5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドア...

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

ファッションブランド「シュプリーム」のロゴの元ネタ、バーバラ・クルーガーの作品。

皆さんにひとつお伺いしたいんですけども。

カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンエリアに、行くご予定あります !?


たぶん行く人少ないですよねえ。

誕生してまだ5年のこの美術館「ザ・ブロード」を私が訪れられて(入場予約してくれたPen編集部さんのおかげだー)、バラバラに観ていたスタッフとフロアで顔を合わせた瞬間に思わず、「幸せです!」と言ってしまったほどテンション上がってたとしても、単なる美術館紹介じゃ皆さんと面白さを共有できません。


そこで!

展示されたアメリカ美術の大御所たちの作品ディテールを、さくっとお届けしようと。

なにせ日本の美術展では、メディア向け内覧会でもドアップ撮影NGですから。

「絵の全体が入った会場写真のみで」、とキツく言われる。

だから、遠目から見た写真だけがメディアに流通するんですよ〜、取材スタッフの責任じゃないんですよ〜、みんな頑張ってるんですよ〜(と弁護してみる)。

ディテールを知れば、
「人の手仕事なんだ! 心こもってる!」
ってなるんでは? と私は考えるんですけども。
いろんなご事情やご意見があるのは、まー、ワカランでもないと言いますか。


それでは、記念撮影してる人も多いカジュアルな(でもスゴい収蔵品と建築)この美術館にて、作品を見ていきましょう。

まずは超大物からっ。


★ポップアート(でも真面目、すごく)の、ロイ・リキテンスタイン

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リキテンスタインだけの部屋。

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1966年制作で、タイトルは「I…I'm Sorry!」。

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リキテンスタイン斜めから。

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リキテンスタインの端っこ。

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リキテンスタインの目。

素敵すぎますね、ロイ・リキテンスタインは。
どの角度から見ても絵になる。
丁寧で緻密な手仕事。
漫画の一コマを拡大したアイディアはキャッチーで、作風はいつも何かからの引用なんでしょうけども、皮肉や社会風刺、絵の周辺に広がる物語りが感じられて。


絵の前に立ってると、感情が揺れ動きます。
ちょっと泣きそうにもなりました。
登場人物への感情移入ではなく、作品そのものの力ゆえです。
この作家の作品に囲まれた部屋だからこその良さも。
平日の午前中だからか、人ぜんぜんいなかったし 笑

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ブロンズ彫刻の、前から。

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横から。

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後ろから。

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「Live Ammo(実弾)」という戦争絵画(漫画)。胸がザワザワしました。制作意図は反戦ではないようですけども、私は勝手に戦争の痛みを感じてました。

さてここで、「ザ・ブロード」の館内の様子をご覧いただきましょう。

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巨大なマユの中のような1階から、エレベーターでメインフロアの3階へ。

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長いトンネルの先には……、

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ば〜ん!と開けた真っ白な空間が。

美術館の詳細は、この記事の最後でちらりとご紹介します。


★ガランとした空間でガン見する、ジャン=ミシェル・バスキア

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バスキア〜〜〜!

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

バスキア〜〜〜!(再び)

あ、いえ、私はさほどバスキア好きではないんですけども、「贅沢な展示空間だな」と思いまして。

ほかに人がいない中で同作家の絵の前に立った経験がないもので、ちょっとしみじみしました。

(ただのミーハー人間)

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1981年の無題作品。

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荒々しい筆のタッチ。


★でかすぎ!の映えスポット、ロバート・テリエン

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1994年制作の、「アンダー・ザ・テーブル」。

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

立ってる黒服女性は監視員さん。美大の学生っぽい雰囲気。

さすがに彫刻に寄りかかったりしますと、お洒落な監視員の女子に「やめてね」と優しく諭されますけども、
来場者がスマホを渡して記念撮影をお願いすると、ニコニコと応じて撮ってくれるという。
あー、居心地いいなー、この美術館。

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アンダー・ザ・テーブルですしっ。潜り込んで見上げてみました。

★どん!と鎮座する、ジェフ・クーンズ

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バルーンアートの典型を超巨大にしたメタルオブジェ。

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ジェフ・クーンズの後ろ脚(私が映っちゃってますが)。

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ジェフ・クーンズの先っちょ。

なんでしょう、たぶんこういう発想を実行したことがスゴいんでしょうね。
大衆のおもちゃを彫刻として捉え直した着眼点と、その現実化が。
とっても “感心” させられました、“感動” とは異なりましたけども。
“アート” と、 “デザイン” 及び “企画” の境界線って、あやふやですね。
っても、細部までしっかり表現されていることを知れましたし、実物を見れてホントに良かったです。

著作権侵害の常連ピープル、ジェフ・クーンズ。
作品額が100億円規模で取引される、まさしく大成功のコンポラアート。
皆さんは、フィギュア拡大系作品はお好きです?


