『卒業』と『小さな恋のメロディ』にはファッションと音楽のネタがいっぱい

『卒業』と『小さな恋のメロディ』にはファッションと音楽のネタがいっぱい

『卒業』と『小さな恋のメロディ』にはファッションと音楽のネタがいっぱい

有名なシーンです。またコーデュロイのジャケットを着たくなりました。

 先週、映画『卒業 4Kデジタル修復版』(1967年)と『小さな恋のメロディ』(1971年)の2作がリバイバル公開されたので、観てきました。

 どちらも10代に観た作品で、映画館で観るのは40数年ぶりです。そのころは東京郊外に住んでいまして、ロードショーされてから数ヶ月遅れて公開されるような時代でした。2本とか3本同時にかかるので、興味がそれほどない作品も一緒に観た記憶があります。『小さな恋のメロディ』は初公開のときに観た記憶があるのですが、『卒業』はリバイバルで公開されたとき、あるいはずいぶん遅れて映画館にかかったときに観たのかもしれません。

 両作ともテレビでは何度も診ていますが、やはり映画館で観ると新しい発見があり、忘れていた箇所も多々ありました。

 2本同日に観たのですが、最初に観たのは「卒業』です。昨年、『Pen』でブルックス ブラザーズの特集にかかわったときに、主演のダスティン・ホフマンの服が同ブランドのものと知りました。どの服だろうかと目を凝らして食い入るように。

 ダスティン・ホフマンが演じたベンジャミンは東部の有名大学を奨学金を得て卒業した優等生です。彼にはブルックス ブラザーズの服は制服みたいなものです。ボタンダウンシャツ、これは襟のロールからみて、ブルックス ブラザーズのものでしょう。コーデュロイやツイードのジャケットも多分そうです。ネクタイはたぶん違います。何故ってストライプの向きが左下がりだから。いや、この時期はブルックス ブラザーズがそうしたデザインのものをつくっていたのかもしれませんが、、、

 後半ではヒロインのエレーン(キャサリン・ロス)を追いかけてベンジャミンはバークレーに行きます。そのとき着ていたのはオフホワイトのパーカに同系色のコットンパンツ、そしてスニーカーは「ジャック・パーセル」なはずですが、足元が映るシーンがなく映画では確認できませんでした。が、映画を観た後入手した昔のパンフレットに全身の写真が掲載されていました。確かに「ジャック・パーセル」です。パーカは時期からすると、アメリカの「マイティマック」製かと思っていましたら、違いました。もっとシンプルなデザインで、英国っぽいデザインです。こういうことがチェックできるので、やはりパンフレットは買ってキープしておかないといけません。


 ファッション以外に注目すべきは音楽です。いうまでもありませんが、この映画に流れる音楽はずべてサイモン&ガーファンクルがつくっています。公開当時、日本でも当時大ヒットしました。私が買った最初の洋盤も彼らのベストアルバム(日本企画)です。映画は『サウンド・オブ・サイレンス』(これが主題歌で日本でヒットしました)で始まりますが、後半で同じ曲が使われていることに気付きました。名曲『スカボローフェア』は何度も、しかも効果的に使われています。本当に素晴らしい映画と音楽。

 最近、『ボヘミアン・ラプソディ』『グリーンブック』やビル・エバンスなどのドキュメンタリー映画も観ましたが、音楽と密接にある映画は、いい作品が多いですね。

『卒業』と『小さな恋のメロディ』にはファッションと音楽のネタがいっぱい

墓地でのデートシーン。2人の持っている革のバッグのいいです。欲しい!

 午後に観たのが『小さな恋のメロディ」です。これも音楽がステキです。エンディング以外で使われるのがビー・ジーズの作品。彼らはその後『サタデーナイトフィーバー』でも音楽を手掛け、ディスコ調の曲が大ヒットしていますが、この映画に使われるのは、もっとソフトでメロディアス。正直、全部ステキで、思わずCDも購入してしまいました。エンディングに使われるのはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング。こちらも昔から大好き。アルバムは全部聴きましたし、『ティーチ・ユア・チルドレン』は曲も歌詞も最高です。この映画のエンディングにはピッタリです。

 音楽もいいのですが、この映画、ファッションの最高です。主人公たちは英国の10代の生徒たち。学校では英国では寄宿制のパブリックスクールが有名ですが、そうした名門校ではなく、主人公たちが通うのは、普通の公立の学校と思われます。でもさすが英国。先生は法衣のようなマントを着ていますし、生徒たちはブレザースタイルで完璧にクラシックでトラッド。いちばんステキなのは、主人公のメロディ(トレーシー・ハイド)たち女生徒が着用するチェックのワンピース。ギンガムより大きく、テーブルクロスチェックの素材のワンピース。学年によって違う色を使われていると思われ、ブルー、赤、イエロー、グリンなど、赤のチェックが洒落ています。

 男子生徒はみんなブレザーですが、運動会のシーンでは英国らしく、トム(ジャック・ワイルド)がラグビージャージを着用しています。もちろん襟はイングランドタイプ。比翼仕立てです。スニーカーも英国で「プリムソル」と呼ばれる懐かしい運動靴ばかり。この映画はもう何度も観ていますので、そろそろ出てくるぞと思いつつ、チェックしていました。

 この映画が撮られたのは1970年代はじめか、あるいは60年代末だと思いますが、そのころの英国人の普通の生活が垣間見られるシーンがたくさん出てきます。アフタヌーンティーを食べる食卓やロンドンバスに乗る様子、海辺のシーンなど、いまのロンドンはまったく違います。時代を感じますね。それに生徒たちを撮影している様子もドキュメンタリータッチで、実に生き生きしています。そうとう時間と手間をかけて撮ったのでは。

 この映画、日本では大ヒットしましたが、本国の英国やアメリカでの成績はイマイチだったと聞きます。でも監督のアラン・パーカーは、『ミッドナイト・エクスプレス』『エンゼル・ハート』『ミシシッピー・バーニング』などを撮っていますし、その片鱗はこの映画でも感じると思います。

『卒業』と『小さな恋のメロディ』にはファッションと音楽のネタがいっぱい

映画館ではパンフレットは売っていなかったので、昔のものを入手しました。200円という価格に時代を感じます。

 日本でもシネコンが増えて、どこでも良作が観られるようになりましたが、ヒットしないとけっこう見逃すことがあります。そのうちセル化されたら観ればいいと思う人も多いかと思いますが、やはり映画は映画館で観てこそその価値がわかるものです。音楽などが素晴らしい場合は なおさら。音響設備が整った映画館で観るほうが何倍も記憶に残ります。この2作もたぶんこれから全国を回ると思いますが、東京の有楽町にある角川シネマでの公開は6月27日までです。ご興味ある方はぜひ。