猫たち
Takiko Nishiki

Takiko Nishiki / POST,limArt
錦 多希子/POST、limArt

1984年東京生まれ。2012年より東京・恵比寿にあるアートブックショップ+ギャラリーPOSTに勤務。店頭対応のほかに、ウェブサイト上で新着本の紹介を更新する。その傍らに、CLUÉL hommeやPen onlineでの連載、インタビュー記事・コラム執筆などを手がける。

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猫たち

毎朝、乗り換え駅では壁面を彩る展覧会ポスターに見送らながら出勤していますが、先日ぐっと胸を鷲掴みにされた1枚がありました。
チャーミングな猫たちの群像。
それは、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されていた『猪熊弦一郎展 猫たち』のポスターでした。

会期が3/20(火)から4/18(水)にわたる1ヶ月程度と会期が短めに設定されていることもあり、自らのスケジュールとにらめっこを続けていましたが…ようやく念願かなって、なんとか終了直前にすべりこむことができました!

猫たち

エントランス脇・撮影可能スポットにて

猪熊さんが無類の猫好きだったことはよく知られています。
戦時中の疎開先だろうと、遥か遠くの異郷の地・パリであろうと、彼ら夫妻はいつでも猫たちを連れ立って赴きました。
また戦後には、1匹・2匹ではなく、いわゆる「多頭飼い」もほぼ常であったとか。
自由気ままに生きる猫たちにはとても寛容に接し、惜しみなく愛を注いできました。


そんな飼い猫たちが彼の作品のなかに登場したのは、意外にも一目惚れして結婚した美しき妻・文子さんをモチーフにした絵画がはじまりなのだそう。
当初は脇役として起用された猫たちも、次第にドローイングやペインティングに度々あらわれ、いよいよ主役の座に躍り出ていくことになります。

猫たち

会場内の撮影可能エリアにて
展示作品のうちの1点

ダイナミックな筆致で思い切りよく描かれる絵画。
ときにメモ紙や封筒の端に描かれることもあった、遊び心あふれる線描。
筆跡や画風はさまざまであれど、猫の習性を巧みにとらえています。

また、会場の一角には猫モチーフの蒐集品が並んでいました。
いずれも作品のなかに住まう猫たちと同じような愛らしさがあり、すっかり顔をほころばせてしまいます。

猫たち

会場内の撮影可能エリアにて
展示作品のうちの1点

本展のなかで引用されている、あることば。
これこそが本質を突いている!と感じたので、ぜひシェアさせてください。

愛しているものをよく絵にかくんです。
愛しているところに美があるからなんです。
“「歩く教室」写生会アルバム”「少年朝日」1950年12月号


世界的な画家の長きにわたる暮らしのなかで、いかに猫たちの存在が大きいものであったか。
そこには、こよなく愛するものに向けられたそこはかとない慈しみと敬愛の念がありました。

猪熊さんのあたたかな眼差しで満たされた空間にすっかり感化されたわたしは、自らの心にもおだやかな明かりが灯ったまま、とても嬉しい気持ちで会場を後にしました。

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