会田誠の展覧会
Takahiro Tsuchida

Takahiro Tsuchida / Design Journalist / Writer
土田 貴宏/デザインジャーナリスト/ライター

1970年北海道生まれ。会社員などを経て、2001年からフリーランスで活動。国内外での取材やリサーチを通して、雑誌をはじめ各種媒体に寄稿中。家具などのプロダクトを中心とするデザインと、その周辺のカルチャーについて書くことが多い。法政大学デザイン工学部などで兼任講師を務める。趣味は飲酒とインスタグラム。
http://txtxtt.blogspot.jp/

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会田誠の展覧会

会田誠の展覧会

現代美術家の視点から表現された日本のヴィジョン。あれやこれやの方法で、建築や都市をインクルーシブ化〜民主化しようとする試み。先日、開催された会田誠「GROUND NO PLAN」展がすばらしく面白かったです。いずれの作品も一見カオティックでありながら……

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……観ているうちにだんだんと納得させられ、こちらのほうが環境として幸せかも、と思えてくる。一方、現在の都市で当たり前とされることについて疑問が浮かび、ついさまざまに想像をふくらますことになる。

こうしたアプローチは、デザインの中の比較的新しい一分野、スペキュラティヴデザインに近い。一般的なデザインが、ものの魅力を高めたり問題を解決したりするのに対して、スペキュラティヴデザインは問題を可視化して提起する。「望ましい未来」について考えさせ、幅広く議論を促そうとする。そもそもスペキュラティヴデザイン自体が、アートの応用という一面をもってもいる。

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「『快適なバラック』こそ究極の理想ではないか。そのシステムを構築するのがプロの仕事」

特に圧巻だったインスタレーション「セカンド・フロアリズム」は、誰でもDIYでつくれる2階建て住宅ユニット(=スラムを快適化する仕組み)を開発して普及させるべき、という思いがテーマ。背景や手法を肉筆で延々と殴り書きしつつ、瓦礫、バナー、映像などで構成している。アカデミックな傾向のある現代建築や、高層化と大規模化を是とする都市計画、高度化するテクノロジーや資本主義への無垢な批判でもある。

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この展覧会に際して、アーティスト本人が自身をあえて「建築や都市計画に対して完全な素人」と述べていることからもわかる通り、作品の中に矛盾や行き過ぎや至らなさがあるのは織り込み済み。だからこそ一連の作品が、誰もが都市環境について自由に考え、意見を言うハードルを下げるきっかけになる。手書き文字の乱雑さも同じような効果をもつ。実際、会田誠の画力には相当のものがあると思うけれど、この作品ではそれがほぼ封印されている。

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「セカンド・フロアリズム」に関連して、主要な建材になる柱のパーツの試作品。想定されている素材は「カーボンなんちゃら」。その説明文には、やはり手書きで下記のようにある。
「今は〈カーボンなんちゃら〉は高い。しかもこんな形成、金だけじゃなく時間がかかってしょうがない。だから未来の話をしてるんです。いつか人類はこういう物を安く量産できる日が来るべきじゃないの? と。火星に行こうって言ってる人類、本気でこっちに集中したら、できんじゃないの?」

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会田誠の展覧会

雑草を愛でるインスタレーション「雑草栽培」と、一対のように見える絵画「火炎縁雑草図」。前者の壁面には坂口安吾による一節が英文で書かれていた。京都や奈良の寺院仏閣が破壊されても困らない、電車が動き続けて日々の生活を続けられることのほうがよほど重要でより美しい、というような内容だったかと。

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個々の作品がテーマとしていることのいくつかは、建築の世界でも以前からある程度は議論されてきたのではと思う(たとえば土着のDIY建築を参照することや、イケアが実践するような「デザインの民主化」の住宅への応用等々)。会田誠のツイッターによると、建築関係者からのこの展覧会の評判は必ずしも芳しくないらしく、それも理解できる。しかしこの展覧会は本来、建築批判であっても建築界のためのものでなく、門外漢が建築とその未来について考えるため(speculateさせるため)という意味合いがより大きい。建築の民主化とともに、建築を考えることの民主化。そんな意味では(限られた会期と会場にもかかわらず)十分な反響があったはずで、そのあたりも止揚した建築側からのアンサーを見てみたい気はする。

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ヨーゼフ・ボイスへのオマージュとして替え歌をカラオケで歌うムービー「アーティスティック・ダンディ」の歌詞。アーティストでありアクティヴィストでもあったボイスは、この展覧会の裏テーマのよう。

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インスタ映えする作品も多い。

野蛮、放埒、露悪的な表現が多々観られつつ、展覧会全体を通して感じたのは会田誠のあふれる人類愛のようなもの。わざわざ愛と言うのもどうかという感じだけれど、その根本的な姿勢に泣ける。そしてふと知的な一面が見え隠れする。本物の知性とはこういうものか、と思わされた。

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ちなみにこの展覧会は大林財団による助成プログラム「都市のヴィジョン」の第1弾。スーツ姿の会場スタッフは大林組の若手社員だったんだろうか。どんな気持ちで展覧会を観ていただろう。

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