takeo paper show 2018
Takiko Nishiki

Takiko Nishiki / POST,limArt
錦 多希子/POST、limArt

1984年東京生まれ。2012年より東京・恵比寿にあるアートブックショップ+ギャラリーPOSTに勤務。店頭対応のほかに、ウェブサイト上で新着本の紹介を更新する。その傍らに、CLUÉL hommeやPen onlineでの連載、インタビュー記事・コラム執筆などを手がける。

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takeo paper show 2018

先日、表参道のスパイラルホールで開催されたtakeo paper show 2018「precision」に行ってきました。


4年ぶり、通算48回目となる今回のテーマは、「precision:精度を経て立ち上がる紙」。
新しいファインペーパーのあり方を問ううえで、正確さ・緻密さという側面にフォーカスをあてていきます。

POSTでもおなじみの田中義久さんがアートディレクターを務めるということに加えて、年々自らの紙に対する関心が高まってきていることにも背中を押されながら、胸の高鳴りとともに会場のエントランスに足を踏み入れました。


※以下、試作品(プロトタイプ)の画像に併記したクレジットは敬称略にて失礼します。

takeo paper show 2018

安東陽子 / 紙と布の協働、あいまいな関係[紙布]

takeo paper show 2018

葛西薫 / 闇に溶ける紫[色紙]

メイン会場には、9名のクリエイターが本展のために監修したファインペーパーが展示されています。
照明を落とした暗闇のなかに、各々のブースだけが煌々と浮かび上がる。
展示台の天板まで黒で統一され、個々の存在感が際立ちます。

ひとつひとつの試作品についての感想を述べるとだいぶ長くなってしまうので…それは他の機会に譲り、今回はペーパーショウ全体についての所感を綴らせてもらいますね。

takeo paper show 2018

田中義久 / 土紙[和紙]

takeo paper show 2018

「土紙」の接写

それぞれの紙は、純粋に観るためのものとして飾られているだけではありません。

各ブースごとに担当の方が常駐し、その特性について詳しく解説してくれるのです。
もちろんブースごとにキャプションが掲示されているし、配布されたブックレットにもそれと同じ内容が記載されています。テキストによって鑑賞へと導入する機能を果たすこともあるでしょうし、展覧会の情報や知識を得るには充分です。
けれど、実際にことばによる説明を受けると…不思議なもので、テキストに目を通したときよりも圧倒的に強い興味を引き出してくれます。好奇心の増幅はやがて深い理解への一歩となり、気づけばその魅力にどっぷりと浸かっていました。
そしてなにより、出展者から鑑賞者へと直接手渡されていく温度感がとてもよかった。
口承伝達がもつプレゼンテーションの力に、いたく感銘を受けました。
なにもそう感じているのはわたしだけではないようで、実際に多くの来場者、特にいわゆるデジタル・ネイティブといわれる若い年齢層の方々が解説を熱心に聴き入っているようすがとても印象的でした。


そして、なかには実物に触れさせてもらえたことも大きな収穫でした。
物質性のある紙ゆえに、見るだけだと伝わることは限られていて、直に触れることにより感じ取れることが多かったです。
(どれもこれもあまりの素晴らしさに、試作品の発表だとはわかっていながらも…ブース担当者の方にはしきりに、商品化を熱望すると力説してしまいました…!)

takeo paper show 2018

DRILL DESIGN / ハレの段ボール、その成型[段ボール]

takeo paper show 2018

永原康史 / 情報の風合い プロトタイプ[情報の紙]

メイン会場を抜けたところに、暗幕で仕切られた暗い部屋がもうひとつ。
そこでは、先に展開されていた試作品の制作過程を追った映像がループ上映されています。

各界で第一線を駆け抜けるクリエイターたちと、その彼らの創意を形にしようと手を結んだ製紙メーカーを始めとするパートナーたちとが、対話と作業を丹念に積み重ねながら粘り強く協働する。
そうして生まれた紙たちの裏側に潜むストーリーが見事にあぶり出されていました。

takeo paper show 2018

原研哉 / 「チョコレートの帽子-2」-穴あきの紙[半透明の紙]

takeo paper show 2018

原田祐馬 / 記憶の肌理[厚紙]

3Fの会場出口では、色とりどりの紙片が収められた透明ビニールバッグをいただきました。
すてきな手みやげに心踊ります。


そして、これで終わらないのがペーパーショウ。
2F、1Fへと降りる階段スペースには、ところどころに現在竹尾さんが販売されている紙製品が並びます。
ロール状ないし束状で堂々と設置されたそれらはどれも存在感があり、紙好きにはたまらない圧巻の景色でした。
しかも単なる展示品としてだけではなく、思い思いのままに触り、やぶることができます。小さなお子さんたちも物珍しげに、楽しそうにふれあっているのが微笑ましかったです。

takeo paper show 2018

藤城成貴 / mix[モールド]

takeo paper show 2018

三澤遥 / 動紙[機能紙]

まずは先入観なしで実物と対峙し、追って説明や映像を通じて包括的に理解する。
会場では聴覚や触覚といった身体的感覚を通じて、そしてプロセスにも目を向けることで、自らの知識や体験としてしっかりと落とし込まれていきます。
「観る者/観られるモノ」という関係性だけでは伝わりきらない、フィジカルな体験がもたらす訴求力の高さをひしひしと感じました。
そして、インターネットの普及によって飛躍的に発展した、現代の情報伝達のあり方を暗に問われているようにも思えました。


「気に留まったものをただ撮っておしまい」というような表層的な消費の仕方ではなく、自分の時間と足を運んだその場所で、より多くの知識や体験を得ようとする熱意のあるひとたちがこんなにもたくさんいること。
熱気のある会場で目の当たりにしたその事実にもまた、嬉しくなりました。


このペーパーショウで感じたことは、今後わたしが店頭でお客さまと対話するとき、そして書き仕事に取り組むうえで、大きな拠り所になるような気がしてなりません。

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3日限りのショウだったので、見逃した方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方に朗報!
2018年10月には、大阪に巡回する予定だとのこと。ぜひ体感しにお出かけください。

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