80年代や90年代の名作モデルがまだまだ見つかる、リーボックが面白い!

80年代や90年代の名作モデルがまだまだ見つかる、リーボックが面白い!

80年代や90年代の名作モデルがまだまだ見つかる、リーボックが面白い!

25年近く前に購入した「DMX RUN」。一目惚れして買ったが、パープルのアッパーの靴を買ったのはこのモデルだけ。

80年代や90年代の名作モデルがまだまだ見つかる、リーボックが面白い!

ハイテクなスニーカーでもこの飴色のソールにはヨワい。履き過ぎたのか、かなり汚れてしまっている。

先週、世界を代表するシューズブランド、アディダスがリーボックの売却を発表した。

2006年に買収したときもビックリしたが、今回の話題は、昨年暮あたりから噂になっていたので、もしやとは思っていたが、とても残念なニュースであった。

売却のおもな理由はリーボックの業績不振のためと書かれている。2006年のアディダスによる買収は、業界2位のアディダスが1位のナイキを追撃するためだったと記憶している。ちょっと調べてみたら、リーボックは1986年にスポーツブランドとして全米1位の売り上げを記録している。当時はナイキよりもリーボックの方が上だったのである。それだけのビッグブランドが、その後アディダスに買収され、その上売却されることになったとは。スポーツビジネスのビッグさ、過酷さを感じてしまう話ではないか。

私がリーボックの存在を意識するようになったのは、リーボックが全米1位の売り上げを記録したちょっと後、多分88年だったと思う。

初めての取材で訪れたニューヨークの街は、本当にリーボックだらけだった。特に女性の占有率がずば抜けていた。エアロビクス用のスニーカー「フリースタイル」の白を全員といっていいくらい、ニューヨークの女性が履いていた。

そもそもリーボックは85年、英国の陸上選手ジョセフ・ウィリアム・フォスターが創立したJ・W・フォスター社をルーツとする英国生まれのシューズブランドだ。映画『炎のランナー』の主人公のひとり、エリック・リデルはこのブランドのスパイクを履いてパリ・オリンピックで金メダルを獲得している。50年代にブランド名をモデル名のひとつであった「リーボック」に変更、70年代末にようやくアメリカへ進出を果たした。

フリースタイルは80年代初頭にリリースされたモデルで、女性向けに初めてデザインされたスニーカーといわれる。本体にガーメントレザー、つまり洋服に使われる天然革が使われているのが特徴。通常の靴に使われる革よりもやわらかく、足馴染みもよい。運動に使え、見た目もいいので、多くの女性から支持を受けたというわけだ。映画『ワーキングガール』でも主人公が履いているが、通勤ではこの靴を履き、会社に着くと、ハイヒールに履き替えて仕事をしていた女性がとても多かったと聞く。この映画や、オリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」に感化されてエアロビクスに励んだ女性たちによって、リーボックは英国の小さなブランドから一挙に世界のトップブランドへと昇り詰めた。ある意味アメリカンドリームを象徴するシューズブランドなのだ。

私のリーボック初体験はそれから10年近く経ってからのこと。97年にリリースされた「DMX RUN(ディーエムエックス ラン)」というランニングモデルに一目惚れして履いたのがファーストリーボック。同社が開発したソールのクッショニングシステム「DMX」を特徴とするモデルで、「反発性」と「クッション性」が抜群と謳われていた。確かに快適な履き心地ではあったが、機能性以上に惚れたのが、やはりこのデザイン。流れるような本体と透明感のある底材が秀逸と感じた。シューレースがアッパーのデザインの一部になっていて、ファブリックのタブを使ったシューレースもとても締めやすかった。シューレースを掛ける最後のフックが金具で、しっかりと締まり、金具もデザイン上のアクセントになっている点も気に入った。

履き出してしばらく経ってから、当時、世界的なファッションブランドのデザイナーであったアレキサンダー・マックイーンもパリのランウェイを歩く時に同じモデルを履いているのを知り、とても嬉しかった覚えがある。当時、仕事で毎年のように英国に行っていて、現地でマックイーンの噂話をたくさん聞いていたからだ。

このパープル以外にも同じ品番で、白や黒のアッパーのモデルを購入し、取っ替え引っ換え履いていたが、いま残るのはこのカラーだけ。リーボックのニュースを聞いて下駄箱から取り出してみたが、ソールはかなり汚れているし、そうとう履き込んだので、踵の内側が毛羽立っている。DMX RUNは、2013年に再販されているが、昔履いていたモデルがこんなにも傷んでいるとは知らず、買い逃してしまった。今度発売したら、絶対に買わなければと思っている。

80年代や90年代の名作モデルがまだまだ見つかる、リーボックが面白い!

数年前に地元のセレクトショップで購入した「インスタ ポンプフューリーロード」。未来的なデザインだが、色がシンプルなので、あまりそれを意識せずに履くことができる。

80年代や90年代の名作モデルがまだまだ見つかる、リーボックが面白い!

特徴はポンプシステム。この突起を押すことで、足にピッタリとフィットする。履き口も「ポンプフューリー」よりも伸びるように思える。

現在手元にあるもう1足のリーボックがこれだ。「インスタ ポンプフューリーロード」というモデル。1994年に発売された革新的なスニーカー「ポンプフューリー」の後継にあたるモデルで、最初の発売は、96年と聞く。

前作のポンプフューリーもオリジナルが発売された頃、何軒も探し回ってようやく手に入れることができたのだが、サイズとフィッティングがどうにも私には合わず、数年後に手放してしまった。でも人気が再燃し、ポンプフューリーをまた履いてみたいと思っていたところ、とあるセレクトショップで見つけたのがコレ。黒一色にまとめたアッパーと白のソールで、「これならば履ける」とすぐに購入を決めた。ポンプフューリーに比べると脱ぎ履きもしやすく、履き口と踵部分のタブにパープルが使われているのも気が利いている。愛用していたDMX RUNもパープルの色合いがとても好きだったが、リーボックはパープルの使い方が上手だと私は思っている。

ポンプフューリーは、2020年にメゾン マルジェラとコラボレーションして大きな話題を集めた。いまでもスニーカーの中古市場で高価で取り引きされている。このポンプフューリーにしても、今週、再びマルジェラとのコラボが発表された「クラシック レザー」にしても、デザイナーが興味を惹かれる”なにか”がリーボックには備わっているのではないだろうか。アレキサンダー・マックイーンにしてもDMX RUNを選んだのは、このデザインにあると私は勝手に思っている。

思えばリーボックが売り上げナンバーワンを記録した80年代やそれに続く90年代には、このブランドにはいいデザインのものが多かった。エアロビクスシューズの「ワークアウト プラス」や「エックスオーフィット」、テニスシューズの「リベンジ プラス」、バスケットボールシューズではアレン・アイバーソンが履いた「クエスチョン」のエルゴノミックなデザインも好きだった。90年代に登場したサンダル「ビートニック」や映画『エイリアン2』に登場した『エイリアン スタンパー』も個性的で、忘れられない一足だ。当時は手に入れることはできなかったが、いまでも欲しいモデルがたくさんある。

今回のメゾン マルジェラのように、もっともっとアーカイブを掘り起こして、デザイナーやクリエイターが新たなデザインを吹き込んでやれば、次のリーボックの姿が見えるのかもしれない。アーカイブはブランドの財産だからだ。

しかし私が好きだったDMX RUNをアレキサンダー・マックイーンにリデザインして欲しいと思っても、もはやそれは叶わぬ夢。それがとても残念だ!