★さりげなく、 ジャスパー・ジョーンズ

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

1975年制作「無題」。わりとコンパクトな大きさ。

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油絵の具と、色のついた蜜蝋を熱で溶かして固める古典技法によるもの。

知識の浅っい私は、「ジャスパー・ジョーンズといえばアメリカ国旗」くらいのふわふわイメージしか持ってませんでしたが、「ザ・ブロード」の展示品ではこれが好きでした。

正直、意味するものはぜんぜんわかんなかったですけども。

色と立体(平面ですが絵の具の盛り上がりが印象的)が交差して動いていく感じに惹かれましたね。


★解けない難問だぁ!サイ・トゥオンボリー

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おっきい。1971年制作の「Nini’s Painting [Rome]」。

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

画材を走らせ、パレットナイフでカットし、ブラシがけ。

う〜、わっかんねーんだよお! サイ・トゥオンボリーの良さがぁ!
くやしいよお……。
スゴい作家なんでしょう、それは感じる、とゆーか、どうやらそうらしい。
でも……私のセンスと偏差値の低い頭じゃ心が動かず……。


と思って、美術館によるこの絵の解説文を見たらですね、冒頭にいきなり、
「Cy Twombly is a difficult artist for a lot of people.(サイ・トゥオンボリーは多くの人にとって難しいアーティストです。←Google翻訳」

と書かれてるじゃないですか 笑

う〜む、ちょっと安心。


彼の絵画はひたすら線が描かれていることに意味があるらしいです。
うん、やっぱロジックはわかんない。
でも品格があることは、さすがに私でも。

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

彫刻も含めた同作家の専門部屋。

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いやもう、スタイリッシュな監視員女子のほうに目を奪われてましたからね(おい)。

ではおしまいに、気になった作品を3点ほど。


★なんか知ってる、ってなる、バーバラ・クルーガー

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

1989年の「無題」。

あの大人気ストリートブランド「シュプリーム」がロゴ用にパク……いや、サンプリング?オマージュ?パロディ?した、
ボックス形状の赤字+白文字がシグネチャーのバーバラ・クルーガー。

彼女の出発点は、雑誌のグラフィックデザイナー、コラム書き、編集だったようですね。
なるほどです。

「あなたの身体は戦場です」の言葉と、フルメイク顔の女性のネガポジ反転写真。
女性は政治利用の対象であり、身体はまるで人々が争う戦場のようであると。

絵のインパクトに惹きつけられる社会メッセージです。



★時代を感じる白黒写真ふうの、ロバート・ロンゴ

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

1982年制作「無題(ホワイト・ライオット)」

「ホワイト・ライオット(白い暴動)」と聞けば、ロック好きが思い浮かぶのはイギリスのパンクバンド『ザ・クラッシュ』の1977年のファーストシングル。

白人社会を皮肉ったこの曲に影響されたか不明ですけども、モノトーンの写実的な集団人物に時代を感じます。

当時のファッション写真のようですね。

大きなサイズの絵でインパクトがありました。


★閲覧注意!ダイレクトな表現に戦慄する、カラ・ウォーカー

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

2006年制作の「Burning African Village Play Set with Big House and Lynching」。

影絵ふうのポップな作風に油断すると、痛い目にあう作品。

この美術館のお隣が「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」でして、そんなほんわか気分で部屋に足を踏み入れたら、絵の表す内容に気づいて驚愕ですよ!

(以下、閲覧注意)

5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

奴隷時代のアフリカン・アメリカンの境遇が。

社会に根強い差別を浮き彫りにする、アフリカン・アメリカンの女性作家。
絵本のごとく匿名性のある絵柄だからこそ、心に突き刺さります。


5年経っても大行列! アメリカ現代美術の「ザ・ブロード」で、作品のドアップを撮ってきた。

ダウンタウンのハイソな丘の上に佇む奇妙な建物。

周囲が高層ビルのビジネス街の中で、異質の建物ですからすぐわかりますよ、ザ・ブロードは。

ただ隣にはフランク・ゲーリーのメタル彫刻のような建築がありますから、そっちが美術館と思ってしまうかも。

(詳しくはこの紹介記事を →  反射がまぶしすぎる!よくぞつくったシルバーメタルのスゴ技建築 in LA


このザ・ブロード、じつは2015年のスタートからいままで入場行列が絶えません。

とゆーのも、なんと入場無料だから!

そして収蔵品は、大金持ちのブロード夫妻の個人収集品だから!!

もうあり得ないですよね、アメリカはなんて国だ……。

しかも通りを挟んで対向面にある「ロサンゼルス現代美術館(MOCA)」や、ロサンゼルス内の多くのギャラリーが休館日の火曜日でも営業してるし。

(MOCA行けなかったよぉ……)

誰もが親しめる作品が多く、現代美術の入門編として、学校の社会見学でも重宝されているようです。

(じっさい、校外学習っぽい学生集団がたくさんいました)

ウェブで入場予約して行くのが正解らしいです。


あ、そーだ、アンディ・ウォーホルの作品をここで取り上げなかったのは……一点も撮らなかったからです!
好きじゃないからです \(^o^)/
(バンザイとかやってる場合か)

ウォーホルの作品たくさんありましたから、お好きな人は大満足ですよ……たぶん。


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写真 © 高橋一史

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