日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定! 3つの会場で開催中の「...

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定! 3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

展覧会は東京国立博物館、国立科学博物館、国立近現代建築資料館の三会場で行われている。会期や入場方法が異なるので注意。

東京でオリンピック・パラリンピックが開催されるはずだった2020年は、日本の美をテーマにした「日本博」や「紡ぐプロジェクト」の文化事業が多く催された。そうしたプログラムのひとつが「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」である。自然素材を巧みに活かした日本の伝統建築の技術は、世界的にも特筆されるべきもので、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録する動きも進んでいる。今回の展覧会は、日本建築の歴史を俯瞰する展覧会を、東京にある3つの国立施設にまたがって行うというもの。それぞれにサブテーマが設けられ、会期や入場方法も異なるので、観覧のときには各施設のウエブサイトなどで確認したうえで出かけてほしい。

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

「近代の日本、様式と技術の多様化」をテーマとした国立科学博物館の展示。

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

霞が関ビルディング 1/200模型 国立科学博物館蔵 展示会場:国立科学博物館

会場の一つ、国立科学博物館へ。ここは「近代の日本、様式と技術の多様化」というテーマで、明治維新から現在に至る、およそ150年間から12件の建物を選んで、模型を主に使って展示している。三菱第1号館、迎賓館赤坂離宮などの様式建築や、霞が関ビルディング、東京都庁舎といった超高層ビル、さらには安藤忠雄という有名建築家による作品と、構造も意匠もばらばらな建物が並ぶ。近代以降の建築の多様化を反映したものであることはわかるのだが、なぜこの12作が選ばれたのかが、展示からはうかびあがってこない。ひとつひとつの模型に見所はあるものの、全体を通して伝わってくるものが薄い感じがする。その点が少し残念。ただし、子どもが見れば、建築に興味を持ってくれそう。そんな効果は期待できる。

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

岩城庄之丈製図道具 明治時代 滑川市立博物館蔵 展示会場:国立近現代建築資料館

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

五十九銀行新築正面之図 1900年頃 青森銀行本店蔵 展示会場:国立近現代建築資料館

続いて国立近現代建築資料館へ。こちらでは「工匠と近代化―大工技術の継承と展開―」と題して、伝統建築を担った大工たちのその後の活躍に焦点を当てる。明治時代に入って日本でも近代建築がつくられるようになるが、伝統建築が絶えることはなく、名門の棟梁はむしろそれを洗練していく。その一方で在野の大工たちは、それまでに身に付けた技術を応用して、乏しい情報から西洋建築をコピーしていく。また、新しい構造技術にも挑戦し、大谷派本願寺函館別院本堂のような大規模建築を、鉄筋コンクリート造で実現。その一方で、歴史的な建築の保存にもその技術は活かされる。伝統建築の技術が、過去と未来の両方へと手を伸ばしていったのだ。模型ではなく図面の展示なので専門性は高いが、近代以降の建築に伝統大工の末裔たちが大きな役割を果たしていたことを示す興味深い展示だった。

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

東京国立博物館・表慶館のドーム下に展示された塔の模型群。左から「一乗寺三重塔 1/10模型」「法隆寺五重塔 1/10模型」「石山寺多宝塔 1/10模型」

日本の伝統建築の技術がユネスコに登録に決定!  3つの会場で開催中の「日本のたてもの」展の見どころは?

唐招提寺金堂 1/10模型 1963年 東京国立博物館蔵 展示会場:東京国立博物館 製作年:1963年 製作者:伊藤平左ェ門建築事務所

最後は東京国立博物館の「古代から近世、日本建築の成り立ち」へ。会場となっているのは、片山東熊が設計した表慶館(1908年竣工)で、その内部空間が見られるのも楽しみだ。展示は塔、仏堂、神社、城郭、住宅、門といった建物の種類ごとに代表作を取り上げる。法隆寺五重塔、唐招提寺金堂、如庵、松本城天守など、国宝を含む有名な建物の模型が並んで、日本の建築史を一望するしつらえとなっている。実は1964年の東京五輪に際しても東京国立博物館で日本古美術展が開かれ、建築を取り上げていた。今回の展示は、そのリメイクとも言える。模型は文化財建造物の保存修理に際して資料用につくられたものだが、外観はもちろん、内部の仕上げや天井裏の構造、檜皮葺や土壁の質感まで見事に表現していて、その出来栄えには目を見張る。すべての建築模型には、製作年と製作者の名前がクレジットされており、これ自体が作品であることを示す。つまりここで行われているのは、模型を通じて建築を知る展覧会であると同時に、建築模型それ自体を鑑賞する展覧会でもあるのだ。三会場のうちどれを優先するかと尋ねられたら、まずここを薦めたい。


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『日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵』
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono
※会期、開館時間などは変更する場合があるため、各館ホームページ、展覧会公式サイトなどでご確認ください。


「古代から近世、日本建築の成り立ち」
開催期間:2020年12月24日(木)~2021年02月21日(日)
開催場所:東京国立博物館 表慶館
東京都台東区上野公園13-9
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時 ※8、9日を除く金曜・土曜日は21時まで開館
休館日:月曜日、1月12日(火)※1月11日(月・祝)は開館
入場料:一般¥1500(税込) ※ウェブにて予約が必要

「近代の日本、様式と技術の多様化」
開催期間:2020年12月8日(火)~2021年01月11日(月・祝)
開催場所:国立科学博物館 日本館1階 企画展示室
東京都台東区上野公園7-20
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時~17時
休館日:月曜日 ※1月11日(月・祝)は開館
入場料:一般・大学生¥630(税込) ※ウェブにて予約が必要

「工匠と近代化―大工技術の継承と展開―」
開催期間:2020年12月10日(木)~2021年02月21日(日)
開催場所:国立近現代建築資料館
東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~16時30分
休館日:1月9日(土)~11日(月・祝)
入場料:無料 ※土日および祝日は旧岩崎邸庭園からの入館となるため、庭園入園料¥400(一般)が必要