Shin Mononobe

Shin Mononobe / Creative Director
物延 信/クリエイティブディレクター

ロンドンを拠点に活動するブランド・デザインハウス Anyhowを立ち上げ、クリエイティブディレクターとしてグローバルで幅広いジャンルのクライアントに、ブランド構築の戦略づくりから、文化や表現の枠を超えたクリエイティブ事業を行っている。
https://anyhowstudio.com/

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アートがある街

アートがある街

Banksy x Basquiat

ロンドンデザインフェスティバルで盛り上がりを見せたロンドン。今年は例年に増して各地の工芸や国ごとの特色を強みにしたデザインへの主張が一段と強くなったように感じました。世界のクリエイティブが皆揃って北欧の洗練されたデザインを学び、日本のミニマリズムを尊重し、アメリカ西海岸優雅さに憧れ、世界が同じ方向を目指し、どこかの雑誌で見たのと同じようなデザインを求め均一化の状態に陥った”グローバルデザイン”の時代から、各地の個性を尊重し地のアイデンティティを強みにしたデザインを改めて世界が受け入れるようになってきた昨今。日本の作家、デザイナーもそれぞれに、個性的な作品で話題を集めていたように感じます。

デザインウィークの傍、現在ロンドンで行われている展示会で、一際注目を浴びているのが、15年ほど前に日本でも人気を博したアメリカポップアートの功労者 ジャン・ミシェル・バスキアのエキシビジョンです。戦後の復興計画として造られた都市型居住区でありヨーロッパ最大の文化施設を有するバービカンで開催中です。バスキア展の評判も然ることながら、このエキシビジョンのオープンに際し、話題をさらったのはイギリスのストリートアートシーンで名を欠かすことのできないバンクシーです。

オープン当日の朝、バービカンの住宅の壁に突如、バンクシーのグラフィティが出現しました。

アートがある街

Banksy x Basquiat at Barbican estate

バスキアのペイントの上に重ねられたバンクシーのステンシルのグラフィティ。バスキアの象徴である王冠を観覧車に見立て、列を作って乗り込もうとする人々が描かれた作品と、バスキアのキャラクターが警察に職務質問をされているような作品。作品の良し悪しを議論されることは意に介さず行動することに、バンクシーの粋を感じます。バンクシーのバスキアに対する敬意の表現として、エキシビジョン会場の目の前にオープン当日の朝に合わせて作品を完成させることで拍車がかかり、このバスキア展は大きな話題となっています。

ストリートアートは紛れもなく違法行為であり、賛否が分かれるものではありますが、ロンドンでのバンクシーの扱いは特別で多くの疑問があります。いわば壁に描かれた落書きであるにも関わらず、彼のグラフィティは自治体の費用で、即座にアクリルのカバーで頑丈に保護され、賞賛されます。バンクシーのグラフィティによって形成される人の群れを利用するロンドンは、単にユニークとも賢明とも表現できない可笑しさがあります。

アートがある街

Banksy x Basquiat at Barbican estate

アートがある街

Banksy x Basquiat at Barbican estate

そもそも誰も見たことがないとされるバンクシー。通行量の多いロンドンシティのこの場所に誰にも目撃されることなく、自分の意図した時間にグラフィティを残すことができるのはなぜなのだろうか。そして政府に詰められるどころか保護される。なんとも不思議な構図です。

このような憶測が憶測を呼び、話題をつくり人が流れること自体が、しっかりと構成された行政とアーティストの巧みな共同作品なのかもしれません。何にせよ、バスキア展の記録は、バスキアを仰ぐバンクシーの粋な計らいによって今後もロンドンの街に守り続けられます。

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