Shin Mononobe

Shin Mononobe / Creative Director
物延 信/クリエイティブディレクター

ロンドンを拠点に活動するブランド・デザインハウス Anyhowを立ち上げ、クリエイティブディレクターとしてグローバルで幅広いジャンルのクライアントに、ブランド構築の戦略づくりから、文化や表現の枠を超えたクリエイティブ事業を行っている。
https://anyhowstudio.com/

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ヘリテージとテクノロジー

ヘリテージとテクノロジー

The Sainsbury Gallery

ロンドンのVictoria and Albert Museumに、新たなギャラリー The Sainsbury Galleryと、新たなエントランス The Sackler Courtyardが一昨日オープンしました。2010年に行われたコンペに勝利し、この設計を手掛けたのは、イギリスを代表する女性建築家、元フュチャーシステムズのアマンダ・レヴェット。

1852年に建設されたV&A Museumに、新たな玄関とギャラリーが設けられることは、歴史にどうテクノロジーを組み込むか、建築・デザイン界で高い注目を集めました。デザイン決定から7年を経て、その期待を裏切らない素晴らしい独特な空間が出来上がっています。

ヘリテージとテクノロジー

The Sackler Courtyard

ヘリテージとテクノロジー
ヘリテージとテクノロジー

まず、正面玄関の西側道、Exhibision Roadに開かれたエントランス The Sackler Courtyard。第二次世界大戦時の銃撃の傷跡が残る外壁を上手く残しながら、未来的なデザインへ自然に繋がっていきます。コートヤード内にはガラス張りのスタイリッシュなカフェと、液晶ディスプレイが組み込まれたデジタルインスタレーションが目を引きます。築170年のメインビルディングへの新たなアプローチは、幾何学パターンを上手く利用し、吸い込むように人々をギャラリーへと向かわせ、巧みに流れを作っています。

ヘリテージとテクノロジー

The Sainsbury Gallery

ヘリテージとテクノロジー

コートヤードを抜け、屋内にはいると地下のThe Sainsbury Galleryへと続く階段。コートヤードの幾何学的なデザインとは様相を変え、有機的な柔らかな曲線が魅了します。ラッカー塗装された光沢ある黒と朱色が白い空間に際立ち、鮮やかで柔らか、細かな仕上げにこだわった女性デザイナーならではのセンスが見えます。その空間はどこか、日本の美意識に重なりました。漆塗りのような仕上げ、重箱のような柔らかな曲線、鳥居のように映える朱。これらがバランスよく構成され、親しみやすく新しい心地よさがあります。

ヘリテージとテクノロジー

多様なデザインで魅了されながらギャラリーに入ると、そこは一枚の紙を折って作り出されたような歪な空間。コートヤードの真下に位置するギャラリーは、コートヤードに設置されたデジタルインスタレーションを真下からも楽しめるように設計されており、液晶のオンオフの切り替えによって、空や外の建造物が見え隠れする仕組みになっています。

アマンダ・レヴェットの最新建築はグラフィカルなデザインエレメントを用い、テクノロジーを巧みに歴史的建造物に融合させたユニークな世界観でした。戦争の傷跡が残るゲートを潜り、ギャラリーに辿り着くまでの各ゾーンそれぞれに異なったストーリーと緩急のある明快なデザインは、ヘリテージを守りながら常に進化するロンドンにふさわしいものなのではないかと感じます。

これらは全て無料で入場でき、見ることができます。定期的に新しいものを発信し、世界のデザイン・アート界で話題を絶やさないV&A Museumに感心すると同時に、常に動き続けるイギリスのデザインと、生活の近さを改めて感じました。


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