マンハッタンの非営利団体ジャパン・ソサエティによる日本映画フェスティバル「JAPAN CUTS」。夏の恒例イベントが今年も連日満員を記録して終了しました。
目玉作品の一つだったのがアメリカ東海岸での初上映となる「この世界の片隅に」です。フェスティバルの最終上映作品としてスケジュールされたスクリーニングに、私も行って参りました。260人が座れる劇場は満員。作品には近しい友人が関わっていることもあり、長い年月をかけて作られたこの映画がこうやって海を越えて多くの人の目に触れられている姿に感動しました。

写真撮影 / 筆者
映画上映の後にはプロデューサーの真木さんによる観客とのQ&Aセッション。真木さんがビジネス面でのプロデューサーであったこともあってか質問はクラウドファンディングを使っての映画製作資金調達についてが多かったです。これに関しては私が報告するまでもなく良い記事がたくさん書かれております。

上映後に地元メディアの質問を受けている真木さん。写真撮影 / 筆者
さて「この世界の片隅に」のすごいところは映画評論サイト「Rotten Tomatoes(ロッテン・トマトズ)」で批評家たちからの評価が100点になっていることです(2017/07/26)。Rotten Tomatoesはサイト自体が映画批評をするのではなく、全国の信頼されている雑誌・新聞・批評サイトの批評を集めて集計しているため、アメリカでは「どの映画を見るか」を考える時に広く信頼されています。
どんなに人気の映画でも、ニューヨーク・タイムズでは酷評され、ボストン・グローブには絶賛され、ということはよくありますから、こういう風に各有名批評家たちをまとめてくれているのはとても分かりやすいんですね。
ただし、100点だからと言って全員が絶賛しているという意味ではないのは注意です。「ここは良いけど、ここはイマイチ」というような書き方がされていても、全体としてポジティブに書かれている場合は映画に対するポジティブな票として集計されるわけです。興味がある人はそれぞれのレビューの「full review...」というリンクをクリックするとレビューが表示されているページに飛んで確認できます。

右側にある79%は一般ユーザーによる「見たい度」レベル。劇場公開された後はここに一般ユーザーによる評価が表示されます(後述)。Image by Rotten Tomatoes website re: In this Corner of the World
このRotten Tomatoes、ぜひ自分の知ってる映画のタイトルを入力して遊んでみて欲しいサイトです。サイトに行って映画のタイトルを(英語で)入力すると正確な評判が分かります。
https://www.rottentomatoes.com/
例えば1996年のアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(英語タイトルはGhost In The Shell)は今でも批評家たちによるスコアは96%、一般ユーザーによるスコアは89%と高スコアを持っています。本当に高く評価されているのがよく分かります。
日本の映画やアニメが「海外に人気を集めている」と日本のメディアで取り上げられることはよくありますが、日本に住む一般人からすると真偽はなかなか分かりませんよね。

サイトでは批評家たちによるスコアを「トマトメーター」と呼んでいます。こちらはマライア・キャリー主演映画「GLITTER」。トマトメーターはなんと7%。Rotten Tomatoesの編集部の人のお気に入り映画の一つとして紹介されています。確かに、好きな映画は世間の評価なんて関係ないですよね。Image by Rotten Tomatoes website re: GLITTER
劇場公開された映画に関しては一般ユーザーも登録して評価することができます。右側の「Audience Score」と書かれているのがそれですね。
5点満点中、3.5点以上をポジティブな評価として集計して全体の何%のオーディエンスがポジティブに評価したかを示しています。批評家たちによる判定(トマトメーター)は高いのに、一般視聴者による判定(オーディエンススコア)は低い、ということは良くあり、またその逆もしかりです。
私は劇場で映画を見る時は必ずRotten Tomatoesをチェックしています。最近では全く見る気も無かった「猿の惑星」最新作を、このサイトの批評家・一般オーディエンス両方からの高スコアを知って見に行きました。予想を上回る素晴らしい映画でした。
映画やテレビは多くのお金をかけてプロモーションされます。予告編やメディアの扱いだけでは本当に面白いかどうか判断できないことが多いですよね。Rotten Tomatoesのように、データを前面に出した映画レビューサイトは芸能事務所やPR会社、配給会社などの影響も少ないので「ちょっと空いた時間に見たい映画」を選ぶのにとっても便利ですね。