年間500本の「書評」を執筆! 超多筆な書評家の仕事について。

年間500本の「書評」を執筆! 超多筆な書評家の仕事について。

年間500本の「書評」を執筆! 超多筆な書評家の仕事について。

『書評の仕事』 (ワニブックス) では、年間500冊以上の本を書評する印南敦史さんが、書評家としての仕事やそこから学んだ技術、人生訓について書いている。今年7月に『読書に学んだライフハック』(サンガ)、12月には『それはきっと必要ない』(誠文堂新光社)を上梓予定と、書籍も積極的に執筆中。

今発売中の『Pen』は本特集。読めばきっとお気に入りの本が見つかるはずなので、ぜひ手にとってみてほしい。

本との出合い方はさまざまだが、自分はネットや雑誌などの「書評」をきっかけに本を買うことが多いような気がする。以前働いていたウェブメディアの編集部で書評の連載を担当していたこともあって、いまも書評を読むこと自体が結構好きだ。

僕が担当していた連載は平日毎日の週5回更新で、印南敦史さんという書評家の方に1人で書いてもらっていた。単純計算で年間250記事程度。それだけでも驚異的な量なのだが、印南さんは徐々に他の媒体でも書評を書くようになっていき、いまではビジネス書を中心に年間500本以上(!)もの書評を書いているそうだ。ちなみにPenの隣の編集部、『ニューズウィーク日本版』のウェブでも連載を持っている。

「書評」に限らず評論的なコンテンツ全般に言えるかもしれないが、著者の意見を全面に押し出すタイプのものと、できるだけ客観性を保とうとするタイプのものがあると思う(そもそも評論とは…みたいな話は一旦スルーさせてほしい)。印南さんの書評は完全に後者で、できるだけ主観を排して客観的な目線でその本の魅力を紹介するのが特徴だ。いい意味でクセがないので、誰でも気楽に読めてフラットな気持ちで本と出合えるという素晴らしさある。

それもあってか、記事を出した直後にAmazonの在庫がなくなったり、記事に貼っている本のリンクから100冊近く売れたりと、実際に本を買う際の参考にしている読者も多かった。紹介した本を売ることが直接の目的というわけではないにしろ、やはりそうした反応があると担当編集としても嬉しかった記憶がある。

年間500冊もの書評を書いている印南さんだが、自分が担当していた約4年間で原稿が遅れたことは記憶の限り一度もなかったように思う。そこも素晴らしく尊敬できる点なのだが、本人は自分のことを「遅読家(ちどくか)」だと名乗るほど、本を読むのがとても遅いのだそうだ。そんな人がどうやって年間500冊も!?と思うが、自著の『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)の中でその秘密を明らかにしている(抜け目がないですね)。

この本の中で「フローリーディング」という読書術を提唱していて、一部引用する。


読書スピードを高めるための4ステップ
ステップ1. 「はじめに・目次」をよく読む
ステップ2. 最初と最後の5行だけ読む
ステップ3. キーワードを決めて読む
ステップ4. 2つ以上の読書リズムで読む


いわゆる「流し読み」や「飛ばし読み」と呼ばれるようなものをきちんとメソッド化したものと言えそうだが、ビジネス書や実用書などを効率よく読む際にはかなり使えると思う。印南さん自身がビジネス系媒体を中心に執筆されている方なので、その中で書評を書いているうちに生まれたメソッドだと思うと非常に納得だ。


今年の2月には書評家のとしてのキャリアをまとめた『書評の仕事』(ワニブックス)という本も出版されていて、これも元担当として大変興味深く読ませていただいた。「なにか面白そうな本はないかなー」とお探しの方は、印南さんの書評を読んでみてはいかがだろうか。

(編集YK)


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