石巻の食とアートと音楽を楽しむ、リボーンアート・フェスティバル

石巻の食とアートと音楽を楽しむ、リボーンアート・フェスティバル

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前回制作された名和晃平《White Deer (Oshika)》はリボーンアート・フェスティバルのシンボル的存在に。

石巻の食とアートと音楽を楽しむ、リボーンアート・フェスティバル

擁壁に作られた巨大な作品はバリー・マッギー with スクーターズ・フォー・ピースによるもの。

石巻の食と音楽とアートを楽しめる「リボーンアート・フェスティバル」に行ってきました。2017年に続いて2回目の開催になる今回もなかなか攻めてます。東日本大震災で大きな被害を受けたエリアであり、牡鹿半島という場所に根づくさまざまなものに気づかせてくれる芸術祭です。

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島袋道浩さんの《白い道》。森の中に白い小石を敷き詰めた道が延びています。

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道は海へと続きます。

たとえば島袋道浩さんの《白い道》という作品。森の中に白い小石で道が作られています。その道は海岸までの延びていて、その先には海と金華山が見えます。彼が作った新しい道が、すでにあったものを発見させてくれるのです。

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野村仁さんの《Analemma-Slit : The Sun, Ishinomaki》。タイトルのAnalemma(アナレンマ)とは太陽が1年を通じて描く8の字型の軌跡を指します。

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野村仁さん作品。中央の低い斜めの線が冬至の、高い線が夏至の南中高度を示します。

野村仁さんの作品に描かれた三角形は、それぞれ冬至と夏至の日の太陽の南中高度を示したもの。「現代人は太陽があるのが当たり前だと思っている」と野村さんは言います。当たり前すぎて関心を持たなくなっているのです。しかし、かつては世界中の多くの地域で冬至は再生の日とされていました。その翌日から少しずつ日が延びて、冬から春へと移り変わっていくからです。野村さんの作品は私たちが忘れていた太陽との関わりを思い出させます。

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「MoWA」外観。両脇に伸びるコンクリートの壁が防潮堤です。もちろん許可はとっています。

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「MoWA」展示のひとつ、EVERYDAY HOLIDAY SQUADの「Wall Art Research」。世界各国の壁にまつわるアートを木炭スケッチで表現しています。これはパレスチナ分離壁の脇に作られたバンクシーの「The Walled Off Hotel」。

長く伸びる防潮堤をまたぐようにして作られた構造物は「MoWA」というミュージアム。SIDE COREの作品です。「MoWA」とはMuseum of Wall Artのこと。内部にはパレスチナの分離壁などの壁をモチーフにした作品などが展示されています。東日本大震災での被害を受けて建設されている防潮堤には今も議論が絶えません。そこに忽然と現れたミュージアムは壁の持つ機能や意味を訴えます。

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《詩人の家》の吉増剛造さん。後ろにあるのは吉増さんの作品です。

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《詩人の家》では本棚もじっくり見てしまいます。

「リボーンアート・フェスティバル」の会期中ここに住む、というのは詩人の吉増剛造さん。《詩人の家》でほぼ毎日、執筆や制作を行います。観客は《詩人の家》を訪ねて吉増さんとお話ししたり、予約制で宿泊することもできるとのこと。いつもよりはるかに濃厚な時間が過ごせそうです。

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ロイス・ワインバーガーの作品。バケツに土を入れておくだけでこんなことに。

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ロイス・ワインバーガーの作品。私もあなたも彼も彼女も雑草、という詩です。海を見下ろせる小さな展望台に設置されています。

今、ワタリウム美術館で個展を開いているロイス・ワインバーガーは植物とコラボレーションしたようなアートを制作しています。このフェスティバルでもたくさんのバケツに土を入れてそのまま放置する、という作品を作りました。土にまぎれこんでいた、あるいは鳥や虫が運んできた種が発芽して、“第2の地面”と化しています。野村仁さんの作品とはまた違った形で自然のパワーをありありと見せつけます。

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持田敦子さん《浮く家》。画面中央やや右よりに切断面があります。

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《浮く家》内部。手前の床とその先の黒い床はもともと同じ高さでした。

空き家を真っ二つに切って片方を浮かせる。そんな大胆なアートもあります。中に入るとすっかり沈んでしまった畳の向こうに、ずれて浮き上がった床が見えます。作者の持田敦子さんは「重力という大きなものに抵抗している」と言います。地面から浮き上がった家はどこに属することもなく、さまよっているようにも感じられます。普段よりどころにしているものに頼れない不安と、解放された爽快感、矛盾した感情に襲われるアートです。

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フェルメント周辺で展示されている淺井裕介さん作品。

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フェルメント周辺の堀場由美子さんの作品。鹿の頭骨に、角のように植物が生えているイメージが生命の循環を思わせます。

牡鹿半島はその名の通り、鹿が多く生息しています。牡鹿半島に限らず日本全国で増えすぎて、農地を荒らすことも。その鹿の数を減らし、命をおいしくいただく試みもこの芸術祭のプログラムの一つです。2017年には鹿の解体処理施設「フェルメント」ができました。ここで処理された鹿肉の一部は「Reborn-Art DINING」で全国からかわるがわるやってくるシェフたちによって料理されます。「リボーンアート・フェスティバル」のテーマ「いのちのてざわり」を感じられるレストランです。

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青木俊直 《クラスルーム ver.A》 (ディレクション:オザワミカ)。マンガと現実が一体化したような空間。椅子に座って学校に来た気分を味わうこともできます。

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海が見える窓と、それと対照的な位置に置かれたディスプレイが震災の津波や漂着物を映し出す石毛健太《この波際》。波が持ってくるもの、持って行ってしまうものを表現します。

今回の「リボーンアート・フェスティバル」は7つのエリアに分け、それぞれキュレーターがアーティストを選ぶという方式をとっていて、それぞれのエリアごとに個性的なテーマが感じられます。アートと食のほか、音楽も魅力的なコンテンツの一つ。作品はかなり広いエリアに点在しているので、自力で回るのはちょっと大変、という人はオフィシャルツアーもあります。会期は9月29日まで(バリー・マッギー、」ロイス・ワインバーガー、持田敦子、石毛健太さんたちの作品がある網地島エリアは8月20日からの開始です)。暑さと虫対策は忘れずに楽しんでください。