エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

2021年3月に新登場した、エルメスのメンズオード・トワレ「H24」(100mLスプレー)。

「ブランドは何をもってブランドなのか」

その問いの解答を常に示してくれるのがエルメスです。

彼らのイベント、カタログ「LE MONDE D'HERMES」、販促品などに触れるたびに、

ファンを裏切らない一貫したスタンスと丁寧な伝え方にうならされます。

この “丁寧な伝え方” がポイントで、なんの知識も経験も必要なく誰もがすっと中に入り込める。


現在のメンズモード界では、限られたコミュニティの中だけで使われる共通言語や記号が蔓延してます。

例えば、アンダーグラウンドなアートや音楽、TikTokセレブ、インフルエンサーなど。

その文脈で企画されたプレゼンテーションがインスタグラムやYoutubeなどで配信され、

そこにフィットする人の自意識をくすぐり、コミュニティへの帰属意識を高めます。

「わかってる自分、わかってるブランド」という両者をつなぐ思考回路が生まれ、ブランドを家族のように感じて好きになっていく。

こうしたプレゼンは未来の素晴らしいカルチャーの芽生えになる可能性もあります。

新しいモノに素早く飛びつくフットワークの軽さが、ファッション分野の優れた特性でもあり。

新たな顧客を獲得すればブランドは存続できますし、売上をダイレクトに左右する若者狙い自体に何ら問題ないかもしれません。


ただ……昨今の各ブランドの取り組みを眺めていると、大人を置いてけぼりにしている感はいなめず。

コミュニティに属さない人々を蚊帳の外に置き、若者にだけ目を向けているような気がして、

「高級ブランドって何だろ?」と感じることしばしば。

とはいえ、多くの世代に好まれるハリウッド映画が苦手な人もいますから、万人ウケするモノをつくるのは至難の業なのですが。

なんとゆーか……素直に心が揺り動かされるプレゼンを体感したい今日このごろです。

「ミレニアルやZ世代はこーゆーのが好きなのかなっ」

と脳みそを動かし理詰めで解釈するのではなく。


そこで、エルメスの登場。

今回ここでチラ見せするのは、先日家(仕事場)に届いたフレグランスの新製品と、それをサポートするビジュアル冊子。

バランスがいいんです、実に!

製品はなんと15年ぶりにつくられた、男性向けのオード・トワレ「H24」

エルメスには様々なフレグランスがありますがユニセックスタイプが多く、男性を前提にしたものは少ないんですね。

2021年3月1日の発売日より前に香りを試し、Pen Onlineのニュース記事として文章を書かせていただきました。

このブログ記事の最後にリンクを貼っておきますので、ぜひのちほどご覧くださいませ。

香水の説明もそちらで(手抜き?)。

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

右の箱が製品で、左のゴムで留められた2冊が関連の冊子。箱のエッジの色は、現物はライムグリーン。

製品の箱は100%リサイクル可能な紙素材。

冊子(大)は、箱と似た質感の厚紙で挟まれた写真ビジュアル。

冊子(小)の内容は、H24の説明。

ゴムの色がイイですよねえ。

箱のエッジと呼応してて、洒落てるなーと。

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

冊子をそれぞれ開いたもの。

ほら、もう香りが漂ってきませんか!

「プレゼンブックがなぜ2冊も?」と思ったら、こういうことだったんですね。

各々を開いて自分のペースで眺められる。

それを可能にしているのが特殊な大冊子のつくりで、

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

左右に配置した2冊のパンフレットを、ひとまとめに閉じたようなつくり。

え〜〜と説明が難しいな。

教会で祈る人が、両手の指を互い違いに組んでギュッと握って顔の前に持ってくるじゃないですか。

あの祈るポーズ……じゃなくて指をページと考えて、2冊の別のパンフレットの開く側をくっつけて、奥まで差し込んだような構造。

(もういい、説明諦めた)

この冊子の素晴らしさは左右のページを自由に開いて重ね、自分好みの一枚絵をつくれること。

要はカスタマイズ可能な写真集なんです。

開き方によっても、思いもよらぬグラフィックが生まれます。

好き勝手に組ませられるから、眺めて飽きないだけでなく玄関にでも飾っておきたくなる。

飛び出す絵本の感覚にちょっと近い愉しさです。


さらに計24枚の写真が、どれもまー美しくて!

全部違う写真、24枚ぜんぶ。

似た構図や撮り方、ひとつもなし。

人物が着ている服はちゃんとエルメスのメンズ。

これが短期間で行った撮り下ろし仕事なら、驚きしかない実力の、インスタのフォロワー27万人でマグナムのメンバーでもあるクリストファー・アンダーソンなのでした。

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

小冊子のとある見開き。詩的な表現でH24の説明が。

エルメス15年ぶりのメンズ香水で知る、巧みなプレゼンパッケージとは?

ボトルデザインはフラスコ型で手に馴染みます。

このH24のパッケージ全体をご覧いただいて、受け手に優しいプレゼンなことがおわかりかと思います。

たぶん誰が手に取っても、「あらステキ」ってなる気がするんです。

香りのフィールドである “空気” が伝わってくるから。

 

男性用であっても煙草の匂いのする20世紀的な男くささでなく、植物のハーブに重きを置いた調合でニュートラルで穏やかな男性像を描いたH24。

ご興味ある人は、以下のリンク先で詳細をチェックしましょう!


●現代的な感性の穏やかな香りが漂う、エルメスの新作香水「H24」

www.pen-online.jp/news/product/hermes_/1



写真 © 高橋一史

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