CÉLINEとCELINE
Takahiro Tsuchida

Takahiro Tsuchida / Design Journalist / Writer
土田 貴宏/デザインジャーナリスト/ライター

2001年からフリーランスで活動。国内外での取材やリサーチを通して、雑誌をはじめ各種媒体に寄稿中。家具などのプロダクトを中心とするデザインと、その周辺のカルチャーについて書くことが多い。東京藝術大学などで非常勤講師を務める。
https://www.instagram.com/tt0/

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CÉLINEとCELINE

フィービー・ファイロのCÉLINEは本当にすばらしかったな。ファッションは基本的に畑違いの自分だけれど、彼女が手がけるCÉLINEはプロダクトを中心にショップの空間や広告のグラフィックなどトータルで時代の創造性の指針になりえていた。

CÉLINEとCELINE

前回の改装前の工事現場風インテリアの表参道店にあったコンスタンティン・グルチッチのChair_oneや、銀座店はじめ世界中のショップにあるSabine Marcelisのオブジェのように、店内で見かけるものもひとつひとつが冴えていた。結局、我が家にあるCÉLINEのアイテムはごくわずかだけれど、6年ほど前に買ったスニーカー(妻の)が今なお現役だったりと(だいぶんくたびれたが…)それぞれに元は取っている様子だし、ひとつずつ何となく忘れがたい思い出もある。

CÉLINEとCELINE

そんなCÉLINEのクリエイティブディレクターがエディ・スリマンへと交代になり、最初のコレクションが先日発表されて、そこにフィービー時代の面影はもちろんない。ディオール オムやサンローランの延長線上を思わせる、完璧主義者のエディ・スリマンらしいCELINEだった。 https://www.celine.com/ja-jp/celine-collections/2019-summer/show/ 


彼もやはり圧倒的なデザイナーだけれど、今回はやりにくいところもあるだろうな。ファンの気持ちをあれだけ満たし、どのブランドよりもファンが多かったに違いないCÉLINEと、完結した世界観とカリスマで多くの熱心な顧客を獲得していくであろうCELINE。どちらも高度なことをしている点に違いがなくても、CELINEは「ファン」より「顧客」を採ったように見えてしまう。ブランドへの支持が購買に比例する顧客に対し、創造性に魅了されるファンは買い物しなくても口うるさい(自分か)。

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普通に考えて、新しいCELINEはディオール オムやサンローランがそうだったようにいっそうメインストリームになり、CELINEのバッグをもつレディ・ガガや長澤まさみの写真がインスタグラムを賑わせたように世の中への打ち出し方も変わっていくだろう。時流に併合するかのような、この方向転換には賛否両論あるとも聞く。しかし今までもしばしば物議を醸してきたエディ・スリマンと、最新のブランドビジネスを知り尽くす(CELINE等々を擁する)LVMHにとっては、すべてが確信の上なのは当然で。ファンの気持ちを裏切らないのがブランド、という先入観を覆す以上の何かを着々と創造していくに違いない。たぶん。


あとは、そもそもサイクルの短いモードの世界でクリエイティブディレクターによって作風がすっかり変わってしまうのは仕方ないとして、そのたびにショップのインテリアまでスクラップにするのが当たり前にならなければいいなと思う。銀座店も流れを汲む Andrea Tognon の仕事もそうだけれど、今年夏に完成したフィービーの趣味ともエディ・スリマンの趣味ともつかないValerio Olgiati設計のマイアミのCÉLINEのような店にはずっと残ってほしいが、どうなるだろう。

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