なデザートでもある。幸い、通常「夜の四天王」と呼ばれるレバ、シロ、ガツ、アブラは遅い時間でも残っていることが多い。もし宇ち入りが遅れたとしても、最上のデザートにはきっと出逢えるはずだ。

次号予告

創刊500号記念・完全保存版

愛用品と、ともに。